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2009年12月16日 (水)

Bookcover 近代日本の思想家〈11〉吉野作造 (近代日本の思想家 11) [a]
松本 三之介 / 東京大学出版会 / 2008-01
井上ひさしさんの戯曲「兄おとうと」がきっかけで手に取った。
吉野作造は大正デモクラシーの主導者のひとりだったが,彼にとってのデモクラシーとは議会に基づく立憲主義のことであって,主権在民どころか,天皇主権とじゅうぶん両立可能なものだった。さらに,彼にとっての民衆とは,議員を議員の(政見ではなく)人格に基づいて選出し,道徳的に監督する役割しか持っていなかった。逆に言えば,民衆は短期的には愚かで受動的な存在であるかもしれないが,長期的にはそれなりに道徳的進歩に貢献する,と彼はみなしていた。「吉野の民衆に対する信頼を根底において支えたのは人間に対する信頼にほかならなかった」「民衆は,世界の平和幸福のために人間の営みを道徳的に監視し判定する役割を果たすべきものと,吉野によって期待されていたのである」
吉野さんが亡くなったのは1933年,満州事変の2年後である。ときどき思うのだけれど,歴史における思想家のROIってのはどんなものなんだろうか。偉大な思想家が一人いると,その人のおかげで世の中はどのくらい良くなるといえるのかしらん?

日本近現代史 - 読了:12/15まで (NF)

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