elsur.jpn.org >

« 読了: 崔(2014) 世論調査の途中で調査対象者に反論してみる | メイン | 読了:Show, Horton, & Chen (2011) ベイジアン自白剤 in クラウド・ソーシング »

2014年5月 8日 (木)

 先日読んだ論文で、「正直に答えないと、正直に答えてないなってわかっちゃうよ」と信じ込ませて回答させると、回答が社会的に望ましい方向に歪むバイアスが消え、正直に答えるようになる、という現象のことをbogus pipelineと呼んでいた。へええ、と思って調べてみたら、ちゃんと有斐閣の心理学辞典にも載っている用語なのであった。ご、ごめんなさい...知りませんでした... (←正直な回答) ないし、一般教養の心理学のコマを持ってた頃は覚えてたけどすっかり忘れてました... (←社会的に望ましい回答)

Roese, N.J., & Jamieson, D.W. (1993) Twenty years of bogus pipeline research: A critical review and meta-analysis. Psychological Bulletin, 114(2), 363-375.
 というわけで、今度の原稿の役に立つかもしれないのでめくってみたレビュー論文。Psychological Bulletinなんて、昔なら大層気が重かったけど、いまは昼飯のついでに楽々と目を通せる。それだけ真剣さが減ったということである。

 いくつかメモ:

 論文後半はメタ分析。そこまでの関心はないので、スキップ。
 著者らいわく、確かにBPLは社会的望ましさバイアスを除去していると考えられる。最近使われてないけど、BPLは有益な道具です。でも測定対象があまり強くない態度であるときは気を付けたほうがいい。云々。
 
 本筋とあまり関係ないんだけど、締めくくりの一節が面白かった。「この重要な手法がほとんど打ち捨てられてしまっている理由を、別の角度から説明できるかもしれない。社会心理学におけるBPLの栄枯盛衰は[...]研究における流行りすたり(faddishness)の教科書的な例であるように思われる。[...]BPLの適用にはもともと、認識論的的な諸問題、妥当性に関する諸問題が備わっている。これらの問題は、確かに困難ではある。しかしそうした困難さは、一見明白にみえる知見の後ろにいつだって隠れているものだ。過去の研究者たちがそれに直面していようが、していなかろうが、そのことは変わらない。本論文で取り上げた諸問題に取り組むことで、将来の研究者たちが来たるべき研究においてBPLの相対的利点を活用できるようになることを望む」。

 いやー、それにしても、オリジナルの凄そうなマシーンってどんなのだったのか、見てみたいなあ。ネットに原論文が落ちていたのをめくったけど、写真は載ってなかった。

論文:調査方法論 - 読了: Roese & Jamieson (1993) ボーガス・パイプライン・レビュー

rebuilt: 2020年11月16日 22:58
validate this page