メイン > 書籍:日本近現代史
2009年10月28日 (水)
禅と戦争―禅仏教は戦争に協力したか
[a]
ブラィアン・アンドルー ヴィクトリア / 光人社 / 2001-05
禅宗の高僧たちの戦争協力について述べた本。
いまこの本をランダムにぱらぱらとめくると,たとえばこんな文章がみつかる。「清泉は読者たちに禅の精神に満ちた武士道が,その時代の日本における意義の深さを知らせたかったのであろう。」(p.158)「もしも今まで述べたように集団仏教のすべてが真実であるとすれば,禅宗としてはまったくもってそのままあてはまるものとなる」(p.183)
というわけで,翻訳としての良し悪し以前に,なんだか日本語として妙なのだが。。。しかし,この本を翻訳するというのは,想像するだけで気の遠くなるような作業だ。仏教用語は頻出するし,明治以来の日本語文献の大量の引用について,いちいち原文を探さないといけないわけだし。その大変な作業のおかげで,我々もこの専門書を気軽に読むことができるのだから,文句を言ってはバチが当たる。
2009年10月18日 (日)
歌舞伎町・ヤバさの真相 (文春新書)
[a]
溝口 敦 / 文藝春秋 / 2009-06
新宿・歌舞伎町の戦後史。
歌舞伎町という町名は,戦後すぐに歌舞伎座を誘致しようという計画があったからなのだが,その計画があっという間に頓挫した後でも,ここに劇場街を建設しようという関係者の熱意は冷めなかった。事態が好転したのは,50年の「東京文化産業博覧会」開催で,この博覧会自体は赤字だったのだけれど,このときに建てたパビリオンが娯楽施設に転用され,歌舞伎町の核になった。たとえば「産業館」はスケートリンクになり,これが現在の新宿東急ミラノだそうだ。この頃の事業家たちには,当時三国人と呼ばれた中国・台湾・朝鮮出身者が多く,たとえばミラノの左斜め前のオデオン座(旧「社会教育館」)は東亜興業,すなわち韓国系。その隣のヒューマックスパビリオン(旧「婦人館」)を経営するヒューマックスグループは華僑系なのだそうだ。へえー,知らなかった。
2009年8月31日 (月)
夏も終わってしまうというのに,バカンスともリフレッシュとも無縁のまま,土日も出社しひたすらデータ解析,mplusがぶんぶん回っている隙に仕事と全然関係ない本をぱらぱらめくるのが唯一の息抜き,という。。。泣くぞ,泣いちゃうぞ。
ノモンハン事件―機密文書「検閲月報」が明かす虚実 (平凡社新書)
[a]
小林 英夫 / 平凡社 / 2009-08
ノモンハン事件の悲惨な結末にもかかわらず,主導者の関東軍参謀たちが責任をとらなかったことはよく知られているが,そのことと前線指揮官たちの処遇とはコインの裏表であった。状況判断により命令なしに撤退した指揮官たちは厳しく処罰され,自決が相次いだ。それには二つの意味があった。一つは,敗北の責任を取らせるための生け贄。もうひとつは,彼らが事件の実態をもっともよく知っており,もし彼らが真実を語りはじめれば,当時の日本人が共有していたノモンハン事件の虚像が崩壊しかねなかった,という点。
歴史の話をすぐに手近な経験に当てはめるのは,なんだかオヤジくさくて嫌なんだけど,でもやっぱり,こういう話を読むと。。。失敗から学習しない組織ってのは,そのぶん退職者を必要とするのかもなあ,などと,感慨にふけってしまう。
2009年8月12日 (水)
貧民の帝都 (文春新書)
[a]
塩見 鮮一郎 / 文藝春秋 / 2008-09
2009年5月24日 (日)
近衛文麿―教養主義的ポピュリストの悲劇 (岩波現代文庫)
[a]
筒井 清忠 / 岩波書店 / 2009-05-15
なんとなく買ってみたんだけど,本屋の帰りの電車でめくり始めたらこれが面白くて,他の本を中断して読み終えた。予想外のヒット。
いくつかメモしておくと,
- 31年頃,貴族院の改革という政治問題があったのだが,最大会派の「憲法研究会」の会規をめぐって議論が紛糾,当時副議長だった近衛の手腕が問われる事態になる。このとき近衛は,そもそも会派とはなんぞや,というテーマを扱う小委員会を別に設置することで,不毛な改革論議をうやむやに葬ってしまう。見事な手腕だが,「厳しくいえば,これは問題を先送りして一時的に対立・危機を回避させる手法に過ぎず,国内問題のみに通ずる手法であって戦争などの国際問題には通用しにくい手法といわねばならないだろう」。なるほど。逆にいえば,なぜ国内問題だと通用しちゃうのか,というところが大事だと思う。
- 大正デモクラシー期の近衛は平和主義者だった。満州事変後の近衛は陸軍に近い強硬論者だった。風見鶏のように見えるが,その背後には,華族は大衆の意向に逆らってはいけないという信念があった。近衛は確信的ポピュリストだったのである。また権力論的にいっても,「当時の政治権力に実態的な根を持っていない知識人政治家[...]が,政治指導者たろうとすれば[...]ある種のポピュリズムが必然化するしかなかった」。陸軍を近づけたのも,強硬論に同調したからではなく,強硬論が国民の間でいずれ力を持つ運命にあると見越し,先手を打って政治のヘゲモニーを奪い返そうとしたからであった。「もとより,これも強硬論に押された議論であって,先手を打つということがもうヘゲモニーを握られているということであり,先手を打てば政治家に主導権が戻ってくる保証などどこにもありはしないのである。しかし『国民的運命』というところに近衛のこの種の言動を理解する鍵があるのであって[...] 『国民』を尊重する政治家ほど国民多数の強硬論には反対できないという民主主義の逆説が民主主義者を苦しめ始めていたのである」
- 近衛は国民からスター級の人気を集めた。「それは後の『皇室アルバム』的なものの政治化なのであった」。知識人たちもまた近衛に強い共感と支持を寄せた。この点に関しては近衛のほうも印象操作をしたのだそうで,たとえば訪米する際,当時の新進学者である帝大の蝋山政道教授(戦後に民社党のイデオローグとなった政治学者)と,わざわざ一緒に船に乗ったりする。これが帝大生の見送りにつながり,知的権威がさらにアップする,ということなのだそうである。ううむ,そういうものか。想像もつかないなあ。
- 南京占領後,国民党政府との和平が探られるが,広田外相をはじめ政府側はむしろ交渉を打ち切ろうとし(国民の支持を失わないため利権を求めていたから),いっぽう軍部は早期終結を求めた(対ソ戦を想定していたから)。参謀本部は統帥権独立を盾にとって,首相の上奏よりも先に参謀総長の上奏を手配しようとするが,天皇に断られてしまい,和平案は流れる。時代は下って東条内閣の時,東条を批判する者は逮捕されたり自決に追い込まれたりで,反東条派は身動きがとれない。転機は東条が参謀総長を兼任したときに訪れた。統帥権独立を盾とした東条批判が可能になったのである。このように,統帥権独立の不徹底が泥沼の戦争を招き,統帥権独立が軍部支配を倒す制度的根幹となった,のだそうである。へえー。
2009年4月 5日 (日)
決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)
[a]
半藤 一利 / 文藝春秋 / 2006-07
玉音放送のあった8月15日の未明,阿南陸相は官邸の廊下で切腹するが,なかなか絶命しない。その最中,官邸の別室で,中佐たちが次のように囁きあっていたのだそうだ。「俺はいまここに大臣の印鑑を預かっている。やろうと思えば...全軍蹶起を大臣命令でだせるのだ」「ニセの大臣命令などすぐばれる。それに,そんなことをしても大臣がはたして喜ばれるだろうか」「いまのは冗談だよ」
なるほど,混乱のさなかにこそ,その人の心の奥底があらわになるものなのだろう。
2008年12月21日 (日)
大平正芳―「戦後保守」とは何か (中公新書)
[a]
福永 文夫 / 中央公論新社 / 2008-12
大平元首相はこう書いているそうだ。「政治は,もともとデスティネーションのない航海のようなものである。一日一日を何とか難破しないように安全に航海しなければならない。しかし乗船した人々は,明日の寄港地と最終目的地を知り,一刻も早くそこに到着することを望む。しかし,もともとデスティネーションはない。船客の願いは多彩であり,その欲求不満も限りはない。航海の責任をあずかる者の苦悩は深い。(中略) しかし,いかに悩みは深くとも,われわれは,航海を続けなければならない。しかも安全に続けなければならない」
ついつい我々は,えらい人に対して将来についての明確なビジョンのようなものを求めてしまうけれども(「美しい国へ」とか「とてつもない日本」とかね),正味のところは上記の通りだろう。あまりに明確な行き先を掲げるリーダーに対しては,それはそれで眉に唾つけておいたほうがよさそうだ。政治家にせよ,経営者にせよ。
2008年11月 3日 (月)
日本の百年〈9〉廃墟の中から―1945~1952 (ちくま学芸文庫)
[a]
鶴見 俊輔 / 筑摩書房 / 2008-06-10
61年刊の戦後史シリーズ,その9巻目。終戦直後の世相を記録した内容。エピソードがどうしても東京に偏ってしまうのは,致し方のないことなのだろう。
8月15日,民間の尊皇主義団体が内大臣木戸幸一の宿泊先を襲撃し警官を斬り(木戸は宮中にいて無事だった),その後愛宕山に立てこもり7日間に渡り籠城,最後は手榴弾で自爆するという事件があったのだそうだ。愛宕神社は勤め先の近所で,ときどき散歩にいくのだが,そんな事があったとは知らなかった。
玉音放送を聞いても全軍が武器を置いたわけではなく,特に厚木航空隊は強硬な抗戦派で,だから愛宕山の籠城の折りにも飛行機が飛んできて,取り囲む警官隊に徹底抗戦を訴えるビラを撒いた由。パイプをくわえたマッカーサーがタラップを降りてくるあの有名なシーンは厚木基地でのものだが,占領軍が第一陣の到着地をこともあろうに厚木に指定してきたもので,日本側としては「厚木基地ではいま反乱が起きているから他の場所に変えてください」ともいえず,おかげで鎮圧に大変な苦労をしたそうだ。うーん,よくあるよなあ,そういうことって。
2008年9月28日 (日)
日本の百年〈10〉新しい開国―1952~1960 (ちくま学芸文庫)
[a]
鶴見 俊輔 / 筑摩書房 / 2008-07-09
'61年刊の本の復刊。明記されていないが,ほとんど鶴見俊輔の単著らしい。庶民の聞き書きや社会風俗に焦点を当てた内容で,当時として野心的な試みであったのだろうと想像できる。
61年の時点で振り返った戦後像とは,なるほどこういうものだったか,と興味深く読んだ。「あらゆるブームのなかでもっとも不可解なものは,1960年夏のダッコチャンのブームだった」なんてね。
それからの海舟 (ちくま文庫)
[a]
半藤 一利 / 筑摩書房 / 2008-06-10
2008年8月25日 (月)
永訣の朝 (河出文庫)
[a]
川嶋 康男 / 河出書房新社 / 2008-08-31
数年前に札幌の博物館ではじめて知ったのだが,終戦直後,樺太にあった真岡という町にソ連軍が攻め込み,電話交換手の若い娘たちが次々と毒を呷って死んだ事件があったのだそうである。玉音放送の5日後の出来事である。その経緯を描いたノンフィクション。
集団自決は具体的な危険に迫られてというより,一種のマス・ヒステリーのようなものだったらしい。本当に悲劇的な話だ。
とはいえ,同時期には引き揚げ船が撃沈されたりソ連軍に砲撃されたり朝鮮人が虐殺されたり,たくさんの人が亡くなっているわけで,それらの無名の死者たちを棚に上げて自決した乙女たちだけを称揚するのも,なんだか変な話だと思う。
2008年8月17日 (日)
学歴・階級・軍隊―高学歴兵士たちの憂鬱な日常 (中公新書)
[a]
高田 里惠子 / 中央公論新社 / 2008-07
阿片王―満州の夜と霧 (新潮文庫)
[a]
佐野 眞一 / 新潮社 / 2008-07-29
最後の幕臣 小栗上野介 (ちくま文庫)
[a]
星 亮一 / 筑摩書房 / 2008-08-06
幕末に切れ者の幕府高官として知られた小栗上野介についての評伝。偉い人だったかもしれないけど,すごく魅力的な人とは言い難いですね。
2008年6月29日 (日)
甘粕正彦 乱心の曠野
[a]
佐野 眞一 / 新潮社 / 2008-05
文革の頃に日中共産党の関係が悪化し,日本の共産党から親中派の活動家たちが離脱したが,そのなかでいまでも活動を続けている党派のひとつが,下関にある日共左派である。反米愛国調の見出しが踊る新聞を出していて,もう亡くなっている党指導者がいまだ編集主幹ということになっていて,たしか劇団もやっていて,雰囲気がなんだかカルト的だと揶揄する文章を読んだ覚えがあるが,なにしろ遠く山口県の話だからよく知らない。
かの甘粕大尉について書いたこの本を読んでいたら,突然その話が出てきてびっくりした。甘粕は満映で左翼からの転向者を多く配下に置いたが,その一人に三村亮一という非合法共産党の活動家がおり,この人が満州で結婚したのが檀一雄の妹の檀寿美さんという方(ってことは女優の檀ふみの叔母さんですね)。1917年生まれのこの方は現在,下関の長周新聞社(つまり,日共左派の機関紙)で「住み込みのスタッフとしてイラストなどの仕事をしている」のだそうで,檀一族の間では「毛沢東おばさん」と呼ばれているのだそうである。へえーー。
広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像 (中公新書)
[a]
服部 龍二 / 中央公論新社 / 2008-06
2008年4月 6日 (日)
戦う石橋湛山―昭和史に異彩を放つ屈伏なき言論
[a]
半藤 一利 / 東洋経済新報社 / 2008-01
戦争に向かう日本にあって,石橋湛山はひとり軍部を批判し,決して屈服することがなかった。素晴らしい。では,時代の流れを変えるためには,いったい何人の石橋湛山がいればいいんだろうか?
2008年2月24日 (日)
幕末の大奥―天璋院と薩摩藩 (岩波新書)
[a]
畑 尚子 / 岩波書店 / 2007-12
適当に読み飛ばしてしまった。残念。
2008年2月17日 (日)
占領と改革―シリーズ日本近現代史〈7〉 (岩波新書)
[a]
雨宮 昭一 / 岩波書店 / 2008-01
敗戦以前と以後の,政治思潮と社会体制の共通性を強調する内容であった。ふうん。
2008年2月11日 (月)
東京裁判 (講談社現代新書)
[a]
日暮 吉延 / 講談社 / 2008-01-18
2008年2月10日 (日)
昭和天皇 (岩波新書)
[a]
原 武史 / 岩波書店 / 2008-01
昭和天皇の,特に祭祀を司る王としての側面に焦点を当てた本。面白かった。ビックス「昭和天皇」を読んでいたときにも思ったのだけど,税金払っているわりには,我々は天皇について案外なにも知らないものだ。
貞明皇太后(昭和天皇の母)は大変に宮中祭祀を重視しており,第二次大戦の戦況悪化とともにますます神懸かり,天皇はそれに反発しながらも引きずられていったのだそうだ。天皇の自然科学者としての側面と祭祀への熱意とはいっけん矛盾するようだが,著者によれば,生物学者が宗教に関心を持つのは珍しい事ではない由。
昭和天皇独白録では,講和を目指した理由として,伊勢神宮・熱田神宮が米軍の制圧下におかれたら三種の神器が守れなくなると思ったから,と述べられている箇所がある(臣民を救う,なんていうのは二の次である。もちろんそういうものであろう)。戦後すぐに伊勢神宮に参拝した際の皇后の記録には,参拝して「親しく事のなりゆきをわびさせられ」。。。というくだりがあるのだそうだ。昭和天皇は戦争について,結局は誰にも謝罪しなかったといわれているが,ご先祖に対してはまた違ったんですね。
2008年1月 8日 (火)
西南戦争―西郷隆盛と日本最後の内戦 (中公新書)
[a]
小川原 正道 / 中央公論新社 / 2007-12
明治政府の高官たちも,まさか西郷さんが挙兵するとは思わなかったのだそうだが,その西郷さんは薩摩の若者たちに祭り上げられるあまり,かえって決定から隔離されていたのだそうだ。なるほど,カリスマ的指導者というのも良し悪しだなあ。
2007年12月 9日 (日)
中国戦線はどう描かれたか―従軍記を読む
[a]
荒井 とみよ / 岩波書店 / 2007-05
林芙美子を中心に,従軍作家の文章について論じた本。著者はもう退官した先生らしくて,本のスタイルは研究書というよりエッセイに近い。軍部のチアリーダーと化した林芙美子に対して,しかし複雑な共感を隠さないところが興味深かった。
最終章はまさにエッセイという感じの内容で,朝日新聞の投稿歌壇のとある常連さんの作品に心惹かれ,その人が従軍の記憶を歌った投稿作を日々メモし続けたあげく,ついに新聞社を通じてその人(佐藤文夫さんという人)に連絡をとってしまうのである。その作例:「帰還してやさしかりしは久里浜の砂なり老いて踏みにゆきたり」
2007年11月25日 (日)
明治を生きた会津人 山川健次郎の生涯―白虎隊士から帝大総長へ (ちくま文庫)
[a]
星 亮一 / 筑摩書房 / 2007-11
艱難辛苦をくぐり抜け帝大総長にまでなった,会津出身の物理学者の伝記。日本の慈善活動の始祖・山川捨松はこの人の妹だそうだ。
日経の「私の履歴書」欄と同じで,正直なところ,偉くなってからの話はつまんない。
2007年11月 1日 (木)
沈黙のファイル―「瀬島 龍三」とは何だったのか 新潮文庫
[a]
/ 新潮社 / 1999-07
知られざる証言者たち―兵士の告白
[a]
太平洋戦争研究会 / 新人物往来社 / 2007-07
枢密院議長の日記 (講談社現代新書)
[a]
佐野 眞一 / 講談社 / 2007-10-19
ちょうど大本営参謀・瀬島龍三についての本を読んでいるときに風邪を引いた。鼻水,寒気,それから頭痛。
俺は特に強健でも病弱でもないが,熱を出して寝込むとものすごい悪夢をみるという特徴があって,だから風邪のなにがコワイといってあの長い長い夜が怖いのである。たしか最初の経験は学生時代で,卒論提出の数日前の夜,チョムスキーがホワイトボードの前に立ち,お前の卒論はくだらない,本当にくだらない,犯罪的にくだらないからその激しい頭痛は決して治ることがないし朝も決してやってこない,いますぐ根本的に反省し生まれたあたりからやりなおしなさい,と論理的に説明してくれた(日本語で)。明け方になって,ちがうこれは妄想だ,頭が割れそうなくらいに痛いのは風邪を引いているからだと気が付いたときには,安堵で身体中が溶けそうになった。
妄想の内容はそのとき考えていることに強く影響される。だから戦中戦後史の本を読んでいるときに風邪を引くのはいかにも具合がわるい。掛け布団を重ねて寝込んだところ,旧満州でソビエト軍に追われながら女性と子どもを次々に刺し殺し,最後は自分も。。。という夢を見始めて,これはいかん,いま寝るわけにはいかん,と青ざめた。
で,布団に潜り込んでかわりに手にとったのが「知られざる証言者たち」という本で,これは戦中体験の聞き書きではあるものの,ちょっとくだけた内容なので(戦艦大和ではいかに男色が多かったか,とか),具合がいいんじゃないか,と思ったのである。間違っていました。ガダルカナル島の密林を舞台にした,ちょっとここでは文字に出来ない,とんでもない内容の夢をみました。
運悪く,枕元に積んであるのはたまたま現代史の本ばかりだった。そのなかでは最も気楽そうな,記録魔の宮内官僚が残した膨大な日記についての本を読んだ。面白い本だったが,学習院大のキャンパスで家柄の良い青年たちに取り囲まれ,徹底的に馬鹿にされる夢をみた。
本棚から探すとしても,アカデミックな本やビジネス書はもちろん論外である。布団に座り込み途方に暮れた末,思い切って起き出して,四コママンガの傑作「OL進化論」(既刊27冊)を手当たり次第に読みまくり,ようやく短い眠りを得た。秋月りすさんに心から感謝。お歳暮でも送りたい心境である。
2007年10月14日 (日)
キメラ―満洲国の肖像 (中公新書)
[a]
山室 信一 / 中央公論新社 / 2004-07
ここんところずーっと持ち歩いていた本。新書とは思えない重くてしんどい内容で,読み進めるのが大変だった。
満州国の成立から崩壊までを追いかける内容なのだが,焦点は細かな史実そのものではなく,日本の近代史における「満州国」の位置づけにある。だから結局は,日本にとってアジアとはなにか,我々にとって国家とはなにか,という話になってしまう。一読しただけでげっそり疲れるのも道理である。
橘樸(たちばなしらき)という人がいて,中国ナショナリズムを直視し日本人の偏見に警鐘を鳴らしたリベラルな中国研究者であったのだが,この人は結果的に満州国初期"王道主義"のイデオローグとなった。その複雑ないきさつからは,俺たちが政治に向かい合う上でのさまざまな教訓を得ることができる,ような気がするんだけど,なにしろ複雑な話だもんで,よく理解しきれない。うぐぐぐ。
2007年9月12日 (水)
アジア・太平洋戦争―シリーズ日本近現代史〈6〉 (岩波新書)
[a]
吉田 裕 / 岩波書店 / 2007-08
日本にはアメリカナイゼーションの長い歴史があって,太平洋戦争のあいだでさえそれが根絶やしにされることはなかった。42年には丸亀の女学校の生徒が捕虜にサインを求めた事件があったし,日本兵の間で中国兵の蔑称はあったが(「チャンコロ」とか) 米兵の蔑称はなかった。云々。なるほど,考えても見なかった。俺の祖父母の世代の日本人が,意外なほどあっけなく占領を受け入れ「敗北を抱きしめ」るに至った背景には,それなりの底流があったということなんだろうな。
2007年8月 4日 (土)
軍神―近代日本が生んだ「英雄」たちの軌跡 (中公新書)
[a]
山室 建徳 / 中央公論新社 / 2007-07
ここ数日の通勤本。マーケティングとも心理学とも関係のない本は,なんでこんなに面白いのでしょうか。
日露戦争の「軍神」広瀬中佐の巨大な銅像が,かつて万世橋駅前の広場に立てられ東京名物となっていたのだそうだ。万世橋駅ってのはこないだ閉館した交通博物館のところだが,駅前広場ってどこだろう? どうやら銅像があったのは博物館の郵便局側,黒い機関車が置いてあった辺りらしいのだが,うーん,どうもぴんとこない。
この銅像は昭和二十二年,占領軍の指示ではなく日本側の判断で,取り壊されたのだそうである。
2007年7月 9日 (月)
満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉 (岩波新書)
[a]
加藤 陽子 / 岩波書店 / 2007-06
いまAmazonをみたら,この本のカスタマーレビューには,この本の内容とは全然関係のない主張が何件も書きつけてある(慰安婦が云々,朝日が云々)。たぶん同じ人だろうけど,面白いことに,本の「おすすめ度」はどれも満点にしてある。あきらかに読んでもいない本なのだから,どう評価してもよいだろうに,なぜだろうか。「おすすめ度」を高くしたほうが,スパムと判断されにくいのだろうか。
2007年6月22日 (金)
北朝鮮へのエクソダス―「帰国事業」の影をたどる
[a]
テッサ・モーリス・スズキ / 朝日新聞社 / 2007-05-08
オーストラリアの日本研究者が,50年代末の北朝鮮への帰国事業について書いた本。特に前半部分が大変勉強になった。帰国事業は日本政府にとって,在日朝鮮人を厄介払いするという意味合いがあった由。
2007年6月12日 (火)
大本襲撃―出口すみとその時代
[a]
早瀬 圭一 / 毎日新聞社 / 2007-05-23
戦前の大本教弾圧について関心があったので,このような本が出たのはありがたい。悪くない本だと思う。
しかし,書き手が二代目教主に惚れ込んでしまっている点は評価が分かれるところだろう。80年代の内部分裂の話には触れていないし,大本系の新宗教についても記述がないし,巻末は現教主のインタビューだし,これでは大本の宣伝本だと受け取られても仕方がない。毎日新聞はいったいどうしちゃったんだろう?
2007年5月20日 (日)
日清・日露戦争―シリーズ日本近現代史〈3〉 (岩波新書)
[a]
原田 敬一 / 岩波書店 / 2007-02
2007年5月13日 (日)
権力の病室―大平総理最期の14日間
[a]
国正 武重 / 文藝春秋 / 2007-04
2007年5月 3日 (木)
大正デモクラシー―シリーズ日本近現代史〈4〉 (岩波新書)
[a]
成田 龍一 / 岩波書店 / 2007-04
2007年4月20日 (金)
表舞台 裏舞台──福本邦雄回顧録
[a]
福本 邦雄 / 講談社 / 2007-04-10
戦後政治の聞き書きシリーズ。福本邦雄という人は岸内閣で官房長官の秘書官,その後長く政界のフィクサーと呼ばれたひとだそうだ。なんと,「福本イズム」で知られる戦前の共産党指導者・福本和夫の息子なんだそうである。ひえー。
これでもかというくらいにどろどろとした話が淡々と語られていて,俺のような素人にも面白く読めた。
2007年4月 1日 (日)
外交激変元外務省事務次官柳井俊二 (90年代の証言)
[a]
五百旗頭 真,伊藤 元重,薬師寺 克行 / 朝日新聞社 / 2007-03-07
90年代偉い人インタビューの第三弾。外務省の偉い人というのはこういう風に考えるのか,とあれこれ感心した。
湾岸戦争のときに自衛隊を海外派遣しようという法案をつくったのだが(結局廃案になった),外務省のなかでも事務次官(栗山尚一)が強硬に反対し,ハト派の政治家が妥協してもこの人は一向に折れないもので,朝まで議論になったそうだ。この栗山さんという人は,最近首相の靖国参拝を批判して,売国奴呼ばわりされている人である。一言で官僚といっても,いろいろな人がいるものだ。
2007年3月18日 (日)
二・二六事件とその時代―昭和期日本の構造 (ちくま学芸文庫)
[a]
筒井 清忠 / 筑摩書房 / 2006-10
1920-30年代の日本は大衆社会化が進行し,思想面でも社会の平準化への志向が顕著になった。その原型として,(1)社会主義思想,(2)総力戦思想(永田鉄山とか),(3)一君万民主義があった。岸信介ら革新官僚の社会観はこの3つを混ぜ合わせたもので,中には社会党に入党寸前の官僚もいた(以上は2章から)。へええ。
2007年2月26日 (月)
昭和史の教訓 (朝日新書)
[a]
保阪 正康 / 朝日新聞社 / 2007-02
2006年11月30日 (木)
天皇と政治―近代日本のダイナミズム
[a]
御厨 貴 / 藤原書店 / 2006-09
2006年11月18日 (土)
ミッション・スクール (中公新書)
[a]
佐藤 八寿子 / 中央公論新社 / 2006-09
明治期以来のミッションスクールのイメージの変遷を辿る,という本。ある意味どうでもいい話ではあるが,でもなかなか面白い内容であった。
著者が精魂込めて打ち込んだ研究の精髄を,晩飯食べながら小二時間で読んじゃえるんだから,新書というのはありがたいものですね。
2006年11月12日 (日)
90年代の証言 宮澤喜一―保守本流の軌跡
[a]
/ 朝日新聞社 / 2006-11
宮澤元首相の聞き書き本はたくさんあって,俺も数冊読んだことがあるが,この本を含め,どれも滅法面白い。
この人はかつて「東京‐ワシントンの密談」という有名な本を書いているのだが,なぜそんな本を書いたのか,という質問にこう答えている。サンフランシスコ講和会議のあと,鳩山・岸などの公職追放組が政治に復帰しはじめ,吉田茂が退陣する。宮澤さんはその時すでに政治家だったが,もう終わった,と思ったのだそうである。「中央政界でまさに『55年体制』ができているときに,私は『そんなことは俺の知ったことではない』という気持ちがありまして,資料を持って軽井沢にこもって,とにかくいっぺんまとめておこうと思って書いたわけです」「それはやはり,鳩山さんに代表される追放復活者の方々の顔ぶれをみて,彼らの信条通りの政治が実現すれば,明らかに戦前にさかのぼることになるわけですから。私たちとは明らかに違う人たちが戻ってきたということがはっきりしていましたからね」
2006年9月12日 (火)
巨魁―岸信介研究 (ちくま文庫)
[a]
岩川 隆 / 筑摩書房 / 2006-09
原著は77年刊(岸信介はまだ生きているわけである)。岸信介について書かれた最初期の作品であるらしい。おそらくは安部さんに当て込んで再刊されたのだろう。
アジア主義を問いなおす (ちくま新書)
[a]
井上 寿一 / 筑摩書房 / 2006-08
2006年8月31日 (木)
陸軍中野学校 情報戦士たちの肖像 (平凡社新書)
[a]
斎藤 充功 / 平凡社 / 2006-08-10
“敗戦”と日本人 (ちくま文庫)
[a]
保阪 正康 / 筑摩書房 / 2006-08
昭和の空白を読み解く〈昭和史 忘れ得ぬ証言者たち Part2〉 (講談社文庫)
[a]
保阪 正康 / 講談社 / 2006-08-12
日本の失敗―「第二の開国」と「大東亜戦争」 (岩波現代文庫)
[a]
松本 健一 / 岩波書店 / 2006-06
2006年8月 6日 (日)
溥儀―清朝最後の皇帝
[a]
入江 曜子 / 岩波書店 / 2006-07
われ巣鴨に出頭せず―近衛文麿と天皇
[a]
工藤 美代子 / 日本経済新聞社 / 2006-07
あれもこれもスターリンのせいである由。H.ノーマンと都留重人の策謀によって近衛文麿は過重な責任を負わされたとかなんとか(ノーマンが最後までコミュニストであったかのような書きかたである)。うーん,面白かったけど,これってちょっと偏ってないか?
2006年6月18日 (日)
戦後戦記 中内ダイエーと高度経済成長の時代
[a]
佐野 眞一 / 平凡社 / 2006-06-13
ベストセラーになった「カリスマ」の後日譚にあたる本。堤清二との対談が滅法面白かった。
2006年6月 9日 (金)
吉田茂―尊皇の政治家 (岩波新書 新赤版 (971))
[a]
原 彬久 / 岩波書店 / 2005-10
吉田茂は欧米的教養を備え,軍部の専横を嫌っていたけれど,「民主主義政治家であったかどうかは疑わしい」,と宮沢喜一さんが述べている由である。ふうん。
2006年5月24日 (水)
評伝 緒方竹虎―激動の昭和を生きた保守政治家 (岩波現代文庫)
[a]
三好 徹 / 岩波書店 / 2006-04
偉い人の評伝。なんだかアアソウデスカという気分である。朝日新聞の主筆として戦争協力の責任を問われ公職追放されたことについて,それによって他の幹部が責任を免れたのだから悔いはない,と述べている由。当事者には切実なんだろうけど,そんなことを云われてもなあ。
2006年5月 7日 (日)
危機の宰相
[a]
沢木 耕太郎 / 魁星出版 / 2006-04
77年に発表された作品に手をいれたもの。ふーん。
2006年4月 9日 (日)
長州戦争―幕府瓦解への岐路 (中公新書)
[a]
野口 武彦 / 中央公論新社 / 2006-03
思えば去年の3/31に大学を引き払い,翌日からいきなり民間企業に勤めたのであった。今年の3/31はその会社の机を片づけ,週明けから全く毛色の違う会社に通っている。やれやれ。
自分で望んだことであっても,上司や環境に恵まれても,やはり転職というのはそれなりに疲れるものだ。なにも大それたことは目指していないのに,なんでこんなことになるのかしらん。来春こそは心穏やかな4月を迎えたい。
2005年10月 6日 (木)
戦後史 (岩波新書 新赤版 (955))
[a]
中村 政則 / 岩波書店 / 2005-07
戦後社会史を個人的思い出話を織り交ぜてつづったもの。こんなのを岩波新書から出すなんて,さぞや偉い人なのだろう。
2005年9月 4日 (日)
日本軍閥暗闘史 改版 (中公文庫 R 17)
[a]
田中 隆吉 / 中央公論新社 / 2005-07
東京裁判で検察側証人になった軍人が書いた手記。ふーん。
私の戦後六〇年 日本共産党議長の証言
[a]
不破 哲三 / 新潮社 / 2005-08-20
意外な版元なので期待してしまったのだが,別に新日本出版社から出ていてもおかしくない内容だった。ほんとは六全協までの話を期待してたんだけど,それは無理にしても,もうちょっと突っ込んだ打ち明け話があってもよさそうなものだ。残念。
2005年6月19日 (日)
甘粕大尉 (ちくま文庫)
[a]
角田 房子 / 筑摩書房 / 2005-02-09
ここしばらくの風呂の友であった。
2005年4月27日 (水)
中村屋のボース―インド独立運動と近代日本のアジア主義
[a]
中島 岳志 / 白水社 / 2005-04
こうなったらSEMをやるしかないと決意し(まさかいまから勉強する羽目になるとは思いもよらなかったぞ),定時に退社して,閉店間際の新宿ジュンク堂で豊田秀樹の本を手に入れた。早急に帰宅して勉強するはずが,ゲウチャイでラーメン喰ったついでにブックファーストに寄ったのがいけなかった。帰りの電車でこの本を読み始めたらもうとまらなくなり,エクセルシオールでも風呂でも読み続け(中盤に倉田真由美で一服したりして),さきほど読了。いやあ面白かった。著者は75年生まれの学振,嫌になっちゃうなあもう。
2005年3月26日 (土)
昭和戦後史の死角 (朝日文庫)
[a]
保阪 正康 / 朝日新聞社 / 2005-02
先週からぱらぱらめくっていた本。だいたい読んだと思うので,読了にしちゃおう。
2005年3月14日 (月)
聞き書 宮沢喜一回顧録
[a]
/ 岩波書店 / 2005-03
それなりに面白く読んだのだが,なにぶん知識不足で,わからない話が多いところがもどかしい。
2005年2月14日 (月)
関東軍 (講談社選書メチエ)
[a]
中山 隆志 / 講談社 / 2000-03
ノモンハン作戦を指揮した辻政信は,責任を取ることもなく終戦まで陸軍の中枢にあり,戦後は東南アジアに潜伏,戦犯時効後に手記を発表してベストセラー,参院議員になったがなぜかラオスで失踪した由。へー。
2005年2月 4日 (金)
流言・投書の太平洋戦争 (講談社学術文庫)
[a]
川島 高峰 / 講談社 / 2004-12-11
著者は若い人。へー。
言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書)
[a]
佐藤 卓己 / 中央公論新社 / 2004-08
いろいろ考えるところあったが,詳細略。素晴らしい本であった。
2004年12月23日 (木)
昭和史 忘れ得ぬ証言者たち (講談社文庫)
[a]
保阪 正康 / 講談社 / 2004-12