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2012年1月30日 (月)

平出修 (1913)「逆徒
 平出修という名前はなんとなく昔の歌人として記憶していたのだが,この人はもともと弁護士で,大逆事件の弁護人のひとりであったのだそうだ。この小説は平出が判決の2年後に発表した短い法廷小説で,被告のひとりである無学な青年に焦点を当てている。このたび読んだ田中俊尚「大逆事件」で知り,青空文庫で探して読んでみた。
 死刑宣告を言い渡してさっさと退廷する裁判官たちに対し,視点人物の弁護士は内心で呟く。「人としての諸公が、人としての死刑囚に対したとき、その顔を見るに堪へずとして、自らの顔を背け、寸時もその席にある能はざるの態を示して、出来得るだけ迅速に、しかも威容を乱さずして、その席を退かれたこと、之れ人情の真の流露と見るべきではあるまいか」これが当時の精一杯の書き方だったのだろう。この小説が載った雑誌は直後に発禁処分となったそうである。

フィクション - 読了:平出修「逆徒」

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