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2008年3月 2日 (日)

Bookcover 見よ、飛行機の高く飛べるを [a]
永井 愛 / 而立書房 / 1998-10
明治の女子師範学校を舞台に,女学生たちの青春の一断面を描いた戯曲。
 近所に演劇科のある学校があって,ときどきそこの学生さんたちが公演をやっている。客席を埋めているのは父兄や友人や商店街の人々やらで,そののんびりした雰囲気がなかなかよい。どの子も概して下手なのだが,なにしろ二十歳かそこらの娘さんたちなので,よしよしがんばってね,などと暖かい目で見てしまう。やれやれ,年をとったなあ。そもそも「どの子も」と書いてしまう段階で非常におじさんくさい。
 先日は永井愛のこの作品を演っていて,夕飯のついでに見に行ったのだが,これが意外にも(と,いっては失礼だが)大変に面白い芝居で,感銘を受けた。ストライキを企て挫折する下級生を演じた人の好演もあったのだが,これはやはり戯曲の力だろうと思い,単行本を手に入れて余韻に浸っている次第である。
 読み返してみるとこれは奇妙な仕組みの話で,賢くて人望があって美しい娘がヒロインなのだが,終わってみると強く心に残るのは,変わり者の下級生のほうである。終盤で焦点が入れ替わってしまう。不思議だなあ。あとがきによれば,この物語は著者の祖母と市川房枝の交流から着想を得た由である。
 女学生たちを抑圧する側の大人として,何人かの男性の教師が登場するのだが,どの男もそれぞれの葛藤や鬱屈を抱えている。彼らの浅ましさやせせこましさやいい加減さは,そのまま俺の姿でもある。学生さんたちの舞台では,教師たちは思い切りヒステリックだったり情けなかったり,完全に戯画化された姿で登場し笑いを誘っていた。ああいうところが,若さの持つ残酷さだなあ,と思う。

Bookcover ビッグ・タウン (ハヤカワ ポケット ミステリ) [a]
ダグ・J. スワンソン / 早川書房 / 1996-02
ダラスを舞台にした犯罪小説。前半はちょっとロス・トーマスのようで,会話が生き生きとしていて面白かったが,途中でちょっと失速する感じだ。

フィクション - 読了:03/02まで (F)

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