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2011年12月22日 (木)

Castro, S.L. (2002) Data analytic methods for the analysis of multilevel questions: A comparison of intraclass correlation coefficiens, r_{wg(j)}, hierarchical linear modeling, within- and between-analysis, and random group resampling. The Leadership Quarterly, 13, 69-93.
 階層的データのいろんな分析手法を紹介し、同じデータに適用して結果を比較してみせる啓蒙論文。扱われているのは、級内相関係数(ICC), Jamesらのr_{wg(j)}, 階層線形モデル (HLM)、within- and between-analysis(WABA), それからrandom group resamplingというなにやらbootstrapみたいな手法。
 WABAについて知りたくてざざざーっと目を通した。他の話題は完全に飛ばし読み。ICCだとかgeneralizability theoryだとかなんとか、ああいうの昔っから大の苦手なのである。
 WABAはFred Dansereauという組織研究の先生が唱えている方法らしく、これはなかなか面白そうなのだが、日本語での説明はどこかの紀要の簡単な紹介くらいしか見当たらない。この論文によれば、どうやら分散分析で全平方和を分解するような感じで、全体の相関係数を階層に分解していくらしい。へー。詳しくは Dansereau et al. (1984, 書籍), Yammarino & Markham(1992, J. Applied Psych.), George & James(1993, J. Applied Psych.), Schriesheim(1995, Leadership Qtr.), Yammarino(1998, Leadership Qtr.) あたりをみよ、とのこと。どうやらメジャーな方法とは言い難そうだ。

 階層的データ分析についてはちょっと面白い経験をしたことがあって... 前に市場調査の業界団体が統計手法のセミナーを主催したことがあり、私もちょっとだけ喋らせて頂いたのだが(思えば申し訳のないことだ)、ある講師の方がHLMを紹介しておられて、ちょっと気づかないような面白い話題もあり、勉強になった。で、客席には当時の勤務先の社員も何人かいたのだけれど、あとになって,先日のセミナーの内容を報告しなければならない、ついてはあの階層の話がよくわからなかったんですが...という。内容がわからないというより、実務における必要性がぴんとこない、というのである。いやいやこんなに身近な話はないのよ... と力説してみたのだが、いまいち納得してもらえなかった。
 これは聞き手の問題でもなければ(優秀な人であった)、説明が下手だからでもなく(私の説明はともかく、講師の方の説明はとてもわかりやすかった)、なにかもっと本質的な事情があるのではないかと思う。もしかすると、「なぜデータの階層性を無視してはいけないのか」という話は、データの分析を通じて得られる知見の(外見上の)豊かさと直接に関係しないから、実際にその手のデータと向き合って半泣きになるような目に合わないことには、その必要性を実感しにくいのかもしれない。そう考えてみると、データ解析にも派手な話題と地味な話題がありそうですね。どうせ勉強するのならもっと派手目な話題のほうが、人生少しは楽しいかもしれない。

論文:データ解析(-2014) - 読了:Castro(2002) 階層的データの分析手法対決

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