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2014年5月 2日 (金)

 市場調査では、ある製品の値付けのために消費者の態度・知覚を調べることがある。いちばん単純なのは、これにいくら払いますか、と支払意思額(WTP)を直接に訊くことだが、さすがにそれではあまりうまくいかないので、いろいろな工夫をする。
 経済学のほうでも、調査で人々のWTPを調べるということは広く行われているようで、どうやら公園とか環境とか歴史遺産とか、市場で取引されないもの(非市場財)の評価に使うらしい。よくわかんないけど、市民の主観効用に応じて政策を決めるため、なんですかね。
 あれこれ文献を読んでいると、そうした文脈でのWTPの直接聴取はcontingent valuation (CV)と呼ばれていることが多い。いま検索してみたら、なんと「仮想評価法」という立派な訳語があった。世の中にからきし疎いもので、こういうときに困る。

 Barrage, L., Lee, M.S. (2010) A penny for your thoughts: Inducing truth-telling in stated preference elicitation. Economic Letters, 106, 140-142.
 当然ながら、CVで調べたWTPは高めに歪む。だって、架空の話なら、「この公園を維持するためならワタシ年に100万円でも払いますよ」なあんて言いたい放題ですもんね。この「仮説バイアス」をどうにかしたいので、手法をいくつか比較します、という主旨。
 そのうち目新しい手法はベイジアン自白剤である。つまり、これは Weaver & Prelec (2013) の実験5に相当する研究だ。

 被験者は上海の学生240名(セルあたり24名か...)。評価するのは、災害救援のためのテントへの寄付、ないし公害被害者の法的支援のためのホットラインのスタッフへの寄付。要因は被験者間5水準。さあ、選手入場です。

 結果。賛成率は、テントでは順に48%, 79%, 77%, 50%, 77%。ホットラインでは、32%, 83%, 50%, 17%, 55%。real条件を正解と捉えると、consequentialがやたらに効いている。ベイジアン自白剤はいまいちだ。なんだかなあ。

 事後的分析なので、あんまり深読みするのもどうかと思うけど、cheap-talkと自白剤は、貧困対策団体について良く知らないと答えた人、ならびに女性によく効いたそうだ。ふうん。

論文:予測市場 - 読了: Barrage, & Lee (2010) ベイジアン自白剤 for 支払意思額聴取

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