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2012年4月11日 (水)

Bookcover クワイン―ホーリズムの哲学 (平凡社ライブラリー) [a]
丹治 信春 / 平凡社 / 2009-10
関係者の頭の良さだけでいえば,哲学こそが人文系諸学における最高峰,F1みたいなものだと思う。大学院の頃を思い出しても,哲学科の院生たちときたら,ほとんど化け物のようであった。分析哲学の世界的な研究者である丹治先生などは,さしずめセナだかシューマッハだかに相当するといえよう。そのF1レーサーが初心者向けに書いた,クワインの入門書。
 こんなに平易なことばで,こんなにヤヤコシイ話を語ることができるのか... と,変な風に感銘を受けた。中身が完全に解ったとは言い難いのだが,とても楽しい読書であった。
 いつも思うのだけれど,分析哲学の本を読んでいると,時折奇妙なユーモアのようなものを感じる。この本でいうと,たとえば指示の不可測性についての議論のなかで,日本語の「牛」は実は一般名辞ではなく物質名辞じゃないか(「一杯のミルク」というのと「一頭の牛」というのは同じなんじゃないか) という奇妙な説を紹介するくだり。この説における「牛」とは「生きた牛肉」として扱われることになる... と述べた上で,いや「一頭の死んだ牛」という言い方もできるから,正確には「生きていたり死んでいたりする牛肉」というほうがよいだろう,とわざわざ注釈をつけておられる。こういうところで,つい吹き出してしまうのである。

Bookcover 般若心経・金剛般若経 (岩波文庫) [a]
/ 岩波書店 / 1960-07-25

哲学・思想(2011-) - 読了:「クワイン」「般若心経・金剛般若経」

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