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2005年10月16日 (日)

Bookcover “現代家族”の誕生―幻想系家族論の死 [a]
岩村 暢子 / 勁草書房 / 2005-06
著者はアサツーDKの人。60歳前後の女性に食生活の履歴を尋ねたインタビュー調査をまとめたもの。いわゆる食の崩壊は,現在の若い母親たちがもたらしたのではなく,むしろその母親の世代に生じたライフスタイルの変化に起因している,そしてそれは日本社会が自ら選びとった変化だったのだ,という主旨。
 この本は夏に半分くらい読み終えていたのだが,あまりの面白さにほとほとうんざりし,目につかないところに放置していたのであった。このたび通勤電車で無理矢理読了。もうつくづく嫌になった。いますぐ調査会社に転職したくなってしまった。わかってるんだけどさ,隣の芝生は常に青いと。こんな面白い調査をやってる人などまれにしかいないのだと。はい,それはもちろん,いまの仕事を頑張らさせて頂きますです。
 感心してばかりでも癪にさわるので,あれこれあら探しするわけだが:(1)まず大きなストーリーを提示して,その証拠としてのインタビューがあって(これが実に瑞々しくて泣かせる),傍証として各種統計や世相史を引き合いに出す,という書き方なのだが,傍証のあたりでちょっと筆がすべるところがある。母親世代の個性尊重教育が娘世代の「私って~な人だからァ」をもたらしたのだ,とか。なるほどそうかもしれないけど,そういう話題は節制しておいたほうが説得力が増すんじゃないかと思う。うーん,これは結局プレゼンテーション・スタイルの問題かもしれないな。アカデミックなスタイルが常に最良だとは限らない。これはこれでいいのかもしれない。(2)調査対象者の選び方は比較的恣意的で,サンプリング・バイアスについてはどうなのか,と気にかかる。いいかえれば,世代論はどこまで説明力を持ちうるのだろうか。食生活の変化のありかたは,社会階層によっても地域によってもちがっていそうなものだ。うーん,これも欠点というよりは,さらなる問いかけというべきだ。
 それにしても,お節料理をめぐる記述にはまさに目から鱗が落ちる思いであった。ああ嫌だ嫌だ。こんな面白い仕事をしている人がいるなんて。

マーケティング - 読了:10/16まで (M)

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