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2019年5月18日 (土)

Goldberg, M.E., Hartwick, J. (1990) The effects of advertiser reputation and extremity of advertising claim on advertising effectiveness. J. Consumer Research, 172-179.
 面白そうなので一応目を通したんだけど、これは比較広告というより広告一般についての態度変容実験であった。

 いわく、
 社会心理学者によれば態度変容に影響する要因の一つは主張の極端性である。情報源の信頼性はそのモデレータになっている(信頼性が低いときは中程度の極端性で態度変容が強くなり、信頼性が高いときは極端性が高いときに態度変容も高くなる)。
 この結果はFishbein-Azjen(1975)の枠組みで説明できる。主張の受容性と受容下での態度変容に分けて考える。
 信頼性が高いときはそもそも受容性が高く、極端性の増大とともに受容性は低下するもののさほどではない。で、メッセージ受容下の態度変容の程度は極端性とともに増大するから、結局、極端なメッセージのほうが態度変容が大きい。
 信頼性が低いときはそもそも受容性が低いだけでなく、極端性の増大とともに受容性が著しく低下する。で、メッセージ受容下の態度変容の程度は極端性とともに増大する。ふたつ合わせると、極端性が高い時には受容性が低いので態度変容が起こらず、極端性が低いときはやっぱり態度変容が起こらないわけで、逆U字型になるわけだ。

 先行研究。

 仮説。
 H1: 態度変容に対して、広告主の評判と主張の極端性の交互作用がある(評判が高いと極端性高→態度変容、評判が低いと極端性中→態度変容)。
 H2: 広告主の評判が悪いと、主張の極端性と広告の信憑性が強い負の相関を持つ。

 実験やります。
 あるアメリカ製品があって、カナダのある州ではそれを売っておらず[←どこだかわからんが著者らの所属はマッギル大]、学生は製品についても会社についても良く知らない[←論文中では製品名Miroと書かれているのだが、論文用の架空名称なのか、ほんとにミロだったのかよくわからんかった]。
 まず会社についての説明を読ませ(ここで広告主の評判を操作)、質問紙。次に製品のCMをみせる(主張の極端性を操作)。USで放映された、味覚テストに紛れ込んだミロが最高位になっちゃうという本物のCMを使い、音声だけを差し替えている。で、また質問紙。
 要因: (1)広告主の評判。{ポジティブ, ネガティブ}。(2)主張の極端性。「ミロは世界トップ100製品のうち{1位です, 3位です, 5位です, 12位です}」。
 目的変数: (1)製品評価。「CMみたいな味覚テストをもしほんとにやったら、ミロは何位になると思いますか?」(2)広告の信憑性。正直さと誠実性を7件法でとって合計する。

 結果。[読まんでもわかるような気がするので読み飛ばした。要は仮説を支持しとるわけでしょ?]

 考察。この知見が低関与な場面に一般化できるかどうかはわからない。会社の評判のレベルと要素についてさらに調べる必要がある。云々。

 ... なんというか、古き良き説得研究の枠組みの実験だなあ、という感想である。明白な送り手がいて、説得的メッセージがあって、自立した受け手がいて、態度変容があるわけ。で、送り手とメッセージと受け手の要因のあいだに交互作用があって、それを実験室できれいに出して、Petty&Cacioppoかなんかを引き合いに出して説明してみせるわけ(この論文ではもっと遡ってFishbein&Ajzenだけど)。こういう実験研究って、おそらく何千本とあるだろう。多数の才能の多大な知的労力が、こういう研究の量産に費やされてきたわけである。それでは一曲お聞きいただきましょう、中島みゆき「時代」。そんなー時代もーあーったねと...

 まあそれはともかく、整理しておくと、この研究の概念枠組みとしては
(a) {広告主への信頼 x 訴求の意外性} → メッセージ受容性
(b) {メッセージ受容性 x 訴求の意外性} → 態度変容
という2つの交互作用がある、ってことでよいのでありましょうか。

論文:マーケティング - 読了:Goldberg, Hartwick (1990) 広告主への信頼性が高ければ意外な事実を訴求してもよいが、信頼性が低いときはだめ

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