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2011年10月 4日 (火)

Bookcover 美しい夏 (岩波文庫) [a]
パヴェーゼ / 岩波書店 / 2006-10-17
素晴らしい小説ですっかり引き込まれているんだけど,あまりに引き込まれてしまい,登場人物の悲劇につきあうのが辛くなり,頁を開く気にならない,ということがたまにある。この本がそうであった。
 このままだと読みかけのまま夏が終わってしまうと思い,会社の近所にある小さな神社の軒下に腰を下ろし,時々白い雲を見上げて深呼吸しながら一気に読み終えた。いやあ,しんどい物語であった。あの馬鹿みたいに青い空,しばらく忘れられそうにない。

Bookcover シェイクスピア全集21 アントニーとクレオパトラ (ちくま文庫) [a]
W. シェイクスピア / 筑摩書房 / 2011-08-09
アントニーとクレオパトラは,愛と不信の間を振り子のように揺れながら,手を取り合うようにして破滅へと進んでいく。細かいところはよくわからないが(なにせ長い戯曲なのだ),理解できる範囲では面白かった。
 そういえば,この本にもこんな印象深い台詞が出てくる。目前に迫る死を悟りつつあるアントニーが従僕に語る場面。「どうかするとある雲が龍に見えてきたりする,ひとつの霧のかたまりが雲かライオンのようだったり,塔のある城塞,空に張り出す絶頂の頂,峰が二股に別れた山,木々の生い茂る青い岬などに見え,それが下界に向かってうなずき,大気の流れによって人の目をあざむく。お前も見たことがあるだろう? あれは夜の闇の到来を告げる華麗な野外劇だ」「はい,陛下」「いま馬だったものが,そう思う間もなくちぎれ雲にまぎれておぼろになってしまう。水に注がれた水のように」「そうですね,陛下」 「いいやつだな,エーロス,いまお前の将軍はちょうどそういうものなのだ。俺はいまアントニーだが,目に見えるこの形を保つことはできないのだよ」

Bookcover 絆回廊 新宿鮫Ⅹ [a]
大沢在昌 / 光文社 / 2011-06-03
「新宿署の鮫島ダ」(←ぜひ舘ひろしのモゴモゴした声で)でおなじみの人気シリーズ,5年ぶりの新刊。このたびは大鹿マロイを思わせる大男が新宿にやって参ります。
 俺はあまり良い読者ではないもので,このシリーズの最近の数作については全く印象にないのだが,この作品は久々の傑作だと思った。

フィクション - 読了:「美しい夏」「アントニーとクレオパトラ」「新宿鮫 絆回廊」

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