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2009年9月23日 (水)

Bookcover 二月逆流―中国文化大革命 1967年 [a]
趙 峻防,紀 希晨 / 時事通信社 / 1988-02
文革発動の翌年(67年),軍の老幹部たちと文革派との間で生じた権力闘争「二月逆流」を描いた小説。古本屋で見つけて目を通してみたら,ごく通俗的な読み物という感じの内容であった。
 善玉は周恩来と葉剣英,悪玉は康生(のちに中国のベリヤと怖れられた情報機関のボス)。江青や葉群(林彪の妻)は,天下の大悪人というよりも醜悪な俗物として描かれている。かの国ではこうしておけばいろいろ差し障りがないんだろうけど,なんだか性的偏見を感じるなあ。

Bookcover 倒壊する巨塔〈下〉―アルカイダと「9・11」への道 [a]
ローレンス ライト / 白水社 / 2009-08
911事件を引き起こしたオサマ・ビンラディンらアルカイダのメンバーの遍歴と,彼らを追うFBI捜査官たちを描いたノンフィクション。
 どちらの側を描く際にも,その人間的側面に紙幅が割かれている。テロリストたちは子煩悩な父親でもあり(ビンラディンの息子は任天堂のゲーム機で遊んでいたりする),FBIの腕利き捜査官はほとんど犯罪的な女たらしでもある。
 もしジャンボジェット機が,ニューヨークではなく東京の高層ビルに突っ込んでいたら,その後日本の誰かが,こういう重層的なノンフィクションを書いただろうか。仮に書けたとしても,犯人たちの人間的側面について語ることが許されただろうか。なにしろ,オウム事件を引き起こした教祖の娘は大学にも入れてもらえない,というお国柄なのである。

Bookcover 黒澤明という時代 [a]
小林 信彦 / 文藝春秋 / 2009-09-11
文春のPR誌「本の話」で連載していたらしい。
 黒沢監督に「野良犬」という傑作があるが(ああ,志村喬の刑事が良かったなあ),この映画は海外での評価が遅れたのだそうで,その理由のひとつは,日本映画の紹介に力を尽くした評論家ドナルド・リチーさんがこの映画を買っていなかったからなのだそうだ。「進駐軍出身の人物がその後もアメリカで日本映画紹介の要職にあったのは,この映画にとって不幸であった」とのこと。
 小林信彦さんって,こういう嫌みったらしい文章が本当にうまい。この作家のことを評して,都会的含羞の人,などと書いているのを時々見かけるが,あれはどうなんだろうか。確かに小林信彦さんの文章に出てくる小林信彦さんはその通りだし,実際のお人柄もそうかもしれないけれど,文章家としては,どうみても底意地わるーいご老人だと思う。

ノンフィクション(-2010) - 読了:09/22まで (NF)