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2012年1月 7日 (土)

Garland, R. (1991) The mid-point on a rating scale: Is it desirable? Marketing Bulletin, 2, 66-70.
 リッカート尺度について考える機会があったので目を通した。Marketing Bulletinというのはニュージーランドのオープンアクセス誌らしい。この論文は前から気になっていたもので、でも掲載誌の性質がよくわからないので後回しになっていたのであった。Google Scholar様によれば、この雑誌にこれまで掲載されたなかで引用回数が一番多いのがこの論文である。

 調査対象者に食品の成分表示の重要性について評定させる。一方の群は"very important", "important", "neither important nor unimportant", "unimportant", "not at all important"の5件法。他方の群は、中央("neither...")を抜いた4件法。回答の分布を群間で比較すると、5件法群で真ん中は14%。4件法群では中央がなくなった代わりに"unimportant"が8ポイント上昇する("important"は逆に3ポイント減る)。つまり集計値で見る限り、4件法のほうがネガティブにシフトしたわけだ。著者いわく、社会的な望ましさによるバイアスを最小化するためには中央を取り除いたほうがいいとのこと。

 ぜ・ん・ぜ・ん・納得できない。5件法と4件法の違いが回答の社会的望ましさ(SDR)と関係しているという根拠はどこにあるのか。著者も触れているように、4件法にしたせいで回答分布がポジティブにシフトした例だって報告されているのだ。
 そもそも、集計値レベルの分析で良しとするその発想がわからない。SDRとの関係を主張するなら、個人データに基づいてSDR傾向との相関を調べるのが筋だし、4件法と5件法のどっちがdesirableかを問題にしたいのなら、やはり個人データに基づいて検査再検査信頼性や基準関連妥当性を調べるのが筋でしょうに。
 この論文のすごく魅力的なタイトルによって我々が期待するのは、結局のところ 5件法がいいのか4件法がいいのか、という疑問に対するなんらかの示唆であろう。さて,結論部分で著者が書いているのは: The debate continues and the explicit offer of a mid-point is largely one of individual researcher preference. ぐぬぬぬぬ。

論文:データ解析(-2014) - 読了:Garland(1991) 5件法評定と4件法評定のどっちがいいか

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