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2006年11月30日 (木)

Bookcover 学歴と格差・不平等―成熟する日本型学歴社会 [a]
吉川 徹 / 東京大学出版会 / 2006-09
社会構造の鍵になる変数,社会意識を規定している変数は,職業や年収じゃありません,学歴!学歴!学歴なのです!という,いっけん無理な主張を力ずくで展開している本。大変面白かった。論旨展開もクリアだし,文章は若々しいし(著者は66年生),なによりも,安易に政策論へと進まない禁欲性が好もしい。専門書はこうじゃなきゃ。
こういう本は,ほんとはもっと丁寧に読みたいのだが,なかなかままならない。面白かった点をメモしておくと,

- 階層論はふつう職業階層に焦点をあてる。ここで学歴は親の職業階層と子の職業階層の間にある媒介変数である。しかしいわゆるフリーター問題などをみるにつけ,こうした枠組みはもう役に立たない。いっぽう文化再生産論(ブルデューとか)は,職業階層と社会意識が子に影響するメカニズムに注目するが,モデルが複雑すぎて実証研究に乗らない。そこでルビンの壺よろしく図と地を入れ替え,こう考えよう:学歴が職業階層を決め,社会意識を決め,子の学歴を決めるのだ。
- その証拠に,SSM調査データを使い<父教育年数→父職業威信→息子教育年数→息子職業威信>の完全逐次パスモデルをつくると,父職業威信から息子職業威信への直接効果は案外小さくて(←面白いなあ),父教育年数から息子教育年数への直接効果が大きい。なお,これは尺度の信頼性によるアーティファクトではない由。
- 学歴に世代間関係が生じるのは,人が「親より学歴が下降する」ことを回避しようとするからだ(職業階層の下降リスクを避けるためではなく,とにかく学歴が下がるのがいやなのだ)。従って,仮に学歴選択が完全に自由であっても学歴の世代間関係は残る。
- その証拠に「ハマータウンの野郎ども」を読め。あるいは教育調査研究をみよ。教育調査での階層の指標はたいてい「親の学歴」だ。たとえば苅谷さんは階層がインセンティブの格差につながるというが(階層の代理変数として学歴を嫌々使っているに過ぎない),考えようによってはそれは親学歴そのものによる格差なのである。(←なるほど)
- なお,過去4回のSSMデータを使いコホート別に学歴の移動表分析をしてみると,団塊以降は学歴の閉鎖化が進んでいる。(ここで佐藤俊樹「不平等社会日本」についてのかなりテクニカルな批判があったけど,パス)
- 今度は社会意識について。いろんな項目について,年齢・学歴・職業階層・世帯収入で片っ端から重回帰すると,多くの項目に効いているのは,今も昔も年齢・学歴である。
- 階層帰属意識について。SSM調査の4時点それぞれで,<年齢→学歴→職業階層→世帯収入→生活満足度→階層帰属意識>の順の完全逐次パスモデルを組むと,階層帰属意識のR2はどんどん上がり,効いている変数は収入と学歴に集約されていく傾向にある。
- というわけで,今流行ってる下流社会とか二極化とか閉鎖化とか希望格差とかって,要するに学歴の境界をなぞっているだけかもしれない。(←もっと曖昧な書き方だったけど,要するにこういう主旨)

学歴下降回避の話,「親より職業階層が下がるのと学歴が下がるのとどっちが嫌か」という調査をしちゃえば決着がつくんじゃないかと思ったが,きっと誰かがもうやってるな。

心理・教育 - 読了:11/30まで (P)

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