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2017年1月 4日 (水)

Bookcover シェイクスピア全集24 ヘンリー四世 全二部 [a]
シェイクスピア / 筑摩書房 / 2013-04-10
以前に小田島訳で読んでいたのだけど(ブログを検索してみると2011年だ)、このたび松岡訳で再読。

 ヘンリー四世といえば不肖の王子ハルとほら吹きフォルスタッフである。以前戯曲を読んだときは、フォルスタッフの魅力にただ打ちのめされるだけだったが、このたび付き合いで舞台を観て(鵜山仁演出)、遊蕩のハル王子がなにを考えておるかという点が、はじめて腑に落ちるような気がした。もちろん、いろんな解釈がありうるんだろうけど...
 思うに、ハルくんは自分が何者なのか、なにをしたいのか、よくわかってないし、わかりたくないんじゃないですかね。一部三幕で父王に叱責されたハルは、心を改めますと誓い、ホットスパーと闘いますと宣言するけれど、そういう自分の言葉を自分でも信じきれないんじゃなかろうか。ついでにいうと、父王もまた、最期まで息子を信じてないんじゃないんじゃないかと思う。それでも死の間際、父は息子を許すのだけけれど。
 そう考えると、最後にフォルスタッフを冷たくあしらうくだりも、思ったほどには哀しい場面ではないような気がしてくる。人はいつか、自分が何者かを知り、状況の軛のなかで生きなければならない。もしかすると、遊蕩の師・フォルスタッフにも、その結末はうすうす分かっていたのかもしれない。

読了:「ヘンリー四世」

2016年12月31日 (土)

Bookcover 糸切り 紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫) [a]
吉永 南央 / 文藝春秋 / 2016-12-01
そうそう、これも2016年に読んだ本だった。なにかの時間待ちの都合で手に取ったんだっけ? 滅多に読まないタイプの軽い小説だけど、なかなか面白かった。シリーズ4作目だそうだ。

読了:「糸切り 紅雲町珈琲屋こよみ」

Bookcover 神曲 煉獄篇 (講談社学術文庫) [a]
ダンテ・アリギエリ / 講談社 / 2014-07-11
Bookcover 神曲 天国篇 (講談社学術文庫) [a]
ダンテ・アリギエリ / 講談社 / 2014-08-12
今年秋から延々と読み進めていたのが、このダンテ「神曲」であった。「地獄篇」の面白さで勢いがついて「煉獄篇」も読み進め、「天国篇」からはもはや意地になって頁をめくった、という感じ。それにしても、なんなんですかね、あの「天国篇」って。一体全体、どういう読者を想定していたんだろうか。ま、ともあれ、無事に読み終えてほっとした。

 話はちがうけど...
 アップルの新製品が出る前に、webメディアとかにものすごい称賛記事が出るじゃないですか。至高のユーザ体験、未来への扉がここに、購入それは革新への意思だ、的な。あれ!あれって「神曲」にちょっと似てるよね!と思った次第である。
 考えてみれば、ダンテ描くベアトリーチェは永遠の恋人というより、神が差配する決定論的システムのアレゴリー的基軸というか、なんというか、とにかくヒトではないのである。同様にああいう記事も、実は新製品そのものについての記事ではなく、電子製品に仮託してありうべき世界秩序を希求する消費主義の叙事詩なのだ...と考えれば納得がいく。物憂い生に差し込む一筋の救済。お金で買える恩寵。いやー、泣かせますね。

Bookcover 犯罪 (創元推理文庫) [a]
フェルディナント・フォン・シーラッハ / 東京創元社 / 2015-04-03
秋に読んだんだっけ? ドイツのミステリ作家による短篇集。

読了:「神曲 煉獄篇」「神曲 天国篇」「犯罪」

2016年10月 6日 (木)

Bookcover 神曲 地獄篇 (講談社学術文庫) [a]
ダンテ・アリギエリ / 講談社 / 2014-06-11
なにがきっかけなのか思い出せないんだけど、先日よりダンテ「神曲」をちびちびと読み進めている。これでようやく1/3。解説と照らし合わせないと、とてもじゃないけど理解できない。これは時間がかかりそうだ。

Bookcover コンビニ人間 [a]
村田 沙耶香 / 文藝春秋 / 2016-07-27
芥川賞&ベストセラーということで、ちょっと二の足を踏んだのだけど、面白い小説であった。

Bookcover 怪盗ニック全仕事(3) (創元推理文庫) [a]
エドワード・D・ホック / 東京創元社 / 2016-06-22
60年代から著者の死まで書き続けられた、ちょっとコミカルな味わいの短編ミステリ「怪盗ニック」シリーズ、従来ハヤカワから出ていたが、このたび新たに創元推理文庫で作品集が出る模様。初訳の作品も入っていた。正直、傑作ぞろいとはいいがたいんだけど、なんだか心和むんですよね、のんびりしていて。

Bookcover カンディード (光文社古典新訳文庫) [a]
ヴォルテール / 光文社 / 2015-10-08
ユーモアとアイロニーに満ちた哲学小説。面白かった。北杜夫の童話を思い出したんだけど、ひょっとしてなにか関係があるのかしらん。

Bookcover 夏に凍える舟 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
ヨハン テオリン,Johan Theorin / 早川書房 / 2016-03-09
夏ごろに読んで、記録するのを忘れていた。暗くて重ーい北欧ミステリ四部作、その最終作。

Bookcover シェイクスピア全集 (5) リア王 (ちくま文庫) [a]
W. シェイクスピア / 筑摩書房 / 1997-12
前に小田島訳で読んでいたが、このたび松岡訳で再読。いやー、面白い。いろいろ思うところあるのだが、ひとつだけメモしておくと、コーディリアって、この人、仕事ができるタイプの人だよね...

読了:「神曲 地獄篇」 「コンビニ人間」「リア王」「カンディード」「怪盗ニック全仕事3」「夏に凍える舟」

2016年8月 4日 (木)

Bookcover 地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
ベン H ウィンタース,Ben H. Winters / 早川書房 / 2013-12-06
Bookcover カウントダウン・シティ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
ベン・H. ウィンタース / 早川書房 / 2014-11-07
Bookcover 世界の終わりの七日間 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
ベン H ウィンタース,Ben H. Winters / 早川書房 / 2015-12-08
近々地球は小惑星と衝突し人類は壊滅するであろうと予測されているなか、あまりに愚直な(元)刑事の主人公が徐々に崩壊していく社会を彷徨うディテクティブ・ストーリー三部作。とても面白かったが、読みかけの数週間の間、ちょっとどんより暗い気分になってしまった...

Bookcover 戦艦武蔵 (新潮文庫) [a]
吉村 昭 / 新潮社 / 2009-11

Bookcover 紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) [a]
ケン・リュウ / 早川書房 / 2015-04-22
中国系アメリカ人作家の短編集。SF好きな人にはケッと思われるかもしれないけど、表題作「紙の動物園」が断然良いと思った。涙絞られる。

Bookcover これでよろしくて? [a]
川上 弘美 / 中央公論新社 / 2009-09
著者にしては軽い読み物。女の人って大変だなあ。

Bookcover シェイクスピア全集 (1) ハムレット (ちくま文庫) [a]
W. シェイクスピア / 筑摩書房 / 1996-01
数年前に小田島訳で読んだんだけど、不意に読みなおしたくなって、松岡訳で読んでみた。
 今回気が付いたのは、脇役中の脇役であるローゼンクランツとギルデンスターンが、あまりに脇役過ぎて可哀想、という点。なんでも、逆にこの二人を主役に据えた「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」という20世紀の有名な戯曲があるのだそうだ。図書館で探してみよう。
 それにしても、これは持論なんですけど、「ハムレット」から我々が得られる教訓はですね、ポローニアスのような人は大事にしなきゃいけないということだと思う。人間としてはかなり浅い人だけど、こういう表層的な世知の持ち主たちが、世の中の安定には必要だと思うんですよね。こういうどうでもよい人たちが、様々な危機を解決するでなくうやむやにし、そのようにして世界は散文的に続いていくのである。

読了:「地上最後の刑事」「カウント・ダウン・シティ」「世界の終わりの七日間」「神の動物園」「ハムレット」「戦艦武蔵」「これでよろしくて?」

2016年5月23日 (月)

ちょっとスマホを眺めすぎだと反省し、移動中はせいぜい本を、それもできればフィクションを、読むように心がけているのだけれど、なかなか読めないものだ。

Bookcover 赤く微笑む春 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
ヨハン・テオリン,Johan Theorin / 早川書房 / 2013-04-10
スウェーデンの島を舞台にした四部作の三冊目。暗くて重たい小説なのだが、あと一冊でお別れかと思うと、ちょっと寂しい。なんというか、日本人好みなところがあるような気がするなあ。訳者の方は「無常の感覚」と表現していたが、当たっているかも。

Bookcover 靴の話/眼 小島信夫家族小説集 (講談社文芸文庫) [a]
小島 信夫 / 講談社 / 2015-01-10

Bookcover ピランデッロ短編集 カオス・シチリア物語 (エクス・リブリス・クラシックス) [a]
ルイジ ピランデッロ / 白水社 / 2012-07-21

Bookcover 図書準備室 (新潮文庫) [a]
田中 慎弥 / 新潮社 / 2012-04-27

読了:「カオス・シチリア物語」「靴の話・眼」「赤く微笑む春」「図書準備室」

2016年2月29日 (月)

Bookcover 百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez) [a]
ガブリエル ガルシア=マルケス / 新潮社 / 2006-12
再読だが、20歳前後で読んだきりだから、初めて読んだようなものだ。年始からかなり長いこと読み続けていて、結末に到着したときは、ほっとするような、寂しいような気分であった。

Bookcover 緑衣の女 [a]
アーナルデュル・インドリダソン / 東京創元社 / 2013-07-11
Bookcover [a]
アーナルデュル・インドリダソン / 東京創元社 / 2015-07-29
これもしばらく前の休日に読んだもの。いま流行りの北欧ミステリである。著者はアイスランドの人気作家である由。なかなか面白い。あまり殺人など起こらなさそうなお国柄のせいか、捜査がかなりのんびりしているところが良い。

読了:「百年の孤独」「緑衣の女」「声」

2016年2月15日 (月)

Bookcover トロイラスとクレシダ―シェイクスピア全集〈23〉 (ちくま文庫) [a]
W. シェイクスピア / 筑摩書房 / 2012-08
小田島訳で読んでいたのだけど、出来心で松岡訳も買っちゃったので、読み直した。
 これ、やはり難解な戯曲だと思う。クレシダが何を考えているのかがわからない。たまたま昨年舞台で観る機会があって(鵜山仁演出)、その際は苦境のなかで悪女に変貌せざるを得ないクレシダの悲劇がとてもよくわかる演出だったのだが、こうして読みなおしてみると、最初からちょっとよくわからないところがある人だよな、という気もする。

読了:「トロイラスとクレシダ」

2016年1月17日 (日)

年始に集計してみたところ、2015年中に読んだ本のうち、小説などフィクションはたったの18冊。記録が残っている2005年以来最低の冊数である。いくつか要因はあるけれど、第一に忙しさ、第二にスマホの影響だ。
 たくさん読めばいいってもんでもないけれど、これはあまりに寂しすぎる。死ぬ前に「あの小説読みたかったな」と思うことはあっても、「もうちょっとスマホいじりたかったな」と思うことはたぶんない。今年はもうちょっと小説を読もう...

Bookcover 月と篝火 (岩波文庫) [a]
パヴェーゼ / 岩波書店 / 2014-06-18
というわけで、何か月も読みかけであった小説を年始に頑張って読み終えた。パヴェーゼの小説はいつもそうなんだけど、あまりに切々と哀しくて、途中で辛くなってしまうのである。
 イタリア現代史の知識がないせいで、よく理解できないところがあるのが残念だ。

Bookcover 氷 (ちくま文庫) [a]
アンナ カヴァン / 筑摩書房 / 2015-03-10
暗ーい暗ーい幻想小説であった。

読了:「月と篝火」「氷」

2015年12月14日 (月)

Bookcover 湿地 (創元推理文庫) [a]
アーナルデュル・インドリダソン / 東京創元社 / 2015-05-29
久々に解禁した海外ミステリ。アイスランドを舞台にした、暗くて重い小説であった。

Bookcover シェイクスピア全集27 ヴェローナの二紳士 (ちくま文庫) [a]
W. シェイクスピア / 筑摩書房 / 2015-08-06
これ、シェイクスピアの初期作品じゃなかったら、とっくに忘れ去られていただろう。なんというか、ひどしもひどし、ええかげんにしなさい、という感じ。
 それでも、終盤のジュリアの嘆きの台詞、「さあ、影にすぎない私が、絵姿という影を運ぶのよ」...というくだりは、ちょっと良いなあ。

読了:「ヴェローナの二紳士」「湿地」

2015年11月 1日 (日)

Bookcover とにかくうちに帰ります (新潮文庫) [a]
津村 記久子 / 新潮社 / 2015-09-27
忙しさもピーク、しばらく布団で寝ていないという日に、客先への移動中にふらっと入った本屋で、書名に惹かれて買った本。ははは。面白い小説であった。

Bookcover 杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫) [a]
古井 由吉 / 新潮社 / 1979-12

読了:「とにかくうちに帰ります」「杳子・妻隠」

2015年8月16日 (日)

Bookcover SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) [a]
チャールズ・ユウ / 早川書房 / 2014-06-06
小説はふだん自粛しているんだけど、つい出来心で読んじゃった奴。タイムマシンを題材にしたSF家族小説でありました。

読了:「SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと」

2015年7月 6日 (月)

Bookcover NOVEL 11, BOOK 18 - ノヴェル・イレブン、ブック・エイティーン [a]
ダーグ・ソールスター / 中央公論新社 / 2015-04-09
忙しくて小説どころではない、はずなのに、いつぞやの夜更け時につい読んじゃった本。なんというか、人を食った話であった。。。

読了:「ノヴェル・イレブン、ブック・エイティーン」

2015年5月13日 (水)

Bookcover 悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫) [a]
コルタサル / 岩波書店 / 1992-07-16
著者は1984年没、表紙によれば「ラテンアメリカ文学界に独自の地位を占める」作家、だそうだ。予備知識どころか名前さえ知らなかったのだが、ふと手に取ったら、これが実に面白い。不覚であった。この人の小説は読まなきゃ...
 収録作品はどれも一級の短編小説だが、「南部高速道路」が抜群に面白かった。超現実的なまでにひどい交通渋滞のせいで、路上に幻の共同体が形成されるという話。

Bookcover 舟を編む [a]
三浦 しをん / 光文社 / 2011-09-17
数年前のベストセラー。読むつもりはなかったんだけど、パラパラ捲ってたら面白くなっちゃってつい読み終えてしまった。上手いなあ。

Bookcover 無意味の祝祭 [a]
ミラン クンデラ / 河出書房新社 / 2015-04-20
ええトシのおっさんたちが、いったい何をしているんだ...

読了:「悪魔の涎・追い求める男」「舟を編む」「無意味の祝祭」

2015年5月10日 (日)

Bookcover 坂手洋二 (1) 屋根裏/みみず (ハヤカワ演劇文庫 7) [a]
坂手 洋二 / 早川書房 / 2007-03-23

Bookcover 世界はゴ冗談 [a]
筒井 康隆 / 新潮社 / 2015-04-28

Bookcover 日本の古典―完訳〈50〉好色一代男 [a]
暉峻 康隆 / 小学館 / 1986-04
なんどか岩波文庫の原文に挑戦しては挫折していた本。諦めて古本屋で現代語訳を探して読んだんだけど、これはしかたがないわ、現代語でさえわかりにくい。とてもハイコンテクストというか、時代風俗の十分な知識がないと理解できない文章なのであった。
 増村保造の映画の印象が強いので、ひたすら蕩尽を続ける世之介に、閉塞した社会への孤独な抵抗者の姿を重ねていたのだけれど、西鶴からそれを読み取るのは、よほど深読みしないと難しいみたいだ...

Bookcover 心で犯す罪 [a]
ベス ヘンリー / 本の友社 / 2000-06
図書館で借りて読んだ。81年にピュリッツァー賞を受けた戯曲。映画にもなっているし、検索してみると日本でも頻繁に舞台で上演されているようだ。

読了:「好色一代男」「世界はゴ冗談」「屋根裏/みすず」「心で犯す罪」

2015年2月23日 (月)

Bookcover しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん (幼児絵本シリーズ) [a]
高野 文子 / 福音館書店 / 2014-02-05
高野文子さんの絵本。すばらしい。

Bookcover パートナー〈上〉 (新潮文庫) [a]
ジョン グリシャム / 新潮社 / 2000-10
Bookcover パートナー〈下〉 (新潮文庫) [a]
ジョン グリシャム / 新潮社 / 2000-10
なにが悲しくてこの忙しいときにグリシャムなどを読まねばならんのかと思うけど、ついうっかり読んでしまった。

読了:「しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん」「パートナー」

2015年1月19日 (月)

Bookcover 近代秀歌 (岩波新書) [a]
永田 和宏 / 岩波書店 / 2013-01-23
先日たまたま読んだ「現代秀歌」が意外に面白かったので、遡って読んでみた。明治・大正期の百首を解説つきで紹介。
 読んでいてびっくりしたのは... 短歌なんてからきし疎いので、ほとんどの歌を知らないんだけど(斎藤茂吉と与謝野晶子くらいかなあ)、石川啄木だけはなぜかほとんど全部知っていた、という点。いったいどこで覚えたんだ。
 さらに、啄木の歌が非常にベタだという点。なんというか、ことわざか慣用句のようにして覚えていたので、全く気がつかなかったけど、ものすごく俗っぽい。「軽きに泣きて三歩あゆまず」ですよ。
 さらにさらに、目からウロコという気分だったのは、実は石川啄木さんという人は技術的に上手い、という点。「東海の小島の磯の」の解説は、その「カメラのズームインの仕方」が「端倪すべからざる技巧」であると評している。東海→小島→磯→白砂→我→蟹、である。なるほどねえー。
 そのほかに心に残った歌をメモしておくと... 同じ人のが重なっているなあ。やはり好みというのがあるようだ。

 かたわらに秋ぐさの花かたるらくほろびしものはなつかしきかな (若山牧水)
 白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり (若山牧水)
 白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ (若山牧水)
 めん鶏ら砂あび居たれひつそりと剃刀研人は過ぎ行きにけり (斎藤茂吉)
 大きなる手があらはれて昼深し上から卵をつかみけるかも (北原白秋)
 街をゆき子供の傍を通るとき蜜柑の香せり冬がまた来る (木下利玄)
 牡丹花は咲き定まりて静かなり花の占めたる位置のたしかさ (木下利玄) ←これ、面白いなあ...
 葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり (釈迢空)
 白埴の瓶こそよけれ霧ながら朝はつめたき水くみにけり (長塚節)
 おりたちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落葉深く (伊藤左千夫)
 鴨の脚蹴るかとみれば蹴りもせで蹴らじと思えば蹴りに蹴る鴨 (辰野隆) ←ははは

読了:「近代秀歌」

2015年1月 4日 (日)

Bookcover 現代秀歌 (岩波新書) [a]
永田 和宏 / 岩波書店 / 2014-10-22
「1970年までの生まれで、主に昭和の時代に本格的な活動をはじめた歌人たち」の歌の、百人一首形式のアンソロジー。
 短歌とか俳句とか、どうにも読み方がわからなくて、普段は散文のなかに埋め込まれていてもそこだけ読み飛ばしてしまうくらいなのだが、この本は面白かった。はじめての経験である。著者はかの世界の超偉い人だと思うが、解説が控えめで理知的なので、読みやすいのだと思う。

 これはいいなあ、と思った歌をメモしておく。予備知識ゼロのど素人の感想なので、もしかすると一定の傾向が現れているかもしれない(わかりやすい歌とか、共感しやすい歌とか)。
 ほんとは「いいなあ」と思う確率と発表年度や作者生年との関係を調べてチャートにしてみようかと思ったのだが、さすがに現実逃避も度が過ぎるので、いずれまた暇なときに...

曼珠沙華のするどき象(かたち)夢にみしうちくだかれて秋ゆきぬべき (坪野哲久, 昭15)
秋分の日の電車にて床にさす光もともに運ばれていく (佐藤佐太郎, 昭27)
水中より一尾の魚跳ねいでてたちまち水のおもて合はさりき (葛原妙子, 昭38)
先に死ぬしあはせなどを語りあひ遊びに似つる去年までの日よ (清水房雄, 昭38)
すさまじくひと木の桜ふぶくゆゑ身はひえびえとなりて立ちをり (岡野弘彦, 昭47)
さくら花幾春かけて老いゆかん身に水流の音ひびくなり (馬場あき子, 昭52)
次々に走り過ぎ行く自動車の運転する人みな前を向く (奥村晃作, 昭54)
なべてものの生まるるときのなまぐささに月はのぼりくる麦畑のうへ (真鍋美恵子, 昭56)
この世より滅びてゆかむ蜩(かなかな)が最後の<かな>を鳴くときあらむ (柏崎驍二, 平6)
そこに出てゐるごはんをたべよというこゑすゆふべの闇のふかき奥より (小池光, 平7)
彼の日彼が指しし黄河を訪ひ得たり戦なき世のエアコンバスにて (宮英子, 平7)
洪水はある日海より至るべし断崖(きりぎし)に立つ電話ボックス (内藤明, 平成8)
大根を探しにゆけば大根は夜の電柱に立てかけてあり (花山多佳子, 平18)

読了:「現代秀歌」

2014年12月31日 (水)

Bookcover その女アレックス (文春文庫) [a]
ピエール ルメートル / 文藝春秋 / 2014-09-02
久々の海外ミステリ。2014年ミステリーベストテンで軒並み一位!と平積みされているので、つい手に取ってしまった...

読了:「その女アレックス」

2014年12月 6日 (土)

Bookcover 野田秀樹 赤鬼の挑戦 [a]
野田 秀樹,鴻 英良 / 青土社 / 2006-08
劇作家・演出家・俳優の野田秀樹さんが、自作を海外で上演するのにどれだけ苦労したか... というインタビューを中心にした内容。私はその作品について全然知らなかったので、へぇ大変ですね... はぁすごいですね... なんで俺こんな本読んでんだろう... という気分であった。で、巻末に添えられている戯曲「赤鬼」を読んで、はじめて納得。確かに、これは大変なものだ、海外で上演しようというのもわかる、評判になるのもわかる。戯曲を本の最初に載せてくれればよかったのに。

読了:「野田秀樹 赤鬼の挑戦」

2014年12月 5日 (金)

Bookcover 白い城 [a]
オルハン パムク / 藤原書店 / 2009-12-17
小難しいかと覚悟したのだが、読みやすく面白い小説であった。

読了:「白い城」

2014年10月27日 (月)

Bookcover シェイクスピア全集25 ジュリアス・シーザー (ちくま文庫) [a]
W. シェイクスピア / 筑摩書房 / 2014-07-09
小田島訳で読んでいたのだが、このたび松岡訳で再読。
 「ジュリアス・シーザー」の名場面といえばマーク・アントニーの扇動演説だが、つくづく思うに、これが彼の人生でもっとも光り輝いた場面なのではないか。大衆は雪崩を打つようにアントニーに踊らされるわけだが、それはやはり時代がそうさせたのであって、アントニーの舌先三寸の力だけではないのではないかと思う。でもアントニーはそのことに気がつかない。
 というわけで、その後「アントニーとクレオパトラ」でゆっくりと転落していくアントニーの姿が、かつてメディアを操る悪魔的天才と言われた現大阪市長の姿と、なんだか重なって見えてしまうのであった。

Bookcover 苦い娘 (中公文庫) [a]
打海 文三 / 中央公論新社 / 2005-04-25

Bookcover 繁栄の昭和 [a]
筒井 康隆 / 文藝春秋 / 2014-09-29

読了:「苦い娘」「ジュリアス・シーザー」「繁栄の昭和」

2014年9月 1日 (月)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔21〕) (白水Uブックス (21)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
えーっと... 人名が入り乱れてわかりにくかったんだけど、舞台で観たらさぞや楽しいだろう。

Bookcover 不忠臣蔵 (集英社文庫) [a]
井上 ひさし / 集英社 / 2012-12-14

Bookcover 夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫) [a]
カズオ イシグロ / 早川書房 / 2011-02-04
これは実に面白かった。どんなドタバタ・コメディを書いても、やっぱりカズオ・イシグロだ、というところがまた面白い。

永井愛「カズオ」. 現代を代表する劇作家の、1984年の出世作。日本劇作家協会の電子本で読んだ。さすがに後年の作品の深みはないんだけど、いやー、面白い。

読了:「お気に召すまま」「カズオ」「夜想曲集」「不忠臣蔵」

2014年8月17日 (日)

知らず知らず、世間の夏休みムードに感染しているようで、ここんところフィクションが多めである。

Bookcover 黒い裾 (講談社文芸文庫) [a]
幸田 文 / 講談社 / 2007-12-10
幸田文は父・幸田露伴を巡るエッセイの書き手として出発し、51歳にして小説「流れる」を発表するんだけど、これはその前に出していた短篇集。エッセイから小説へと徐々に移行している段階だったのだろう。
 表題作の短編「黒い裾」が抜群に面白いと思った。喪服小説というか、葬式小説というか... ある女の一生を、葬式の経験だけをつなぎ合わせるようにして描いた作品である。

Bookcover シェイクスピア全集 (2) ロミオとジュリエット (ちくま文庫) [a]
W. シェイクスピア / 筑摩書房 / 1996-04
数年前に小田島訳で読んでいたのを、このたび松岡訳で再読。
 不思議なもので、読み直すと印象が変わってくるものだ。この先生の訳の特徴のせいか(いったん下品になるととことん下品になる)、小田島訳に比べて猥雑さが増し、マキューシオがより粗雑で頭の悪い青年になった、ような気がする。
 この芝居で特に面白いなあと思うのは、ジュリエットが生涯最期の数日間で急速に成長していくところなのだけれど、でもつくづく思うに、ひたむきさと分別とは別の問題なのである。
 そんなこんなで、やっぱりこの作品は非常に面白い。あれこれ考え始めると興趣が尽きない。よい本の徳である。

Bookcover スミヤキストQの冒険 (講談社文芸文庫) [a]
倉橋 由美子 / 講談社 / 1988-01-27

Bookcover 二十一の短編 ハヤカワepi文庫 [a]
グレアム・グリーン / 早川書房 / 2005-06-09
再読。

Bookcover ぼくを忘れたスパイ〈上〉 (新潮文庫) [a]
キース トムスン / 新潮社 / 2010-09-29
Bookcover ぼくを忘れたスパイ〈下〉 (新潮文庫) [a]
キース トムスン / 新潮社 / 2010-09-29
最近ボケはじめた父親が、実は往年のスパイにして国家機密の持ち主。漏洩を心配した邪悪な政府機関に親子共々命を狙われるが、たまに正気を取り戻すと父は「ボーン・アイデンティティ」なみのアクションヒーローと化し、敵をばったばったとなぎ倒す...というお気楽極楽なB級アクション・スリラー。ついつい読んじゃいました。

読了:「ロミオとジュリエット」「黒い裾」「ぼくを忘れたスパイ」「二十一の短編」「スミヤキストQの冒険」

2014年8月 5日 (火)

Bookcover 見えない日本の紳士たち (ハヤカワepi文庫) [a]
グレアム グリーン / 早川書房 / 2013-04-30
ハヤカワ文庫のG.グリーンの新訳シリーズのうち、短篇集はこれと「二十一の短編」「国境の向こう側」の三冊だと思う。どういう基準で分けているのかしらん。
 長いこと時間を掛けて読んでいたのだけれど、えーっと、この短篇集では表題作「見えない日本の紳士たち」が印象に残った。あとは、ドタバタ喜劇「諸悪の根源」、幻想譚「庭の下」かなあ。全体に、グリーンらしくないというか、この作家の幅の広さを思い知らされるセレクションであった。

読了:「見えない日本の紳士たち」

2014年7月28日 (月)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔18〕) (白水Uブックス (18)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
シェイクスピア先生の爆笑喜劇、だと思うんだけど、正直なところ、これは活字ではよくわからない... 動いているのを観ないと面白くないんだろうなあ、きっと。フォルスタフが洗濯かごで逃げる場面とか。

Bookcover 女のいない男たち [a]
村上 春樹 / 文藝春秋 / 2014-04-18
今年春刊行の短編集。「ドライブ・マイ・カー」が一番良いと思った。

こうしてみると、最近小説を読んでいないなあ。残念なことだ。

読了:「ウィンザーの陽気な女房たち」「女のいない男たち」

2014年7月 2日 (水)

Bookcover 女殺油地獄/出世景清 (岩波文庫 黄 211-3) [a]
近松 門左衛門,藤村 作 / 岩波書店 / 1938-07-01
6月の一時期は、頭の中はもう女殺油地獄で一杯だったのである。この近松という人、絶対にトシを偽っている。どう考えても現代劇作家だ。それもジェームズ・ケインかパヴェーゼの影響を受けている作家に違いない。
 で、ずっと考えていたのですが(ヒマなのか俺は)、お吉という女は、与兵衛との間には本当になんにもなかったのだけれど、でもそのなにもないということを心密かに楽しんでいるというか、与兵衛と接しているときはほんの少しだけ気持ちが浮き立つというか、そういうところがあったんじゃないか、と思うのである。そこに彼女の悲劇の種があった、とまではいえないかもしれないけれど、とにかくそこんところが胸を抉る次第である。誰に説明しているのかわかんないけど。

Bookcover シェイクスピア全集 (〔11〕) (白水Uブックス (11)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
シェイクスピアのなかでは非常にマイナーな演目だと思うが、意外に面白かった。優柔不断な権力者って面白いですよね。

読了:「女殺油地獄・出世景清」「リチャード二世」

2014年5月11日 (日)

Bookcover 逆さまゲーム (白水Uブックス―海外小説の誘惑) [a]
アントニオ タブッキ / 白水社 / 1998-08
これも数年間書棚にあった本。収録短編を一編読んでは、頁を閉じて考え込み... というのを繰り返していた。変な話だけど、読み終えてほっとしている。
 プチブル西洋人の虚飾を描いた「空色の楽園」、それからなんといっても、表題作が素晴らしいと思った。そうだ、冒頭の表題作にショックを受けたせいで、なかなか続きを読む気になれなかったのだ。

Bookcover 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 [a]
村上 春樹 / 文藝春秋 / 2013-04-12
昨年の大ベストセラー。4/15が一刷発行日、手元の本は4/26の六刷。狂ってますね。
 買ったきりなんとなく放置していたんだけど、連休を機に読了。懐かしく思い出すのだけれど、「ダンス・ダンス・ダンス」発売の日は(今調べたら1988年)、開店直後の書店で上下巻を買い込み、アルバイト先の大学の空き教室だったか、どこかのビルの非常階段だったか、とにかくそんなところで、夕方まで飯も食わずにひたすら読みふけったのであった。時間が経つといろんなことが変わる。

読了:「逆さまゲーム」「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

2014年4月 9日 (水)

Bookcover わらの女 【新版】 (創元推理文庫) [a]
カトリーヌ・アルレー / 東京創元社 / 2006-06-27
久々の海外ミステリだが、これは1956年発表の犯罪小説の古典。テレビの二時間ドラマの悪女もののご先祖様のような話であった。
 ヒロインが億万長者の心を奪うに至る駆け引きのくだりが面白かった。

Bookcover 国境の向こう側 (ハヤカワepi文庫) [a]
グレアム グリーン / 早川書房 / 2013-11-22
マイナーな短編から未完の作品まで、グリーンの断簡零墨を集めました、という感じの短編集。孤独なウェイターを描いた「真実の瞬間」、南米の将軍にインタビューする女性を描いた「将軍との会見」の二作が抜きんでて良いと思った。

読了:「わらの女」「国境の向こう側」

2014年1月 5日 (日)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔26〕) (白水Uブックス (26)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
こ・れ・は・ひ・ど・い。これまでに読んだシェイクスピア大先生の戯曲のなかで、「終わりよければすべてよし」に並んで、圧倒的なまでに出来が悪い。よくもこんな作品が残ったものだ。シェイクスピアさんもきっと雲の上で、「うわぁごめん!アレはなかったことにして!」と顔を覆って笑っておられるに違いない。

読了:「尺には尺を」

2013年11月11日 (月)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔14〕) (白水Uブックス (14)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
松岡訳で読んで、あまりに不愉快な作品であったため、念のために小田島訳でも読んで、やはり大変に不愉快な作品であることを確認した。奴らに法の精神というものはないのかね(そりゃ、まあ、近代的な意味での法の精神はないんだろうけど)。ポーシャはもちろんのこと、シャイロック以外の全員に天誅を下すべきだと思う。

Bookcover ミッドナイト・ブルー―ロス・マクドナルド傑作集 (創元推理文庫) [a]
ロス マクドナルド / 東京創元社 / 1977-05
ハードボイルドの巨匠ロス・マクドナルドの初期短編集。うーん。100年後にも小説が読まれていたとして、そのとききっとチャンドラーは読ま継がれていると思うんだけど、ロス・マク先生はどうでしょうか。

Bookcover 刑事マルティン・ベック 笑う警官 (角川文庫) [a]
マイ・シューヴァル,ペール・ヴァールー / 角川書店 / 2013-09-25
70年代北欧ミステリの代表作。この「刑事マルティン・ベック」シリーズ、10巻も続いた人気の群像劇シリーズだっただそうで、これから新訳を出していく予定なのだそうだ。へー。

読了: 「ヴェニスの商人」「ミッドナイト・ブルー」「笑う警官」

2013年9月24日 (火)

こうしてみると、ここんところ妙に戯曲ばかり読んでいる。なぜだろう。

Bookcover こんにちは、母さん [a]
永井 愛 / 白水社 / 2001-03
古本屋で購入し、帰宅して本棚を見たらすでに購入済みであった。道理で、親しみが持てる表紙だと思った。
 2001年初演の作品。老いらくの恋を軸にした家庭劇。一読して感嘆... これまでに読んだ永井愛作品のなかでも、「歌わせたい男たち」「兄帰る」「かたりの椅子」に並ぶ傑作だと思う。なんでこんなに秀作を量産できるのかしらん。

Bookcover ジャン・アヌイ (1) ひばり (ハヤカワ演劇文庫 (11)) [a]
ジャン・アヌイ / 早川書房 / 2007-09-21
ジャンヌ・ダルクの物語。時間と空間が奔放に入れ替わる現代的な戯曲であった。巧い巧い。巧すぎて嫌味なくらい。
 結末、ルーアンでジャンヌが火刑にかけられる寸前に舞台の上の全員が思い直し、ランスでのシャルル7世の戴冠式の場面に戻ってしまう。

シャルル「この男のいうことは正しい。ジャンヌの物語の、ほんとうの結末は、終わりのない結末。ぼくらの名前こそ忘れられ、混同されようとも、人々が繰り返し語り継ぐ結末、それは、ルーアンで追い詰められた、みじめな獣の境遇のなかにはない。それは、大空にあがるひばり、栄光に包まれた、ランスのジャンヌ...。ジャンヌの物語のほんとうの結末は、喜びにあふれている。ジャンヌ・ダルク、それはハッピー・エンドの物語だ!」

 なるほどなあ... 歴史に向き合うというのはとても難しいことなのだ。

Bookcover シェイクスピア全集 (10) ヴェニスの商人 (ちくま文庫) [a]
W. シェイクスピア / 筑摩書房 / 2002-04
つい松岡訳の文庫を買って読んでしまった(小田島訳が本棚にあるのに...)。ものすごーく不愉快な話。シェイクスピアをちびちび読んでいると、こういうことが時々ある(「十二夜」とか、「終わりよければすべてよし」とか)。おそらく、時代のちがいから生じるギャップが、運よく面白く感じられることもあれば、運悪く自分の深いところにあるコードに抵触して耐えがたく感じることもあるのだろう。

 この戯曲のどこが不愉快といって、登場人物がみな人を誑かす性根卑しき奴らばかりであり、しかし自分ではそうは思っていないというところだ。だいたいバサーニオってただの口先だけの遊び人ではありませんか。ポーシャは眉根ひとつ動かさず人を騙す嘘つき女だし、シャイロックの娘は軽薄で、その恋人はせっかくの財産を食い潰すに決まっている。唯一共感できるのは、あまりに正直すぎあまりに法を信じすぎたシャイロックだけだが、彼は腐敗したキリスト教徒どもの癒着と差別によって虫けらのように踏みつぶされるのである。まっことに許し難い。破産しろアントーニオ。地獄に落ちろ貴族ども。立てよ飢えたるヴェネチア人民よ! いまぞ日は近くないけどな、まだ中世だから!

Bookcover 井上ひさし全芝居〈その6〉 [a]
井上 ひさし / 新潮社 / 2010-06
傑作「父と暮らせば」「紙屋町さくらホテル」、評伝劇「太鼓たたいて笛吹いて」「兄おとうと」「貧乏物語」、それから「黙阿弥オペラ」「連鎖街のひとびと」「化粧二題」を収録。
 渡辺美佐子のロングランで有名になった「化粧」は、もともと一幕だったものを単独上演用に二幕に書き直したものであった。たまたま高校生の頃に一幕のほうを読んでいたので、あとで二幕劇のほうを読んで、これはこれで素晴らしいけど、原型のほうがもっと鋭くて衝撃的だったのに、と思ったのを覚えている。
 この全集ではじめて知ったのだが、井上さんにも反省があって、2000年に当初の一幕劇に戻し、さらに別の物語を付け加えた改作を発表していたのだそうだ。この全集に収録されているのはそのバージョン。

 酒やお茶をはさんで誰かとゆっくり話していて、その人の過去に話題が及んだ際に、話がある深さに触れた瞬間、その人の口調がどこかしら説話的なニュアンス、唄いあげるようなニュアンスを帯びることがあるように思う。これはその人の性格を問わないし、面白いことに、話し手の年齢とも関係がない。誰であれ、なにかしら自分の人生についての物語のようなものを持っている、ということではないかと思う。もちろん、こちらが勝手にそのような幻影をあてはめているだけかもしれないけれど。
 というわけで、他人と話していて不意にその人の昔話になったときは、ほんの少し身構える、というか、息を詰めるような気分になる。そんなときに思い出すのが、「化粧」一幕のラストで、女座長が不意に口調を変えるくだりだ。全集ではこうなっている。

(ハッとなり、辛うじて持ちこたえ) 敏ちゃん、塩まいとくれ。みんな、お客様がお帰りだよ。表までお送りしてちょうだい。(視線の移動でテレビ局員の去るのを示しつつ) ... 物を捨てるのならともかく、自分のお腹を痛めた可愛い子どもを捨てるんだ。その母親にもそれなりの覚悟があってそうしたんでしょうよ。覚悟の上で捨てた子どもが出世したからってノコノコ御対面とやらに出かけてゆく母親なんているものか。どのつらさげておめおめと... (突然、作り話) あたしの息子はね。北海道の岩見沢に預けてあったんです。高校を出て、岩見沢駅につとめ... 事故で死にました。駆けつけたあたしを見て、「人生ってこうしたものなんだね、かあさん」と淋しく笑って死にました。そのとき病院の窓の外を走って消えた流れ星...

読了:「ひばり」「こんにちは、母さん」「井上ひさし全芝居 6」「ヴェニスの商人」

2013年8月26日 (月)

Bookcover 洗い屋稼業 (カナダ現代戯曲選) [a]
モーリス パニッチ / 彩流社 / 2011-09-06
なんで本棚にあるのか思い出せないけど、ずっと前に衝動買いしたのだろう。著者は52年生まれ、カナダの高名な劇作家・俳優だそうだ。この戯曲は日本でも上演されているらしい。
 高級レストランの地下の食器洗い場を舞台にした会話劇であった。軽妙にして哀しい。

Bookcover 冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
ヨハン テオリン / 早川書房 / 2012-02-09
海外ミステリ自粛により、ずっと前に買ったきり放置してあった本。舞台はスウェーデンのエーランド島という、冬の天候のたいそう厳しいところ。突然に家族を喪った男を描いた佳品であった。

読了:「洗い屋稼業」「冬の灯台が語るとき」

2013年8月12日 (月)

Bookcover 冬のフロスト<上> (創元推理文庫) [a]
R・D・ウィングフィールド / 東京創元社 / 2013-06-28
Bookcover 冬のフロスト<下> (創元推理文庫) [a]
R・D・ウィングフィールド / 東京創元社 / 2013-06-28
久々に海外ミステリに手を出してしまった。フロスト警部シリーズに外れなし。
 未訳の長編があと一作だけ残っている。著者は数年前に亡くなってしまっているから、下品ではた迷惑なヒーロー・フロスト警部に会えるのはあと一回だけだ。寂しいなあ。

読了:「冬のフロスト」

2013年7月24日 (水)

Bookcover 別役実 (1) 壊れた風景/象 (ハヤカワ演劇文庫 10) [a]
別役 実 / 早川書房 / 2007-07-25
62年の作品「象」と、76年「壊れた風景」を収録。
 「象」は意外なほどに写実的な戯曲で、びっくりした。「壊れた風景」のほうは... これ、舞台で観てみないとわからないような気がする...

以下は、前に読んで記録を忘れていた本:

Bookcover 狭小邸宅 [a]
新庄 耕 / 集英社 / 2013-02-05
暗ーい暗ーい現代日本小説であった。

Bookcover なぜ、ぼくのパソコンは壊れたのか? [a]
マイナク・ダル / 日本経済新聞出版社 / 2013-05-23
30分あれば読めるビジネス童話。その30分を費やす必要があるのかどうかわからないけど。

読了:「壊れた風景/象」「狭小住宅」「な、ぼくのパソコンは壊れたのか」

2013年7月 1日 (月)

Bookcover 天使エスメラルダ: 9つの物語 [a]
ドン デリーロ / 新潮社 / 2013-05-31
しばらく前から、小説など文学作品を読むことになにかちょっと抵抗のようなものがあって... 読まなければならないものがいっぱいあるのに、小説なんて読んでていいのか、という負い目のような感覚のせいで、気軽に手に取りにくくなっていたのである。
 でも、先日ふと思ったのだけれど、たとえばなにかの事故でホームから線路に落ちてしまったとして、這いつくばった状態で頭を上げると、目の前に特急列車が迫ってくる、もう逃れようもない、数秒後に確実に死ぬ... という状況で、なにが頭をよぎるか。皆目見当がつかないが、少なくともマーケティングやデータ解析の未読の本について考えることは絶対にない。でも、もしかすると、前から読みたいと思いつつ果たしていないいくつかの小説については、ああ惜しいことをしたな、結局読めずじまいだった、と思いつつ全身を切り刻まれることが、全くないとはいいきれない。

 というわけで、未読の本の山から一冊手に取る際には小説を優先しようと思い、手始めに読み始めた短編集。著者の名前に惹かれて買っちゃったんだけど(一部に熱狂的なファンを抱えるアメリカの大作家として記憶していた)、なんだか面倒くさそうだなあと思っていた本である。
 案の定、現代文学好き向けのいささか読みにくい小説であったが、短編集なのでさほど敷居は高くない。スラム街の修道女を主人公にした表題作と、監視のごく緩い刑務所で暮らす男の内省を描く「槌と鎌」が面白かった。

読了:「天使エスメラルダ」

2013年6月 4日 (火)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔31〕) (白水Uブックス (31)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
読み終えて思うに、この話、おかあさんがコワイと思うんですよね。。。滔々と弁じて息子に訴え、その結果息子を死に追いやるわけじゃないですか。後先考えずに情に訴える哀れな母親というより、なんというかその、宿命の死神とでもいえばいいのでしょうか。。。などと、読後あれこれ考えて過ごした。良い本はいいなあ。

読了:「コリオレーナス」

2013年4月17日 (水)

Bookcover パパのデモクラシー [a]
永井 愛 / 而立書房 / 1997-02
わたくしが敬愛しつつも恐怖してやまない劇作家の、1995年の作品。東宝争議やゼネストを題材に、敗戦後日本の平凡な市民の哀歓を描く。
 完全な悪人も出てこないが、無垢な善人も出てこない。等身大の人々のささやかなやりとりのなかに、不意に暗い裂け目が広がる。この人の作品は、やっぱり、怖い。。。

読了:「パパのデモクラシー」

2013年3月13日 (水)

Bookcover アーサー・ミラー〈1〉セールスマンの死 (ハヤカワ演劇文庫) [a]
アーサー・ミラー / 早川書房 / 2006-09-20
恐るべしアーサー・ミラー。時間がないのでなにも書けないけど、とにかくもうこれは大変な作品で... 読み終えてから数日は、老セールスマン・ウィリーのことばかり考えていた。

読了:「セールスマンの死」

2013年1月 9日 (水)

Bookcover 楡家の人びと 第1部 (新潮文庫 き 4-57) [a]
北 杜夫 / 新潮社 / 2011-07-05
Bookcover 楡家の人びと 第2部 (新潮文庫 き 4-58) [a]
北 杜夫 / 新潮社 / 2011-07-05
Bookcover 楡家の人びと 第3部 (新潮文庫 き 4-59) [a]
北 杜夫 / 新潮社 / 2011-07-05
年末に世田谷文学館の「齋藤茂吉と『楡家の人びと』展」を見に行ったのがきっかけで,急に北杜夫さんの小説を読みたくなって,正月三が日は「楡家」を読んで過ごすことにしたのであった。実際には,あまりに面白くて二日で読み終えてしまったけれど。
 中学生の頃に読んだ際にはよくわからなかったが,北杜夫さんはユーモアとポエジーを武器に,都市生活者からみた日本近代史を描くという壮大な企みを成し遂げていたのであった。
 面白いもので,中学生だった私は,著者自身を反映した周二少年や,捕虜生活でブクブクに太ってしまう青年・峻一に気を取られていたらしく,そのあたりのエピソードばかりを良く覚えていた。でも今回読み終えて強く印象に残るのは,本質的に敗残者である二代目院長・徹吉の彷徨と慨嘆であった。彼が生涯を費やした医学史の労作は,しかし独創性には欠けていた...という説明が入るくだり,ぞっとするような凄みがある。

Bookcover The 500 (ザ・ファイヴ・ハンドレッド) 〔ハヤカワ・ミステリ1861〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
マシュー・クワーク / 早川書房 / 2012-07-06
正月休みだし,たまには海外ミステリも解禁しよう,と思って買い置きの本を手に取ったら... グリシャム風のサスペンスが,身も蓋もない勧善懲悪で終わるという,まあどうでもいいような内容であった。
 世のミステリ・ファンの方々は,異様なまでにプロの書評が大好きであるように思われる。なんでだろうかと思っていたのだが,ひとつには,貴重な読書時間を無駄にしたくないからなんでしょうね。反省。

読了:「楡家の人びと」「The 500」

2012年12月 4日 (火)

Bookcover アーサー・ミラー〈2〉るつぼ (ハヤカワ演劇文庫 15) [a]
アーサー・ミラー / 早川書房 / 2008-05-23
アーサー・ミラーの戯曲。
 先日ひょんなことから,この戯曲の新訳を使った舞台を観たのだけれど,主人公の妻エリザベスの終盤での非常に重要な台詞のなかに,たしか「この世界にこういう生き方があるなんて知らなかったの」というような言い回しがあって,印象に残った。で,この本を買ってきて探したら,この訳では「あなたは本当に優しい,いい人だった」。原文を探してみたら,"I never knew such goodness in the world"であった。
 素直に考えれば,goodnessは夫プロクターの内なる善性を指している。新訳はここの訳語を,作品全体を賭ける勢いで,ものすごく思い切って選んでいるのだと思う(いま探したら,たぶん訳者の先生が,その事情について縷々述べている記事をみつけた。 やっぱりなあ...)。訳の正否は私にはわからないんだけど,いやあ,文学作品の翻訳って大変な仕事だ。ほんの一言で全てが変わってしまう。

読了:「るつぼ」

2012年8月13日 (月)

Bookcover 井上ひさし全芝居 (その3) [a]
井上 ひさし / 新潮社 / 1984-07
しばらく前から,一編づつ読み進めていた本。文庫本10冊にもなろうかという分量で,読み終えていささかほっとしている。
 井上ひさしさんが残した膨大な戯曲作品のうち,79年から84年までの10本を収録。すなわち,著者の最高傑作「イーハトーボの劇列車」(これが最高傑作でないと困る。こんなのを一人の人が何本も書くのは人倫に反する) だけではなく,その前後に相次いで発表されたいずれも傑作の誉れ高い評伝劇「しみじみ日本・乃木大将」「小林一茶」「芭蕉通夜船」「頭痛肩こり樋口一葉」,そしてロングラン作品「化粧」が収録されている。ついでにいえば,この時期に著者はベストセラー小説「吉里吉里人」を発表し,劇団こまつ座を結成している。化け物である。

 「しみじみ日本・乃木大将」は,乃木とその妻の自決の日,乃木の愛馬たちの前足たちと後足たちが演じる劇中劇のかたちをとっているのだが(やっぱり化け物だ。なんでそんなことを思いつくか),乃木に対する明治天皇の台詞に,こんな印象的なくだりがある。

これからも武人の型を演じつづけてほしい。天皇に対して軍人たるものはどのような感情を持つべきであるか,その型を演じつづけてほしい。乃木,われわれの,この明治という時代は,さまざまな場所で,さまざまな人々が,忠臣や,篤農や,節婦や,孝子などの型を演じ,その型を完成させ,周囲の手本たらんとつとめる時代なのだ。国民に型を示し,そのうちのひとつを選ばせる。これが国家というものの仕事なのだ

というわけで,乃木とその妻は,自らが演じはじめた型を演じ続けるために命を絶つ。
 明治大帝のこの台詞は,明治日本に対する井上ひさしさんのひとつの洞察を示していると思うのだけれど,それは日本の近代に固有の現象なのかしらん,それとも,さまざまな社会が普遍的に通過する経験なのかしらん。

 いやいや,私たちは決して通過などしていないのかもしれない。先日も誰かがどこかで,自己決定権を持つ知的労働者ならば24時間働いて当然である,やれブラック企業だなんだと労働環境にケチをつける奴は所詮は定型的労働者だ。。。というようなことを誇り高く宣言していて,興味深かった。なるほど。この平成という時代だって,さまざまな場所でさまざまな人々が,誰かが用意した型のひとつを選び,それを演じ,その型を磨き上げている。

読了:「井上ひさし全芝居 その三」

2012年8月 6日 (月)

Bookcover 駿河城御前試合 (徳間文庫) [a]
南條 範夫 / 徳間書店 / 2005-10
戦後の剣豪小説ブームを担った作家・南條範夫の,64年の連作小説の復刊。何度も映画化・マンガ化された有名な作品だと思うけど,そもそも南條範夫の小説をいま読む人はどのくらいいるんだろうか? この本も,所収の短編「無明逆流れ」を元にしたマンガ「シグルイ」の大ヒットにあやかって復刊されたものだと思う。
 「がま剣法」という短編が群を抜いて面白いと思った。平田弘史さんによるマンガ化が印象に残っているんだけど,いかにも平田弘史ごのみの,劣れる者のルサンチマンあふれるストーリーである。

読了:「駿河城御前試合」

2012年8月 2日 (木)

Bookcover 兄帰る [a]
永井 愛 / 而立書房 / 2000-04
永井愛さんの作品は頑張って読むように心がけているんだけど,読むたびに背筋が凍るような気がする。この作品も,子どもの野球チームの合宿に手伝いにいくかどうかとか,面倒な叔母さんとどう接するかとか,そういうごく平凡なエピソードを通じて,私たちの生活のなかの偽りや空虚を容赦なく暴き出す。怖い。。。

読了:「兄帰る」

2012年6月12日 (火)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔5〕) (白水Uブックス (5)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
シェイクスピア先生,必殺の爆笑ドタバタ喜劇。双子の取り違えコメディなら誰でも思いつくが,それが二組同時に進むんだから,もう,大変な騒ぎである。。。 時間ができたら,もう一度読み直したいものだ。

読了:「間違いの喜劇」

2012年5月21日 (月)

Bookcover シェイクスピア全集 (11) ペリクリーズ (ちくま文庫) [a]
ウィリアム シェイクスピア / 筑摩書房 / 2003-02
善は栄え悪は滅びる,胸暖まるお伽話。素敵だなあ。
 あとがきで翻訳の松岡和子さんいわく,「私たちの最も強い願いは,死んだ愛する者の蘇りだろう。『ペリクリーズ』ではその願いがかなえられる。シェイクスピアの手にかかると,荒唐無稽やご都合主義が奇跡に転じるのだ」 仰るとおりですね。

読了:「ペリクリーズ」

2012年5月18日 (金)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔22〕) (白水Uブックス (22)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
途中で関心をなくして何度か中断したのだが,昨日ようやく読了。活字で読んでもつまんないのだが,舞台だときっとちがうだろうという気もする。
 執事マルヴォーリオはこんなひどい目に遭わされて,読んでいるこっちまで腹が立ってくる。復讐を誓った執事が,脳天気な登場人物どもをナタだかチェーンソーだかで皆殺しにしちゃう,という続編はどうだろうか。

読了:「十二夜」

2012年5月17日 (木)

Bookcover スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) [a]
ジョン ル・カレ / 早川書房 / 1987-01-31
Bookcover スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) [a]
ジョン ル・カレ / 早川書房 / 1987-01-31
Bookcover スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439)) [a]
ジョン・ル・カレ / 早川書房 / 1987-04-15
海外小説にはなるべく手を出さないように気を付けているのだが、これはGWを言い訳にして読んだ本。先日たまたま「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」の映画化(「裏切りのサーカス」)を観に行って、なかなか味わい深かったもので、心のなかでル・カレのブームが再来した次第である。
 スマイリー三部作の第二作と第三作。特に「スマイリーと仲間たち」、実に素晴らしい。昼飯を食べながらめくっていて、いよいよカーラの実像が明らかになるくだりで胸が一杯になってしまった。

読了:「スクールボーイ閣下」「スマイリーと仲間たち」

2012年5月 9日 (水)

Bookcover 壊れかた指南 (文春文庫) [a]
筒井 康隆 / 文藝春秋 / 2012-04-10
最初の数篇を読んでようやく,すでに単行本で読んでいたことに気がついた。。。

読了:「壊れかた指南」

2012年4月23日 (月)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔35〕) (白水Uブックス (35)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
近代人の常識を打ち破る荒唐無稽ぶりは,先日読んだ「シンベリン」に匹敵するのだけれど,こっちのほうが全然面白いと思った。舞台に「時」が登場してあれこれ説明するところなんか,典雅でよろしいですね。
 重要な場面のひとつに,ボヘミアの海岸なる場所が出てくるんだけど(ボヘミアは現在のチェコ,内陸である),当時の観客にとっては違和感はなかったのだろうか,それとも,我々にとっての「信州の海辺」みたいなもので,あきらかにナンセンスだったのだろうか。

 シェイクスピアの戯曲は小田島訳だと37冊あるが,うち21冊を読んでしまった。読むのがだんだんもったいなくなってきた...

読了:「冬物語」

2012年4月11日 (水)

Bookcover 鮫島の貌 新宿鮫短編集 [a]
大沢在昌 / 光文社 / 2012-01-18
新宿鮫シリーズの短編集。ファン向けの内容であった。

読了:「鮫島の顔」

2012年4月 4日 (水)

Bookcover 逃亡のガルヴェストン (ハヤカワ・ミステリ) [a]
ニック・ピゾラット,東野 さやか / 早川書房 / 2011-05-09
久々に海外小説に手を出してしまった。
 気晴らしのつもりであまり期待せずに読みはじめ,おお,これはクライムノヴェルとして始まり人情話として終えるという趣向か... などと気楽にフガフガとめくっていたのだが,読み終えてからはじめて,これは案外な傑作であると感心した。ラストに至って読み手の心を動かす小説である。
 この小説にはちょっと仕掛けがあって,中盤でいきなり時間をずらし,ある意味で筋を割ってしまう。かなりな賭けだと思うのだが,実にうまく働いている。こういうの,いったいどうやって思いつくんだろう,としばらく考え込んだ。

読了:「逃亡のガルヴェストン」

2012年3月29日 (木)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔25〕) (白水Uブックス (25)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
この本は,つまらないというより,そこはかとなく不愉快であった...
 ロシリオン伯爵バートラムは,取り巻きの良し悪し以前の問題ととして,そもそも本人がロクでもない男だと思うのですよ! あんな男に執心するヘレナもヘレナだ,人を見る目がない。王様もそう助言してやるべきだ。などと,真剣にイライラしていたのであった。我ながら呑気なものだ。

読了:「終わりよければすべてよし」

2012年3月26日 (月)

Bookcover ガラスの動物園 (新潮文庫) [a]
テネシー ウィリアムズ / 新潮社 / 1988-03
大劇作家 T. ウィリアムズの初期の自伝的作品だ,という中途半端な知識だけがあって,きっと同性愛に目覚めた青年が苦悩したりするんだろうなあなどと勝手に想像し,食わず嫌いのまま過ごしていた。この度たまたま舞台を見る機会があって(長塚圭史演出),予想とあまりにちがうのでびっくり。これ,追憶をよすがに生きる母親と,パニック障害の娘の話なのだ。
 戯曲を読み直して思うに,こういう大傑作を33歳で書いちゃうのって,あとがつらいだろうなあ,と... 悲惨な晩年を念頭においた後知恵かもしれないけれど。

読了:「ガラスの動物園」

2012年3月23日 (金)

Bookcover シェイクスピア全集 (7) リチャード三世 (ちくま文庫) [a]
W. シェイクスピア / 筑摩書房 / 1999-04
最近では一番の大当たり。リチャードはあらゆるものを憎み,破滅に向かって疾走するのである。息もつけないスピード感。熱狂のうちに一気読み。ぜひもう一度読みたい。

Bookcover シェイクスピア全集 (〔34〕) (白水Uブックス (34)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
これはその,ちょっと... 沙翁先生にも好不調があるようだ。

読了:「リチャード三世」「シンベリン」

2012年1月30日 (月)

平出修 (1913)「逆徒
 平出修という名前はなんとなく昔の歌人として記憶していたのだが,この人はもともと弁護士で,大逆事件の弁護人のひとりであったのだそうだ。この小説は平出が判決の2年後に発表した短い法廷小説で,被告のひとりである無学な青年に焦点を当てている。このたび読んだ田中俊尚「大逆事件」で知り,青空文庫で探して読んでみた。
 死刑宣告を言い渡してさっさと退廷する裁判官たちに対し,視点人物の弁護士は内心で呟く。「人としての諸公が、人としての死刑囚に対したとき、その顔を見るに堪へずとして、自らの顔を背け、寸時もその席にある能はざるの態を示して、出来得るだけ迅速に、しかも威容を乱さずして、その席を退かれたこと、之れ人情の真の流露と見るべきではあるまいか」これが当時の精一杯の書き方だったのだろう。この小説が載った雑誌は直後に発禁処分となったそうである。

読了:平出修「逆徒」

2012年1月24日 (火)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔1〕) (白水Uブックス (1)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
Bookcover シェイクスピア全集 (〔2〕) (白水Uブックス (2)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
Bookcover シェイクスピア全集 (〔3〕) (白水Uブックス (3)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
わからないなりに興味深く読んだが,やはりこういうシェイクスピアの史劇は,実際に舞台で人が動くのをみないと,本当のところは理解できないのかもしれない...

読了:「ヘンリー六世」

2012年1月16日 (月)

Bookcover 曾根崎心中 冥途の飛脚 心中天の網島―現代語訳付き (角川ソフィア文庫) [a]
近松 門左衛門 / 角川学芸出版 / 2007-03
市村弘正「『名づけ』の精神史」に収録されていた,鶴屋南北「東海道四谷怪談」に映し出された社会変動についての分析(「都市の崩壊-江戸における経験」) がとても面白くて,でも四谷怪談についてよく知らないことに気づき,これはちょっと読まなきゃな,と本屋を二件探したのだが,あいにく置いていなかった。腹いせに深い考えもなく,古典の棚から別の本を取った。現代語訳付きを買ったのは,まあそうでもなきゃ読めないだろうと思ったからである。
 で,さきほどパラパラめくりはじめたら... 結局,仕事そっちのけで,原文と現代語訳の両方を読み尽くす羽目になった。まずい...

 浄瑠璃について全く知識がないので,おそらく数分の一も理解できていないと思う。残念なことだ。それでも面白かった点をメモしておくと:
  「曽根崎心中」の徳兵衛とお初も,「冥土の飛脚」の忠兵衛と梅川も,世間のなかに生き,世間から逸脱しないために死んでいく。だからこそ,お初は道行の段で「今年の心中よしあしの。事の葉草やしげるらん。聞くに心もくれはどり『あやなや昨日今日までも。よそにいひしが明日よりは我も噂の数に入り』」と気にするし,いざ心中の場面で徳兵衛は「いさぎよう死ぬまいか世に類なき死に様の。手本にならん」などという。彼らは自己と社会の軋轢に耐えかね自己を実現する最後の手段として命を絶つ,のではない。むしろ,世間のありかたを完成させるために死んでいくのだ。これは意外だった。
 ところが「心中天の網島」にはこれを突き破るような要素が出現する。遊女小春を縛るのは世間ではなく,心中相手の妻おさんと交わした約束なのである。道行が終わったところで,「おさん様より頼みにて殺してくれるな殺すまい。挨拶切ると取り交わせしその文を反古にし。大事の男をそそのかしての心中は。さすが一座流れの勤めの者。義理知らず偽り者と世の人千人万人より。おさん様ひとりのさげしみ。恨み妬みもさぞと思ひやり」 小春には,特定の個人と結んだ,自分自身を賭けて守らなくてはならない約束がある。これはちょっとすごいことではないのだろうか?

 それにしても,まずい... 近松に熱狂するだなんて。退職してヒマな団塊世代じゃあるまいし。

読了:「曾根崎心中・冥土の飛脚・心中天の網島」

2012年1月 3日 (火)

Bookcover みずから我が涙をぬぐいたまう日 (講談社文芸文庫) [a]
大江 健三郎 / 講談社 / 1991-02-04
本年最初に読み終えた本が,よりによって大江健三郎である。めんどくさい一年になりそうだなあ。
 それはまあいいとして,表題作の中編がとても面白かった。俺は大江健三郎の本をろくに読んでいないので,大昔に読んだきりの「死者の奢り」や「飼育」のような,あの無闇に陰気な印象が強く残っているのだけれど,こんなに笑いと仕掛けに満ちた小説を書いている人なんですね。知らなかった。

読了:「みずから我が涙をぬぐいたまう日」

2011年12月19日 (月)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔36〕) (白水Uブックス (36)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
ひねくれすぎなんだろうけど,俺はこの話,素直に楽しめなかった。グローバル企業のエリート・プロスペローがぬれぎぬを着せられて失脚,極東の島国の出張所に左遷され,腹いせに人事権を振りかざして現地採用社員をこき使う。さらには出張でやってきた経営陣を罠にはめて痛めつけようとするが,いろいろあって疑いが晴れ,本国に栄誉の帰還と相成る。いっぽう,アホでのろまで英語が下手な現地採用のキャリバンが企んだプロスペロー追い落とし工作は無惨に失敗,出張所は閉鎖,失職したキャリバンはひとり泣きながらハローワークに通うのであった。。。というような筋が,ついつい思い浮かんでしまって。

読了:「テンペスト」

2011年11月30日 (水)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔10〕) (白水Uブックス (10)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
良く知っているつもりの話でも,食わず嫌いはやめて,一応は読んでみるものだ。こんなに面白いんだから。
 こんなことを云ってはいけないのかもしれないが,ロミオにしてもジュリエットにしても,こんなに愚かで軽率で幼いガキどもが,この人命の軽い時代に長生きできたとは思えない。どうせほっといてもろくな末路を辿らなかっただろうから,これはこれで良い死に方をしたというべきではなかろうか。
 それはともかく,この芝居はコミカルなやりとりが横溢する作品でもあって,乳母とマーキューシオという二大キャラクターが場面場面を引っかき回す。頁をめくるのは至福のひとときであった。一度,舞台で観てみたいものだ。

読了:「ロミオとジュリエット」

2011年11月24日 (木)

 突然降臨したハイデガー・ブームとは別に,シェイクスピア・ブームも絶賛継続中である。仕事と関係ない本はどうしてこう面白いんですかね。

Bookcover シェイクスピア全集 (〔6〕) (白水Uブックス (6)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
予想を上回る残虐さ。「残念でした,お前の息子はお前がいま食べたパイのなかだよーん」(大意)とタイタスが吠えるあたり,おいおいちょっとちょっと... という印象だが,しかしこれ,舞台で観たら案外面白いかもしれない。目を覆う復讐の連続にも,象徴的な意味を読み取れるかもしれない。

Bookcover シェイクスピア全集 (〔12〕) (白水Uブックス (12)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
いまはどうだか知らないが,子どもの頃に観た正月のテレビ番組は,このような祝祭感に満ちていた。仕事がバタバタしているさなか,昼飯を食べながら頁をめくった。良い喜劇は人を救ってくれます。

 そういえば,先日若い友人と飯を食っていて,最近シェイクスピアにはまってるのって,そのきっかけはなんですか,と訊ねられた。ハロルド作石のヤングマガジン連載「7人のシェイクスピア」のせいで読んでみたくなってね,と正直に説明したら,小声で「ちっ,マンガはじまりかよ...」との仰せであった。「マンガはじまり」という表現が面白い。ああそうだよ,文句あっか。

読了:「タイタス・アンドロニカス」「夏の夜の夢」

2011年11月 4日 (金)

世間的にはハタラキザカリと称されるお年頃のおっさんが,日々シェイクスピアなどに没頭していてよいものか,老後の楽しみに取っておくべきか。。。といささか後ろめたい気持ちもあり,いや考えようによってはいまが老後みたいなものだし。。。と開き直る面もあり。そんなこんなで,ここんところ沙翁先生に取り憑かれている。意外にも,これが面白いのだ。

Bookcover シェイクスピア全集 (〔27〕) (白水Uブックス (27)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
松岡和子さんのエッセイを読んでいたせいで,デズデモーナはついつい蒼井優の顔で思い浮かべてしまい,いっぽうオセロー以下他の人物はすべて西洋人だから,頭のなかの舞台はなんだか妙な感じであった。しかし,若妻が蒼井優だったら,そりゃまあベタ惚れにもなるわね。。。

Bookcover シェイクスピア全集 (〔24〕) (白水Uブックス (24)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
「落ち」らしきものがない不思議な物語なのだが,これが妙に面白かった。クレシダがなに考えてるかわかんないところに秘密の一端があると思う。

Bookcover シェイクスピア全集 (〔15〕) (白水Uブックス (15)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
Bookcover シェイクスピア全集 (〔16〕) (白水Uブックス (16)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
読み終えて印象に残るのは,なによりフォールスタッフの撒き散らす悪口暴言の数々。実に素晴らしい。カーテンコールでフォールスタッフだけを呼び戻したい。

Bookcover シェイクスピア全集 (〔20〕) (白水Uブックス (20)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
政情を一転させる,アントニーの一世一代のイヤミ演説。有名なくだりなので知識としては知っていたが,このたび通して読んでみて感銘を受けた。いやはや,これほどのイヤミっぷりとは思わなかったです。

Bookcover シェイクスピア全集 (〔19〕) (白水Uブックス (19)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
残念ながら,いまのところこの戯曲だけは,どこが面白いのかよく分からない。イギリスの観客にとっては,国威発揚的な意味があるのかもしれないけれど。

ええと,小田島訳のシェイクスピアは37冊,うち読んだのはまだたったの10冊。この調子ではきりがない。やっぱり老後の楽しみに取っておこうか...

Bookcover れんげ荘 (ハルキ文庫 む 2-3) [a]
群 ようこ / 角川春樹事務所 / 2011-05-15
なんとなく手に取った本。45歳独身女が勤めを辞めて木造アパートで貧乏暮らしをはじめる話。背景に母親とのどす黒い葛藤があって,さほど気楽な小説ではない。

読了:「オセロー」「ヘンリー四世」「ヘンリー五世」「ジュリアス・シーザー」「トロイラスとクレシダ」「れんげ荘」

2011年10月11日 (火)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔29〕) (白水Uブックス (29)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
なんとなく知っているつもりの話であったが,このたび読んでみて意外だったのは,かの有名な夫人よりもむしろマクベスの人間像であった。マクベスは幻影と不眠に苦しみながらも,自らの運命を自ら支配しようとする,ロビンソン・クルーソーなみの近代人であるように思われる。こういう話だったのか。

Bookcover 江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 (日本カルト映画全集) [a]
/ ワイズ出版 / 1995-05
仮にも映画が好きですなどと自称しておきながら,石井輝男「恐怖奇形人間」('69)をこれまで未見のままに済ませていた不明を深く恥じる次第である。その昔は大井町や自由が丘の映画館で始終かかっていたのであまり有り難みがなく,かえって見そびれていたのである。先日の新文芸座の岡田茂回顧上映でようやく観賞し,噂を上回るあまりのラストシーンに打ちのめされ,場内が明るくなってもしばらく席から立てなかった。だって,もう,可笑しくて可笑しくて。「どかーん」「お母さーん」はないだろう,と。
 この本は映画の脚本,脚本家と監督のインタビュー,当時のいくつかの批評記事など,そして原作の一つである乱歩「パノラマ島奇譚」をまとめたもの。
 それにしても,土方巽は偉大な人だったのだなあ。この映画を見終わって心に残るのは,やはりこの舞踏家の異様な身振りである。どんな陳腐な台詞を吐いても,この人だけは常人に思えない。

読了:「マクベス」「恐怖奇形人間」

2011年10月 4日 (火)

Bookcover 美しい夏 (岩波文庫) [a]
パヴェーゼ / 岩波書店 / 2006-10-17
素晴らしい小説ですっかり引き込まれているんだけど,あまりに引き込まれてしまい,登場人物の悲劇につきあうのが辛くなり,頁を開く気にならない,ということがたまにある。この本がそうであった。
 このままだと読みかけのまま夏が終わってしまうと思い,会社の近所にある小さな神社の軒下に腰を下ろし,時々白い雲を見上げて深呼吸しながら一気に読み終えた。いやあ,しんどい物語であった。あの馬鹿みたいに青い空,しばらく忘れられそうにない。

Bookcover シェイクスピア全集21 アントニーとクレオパトラ (ちくま文庫) [a]
W. シェイクスピア / 筑摩書房 / 2011-08-09
アントニーとクレオパトラは,愛と不信の間を振り子のように揺れながら,手を取り合うようにして破滅へと進んでいく。細かいところはよくわからないが(なにせ長い戯曲なのだ),理解できる範囲では面白かった。
 そういえば,この本にもこんな印象深い台詞が出てくる。目前に迫る死を悟りつつあるアントニーが従僕に語る場面。「どうかするとある雲が龍に見えてきたりする,ひとつの霧のかたまりが雲かライオンのようだったり,塔のある城塞,空に張り出す絶頂の頂,峰が二股に別れた山,木々の生い茂る青い岬などに見え,それが下界に向かってうなずき,大気の流れによって人の目をあざむく。お前も見たことがあるだろう? あれは夜の闇の到来を告げる華麗な野外劇だ」「はい,陛下」「いま馬だったものが,そう思う間もなくちぎれ雲にまぎれておぼろになってしまう。水に注がれた水のように」「そうですね,陛下」 「いいやつだな,エーロス,いまお前の将軍はちょうどそういうものなのだ。俺はいまアントニーだが,目に見えるこの形を保つことはできないのだよ」

Bookcover 絆回廊 新宿鮫Ⅹ [a]
大沢在昌 / 光文社 / 2011-06-03
「新宿署の鮫島ダ」(←ぜひ舘ひろしのモゴモゴした声で)でおなじみの人気シリーズ,5年ぶりの新刊。このたびは大鹿マロイを思わせる大男が新宿にやって参ります。
 俺はあまり良い読者ではないもので,このシリーズの最近の数作については全く印象にないのだが,この作品は久々の傑作だと思った。

読了:「美しい夏」「アントニーとクレオパトラ」「新宿鮫 絆回廊」

2011年9月25日 (日)

Bookcover 気まぐれ少女と家出イヌ [a]
ダニエル ペナック / 白水社 / 2008-12-17
犬を視点にした児童向け小説。なんだかありがちな感じだが,これが意外な大ヒットであった。皮肉が効いてて,とても面白い!

読了:「気まぐれ少女と家出イヌ」

2011年8月28日 (日)

Bookcover 日本沈没 上 (小学館文庫 こ 11-1) [a]
小松 左京 / 小学館 / 2005-12-06
Bookcover 日本沈没 下 (小学館文庫 こ 11-2) [a]
小松 左京 / 小学館 / 2005-12-06
あまりの要領の悪さ,そこからくるあまりの忙しさにうんざりし,仕事を投げ出して読んだ本。たしか中学生か高校生の頃に読んだと思う。
 すっかり忘れていたのだけれど,田所博士は最期の場面で「もっとたくさんの人に... 日本と,この島といっしょに...死んでほしかったのです...」と慟哭するのであった。重い台詞である。

Bookcover 狂雲集 (中公クラシックス) [a]
一休 宗純 / 中央公論新社 / 2001-04
ここ数ヶ月持ち歩いていた本。
 コンテクストがわからないのでほとんど理解できていないのだが,すくなくとも一休和尚はすべてのコンテクストから自由な人ではなくて(そう,そんなことが可能なわけがない),当時の禅宗をめぐる社会状況に深く埋め込まれた人なのであった。ときおり出現する熱烈な天皇崇拝もそうだし,対立する僧たちへの批判たるや,本人が「言鋒殺戮す,幾多の人ぞ偈を述べ詩を題し筆もて人を罵る,八裂七花舌頭の罪,黄泉には免れがたし火車の人」と自省する通りである。老境の純愛として名高い盲目の森女とのエピソードも,解説によれば,大徳寺入山の決意を合理化する壮大な文学的フィクションと解することができるのだそうである。一概に風狂の人といえるわけではなさそうだ。

読了:「日本沈没」「狂雲集」

2011年8月 8日 (月)

Bookcover 雪男たちの国 [a]
ノーマン・ロック / 河出書房新社 / 2009-01-24
スコット探検隊を題材にした幻想小説。もうなにがなんだか。

Bookcover 特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848) [a]
ユッシ・エーズラ・オールスン / 早川書房 / 2011-06-10
燃え尽き寸前の一匹狼刑事と,中東からやってきた奇妙に有能な掃除夫との凸凹コンビが難事件を解決する話であった。面白いけど,終盤はかなりご都合主義的に疾走する。日本人作家が書いていたら絶対読まない種類のミステリであった。こういうの,ハヤカワのポケミスでも出るんですね。

読了:「雪男たちの国」「特捜部Q」

2011年6月 8日 (水)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔28〕) (白水Uブックス (28)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
感想1. リア王は第一幕の段階からべらべらと実によく喋る男なのだが,これは以前からそういう饒舌な王様だったと考えた方がいいのか,それとも冒頭部分からすでに,なにかしら非日常的な状態に突入していると考えるべきか。
感想2. しみじみと思うに,一番悪いのは三女コーディリアじゃないかと思うのだが,どうか。正直ならいいってもんでもないだろう,年寄りの気持ちも考えろ,といいたい。

読了:「リア王」

2011年5月29日 (日)

Bookcover シェイクスピア全集 (〔23〕) (白水Uブックス (23)) [a]
ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
ハロルド作石さんが小学館で連載している「七人のシェイクスピア」を布団に寝転がってめくっていたら,ふいにシェイクスピア様の本を読んでみたくなり,たまたま本棚にあった「ハムレット」をカバンにつっこんで出勤した。で,昼飯を食べにいった近所の店でパラパラめくり始めたら,これが無闇に面白くて,パスタそっちのけでのめり込んで読み続ける羽目になった。
 なにしろ昔の戯曲だから,最初はちょっとハードルがある。俺がひっかかるのは,たとえば芝居の冒頭部分,夜中の城壁で兵士が誰何する場面。「止まれ!だれだ!」「この国の味方。」「デンマーク王の臣下。」 なんなの,このやりとりは? 素直に名を名乗ればいいじゃん!!
 というような,おそらく詳しい人が聞いたら鼻で笑っちゃうようなハードルをいったん乗り越えると,これがほんとに面白い。昔読んだときは,これほどまで身近な物語だとは思わなかったのだが。
 今回読んでいてもっとも面白かったのは,オフィーリアの父親のポローニアス。冗長な長台詞で半径数メートルを埋め尽くしながら,実は状況を冷徹に操作している,でも人間観はあまり深くない,というような人。いるいる!こういう人!と,膝を打つような思いであった。
 ポローニアスは中盤でハムレットに刺し殺されてしまうから,ただの脇役だという印象だったのだが,思えばとても重要な人物である。こういうおっさんが悲劇を引き起こすともいえるし,こういうおっさんがいることでカタストロフがうやむやになる,ともいえる。ハムレットがありふれた青年であるのと同様に,ポローニアスもまた,どんな組織にも必然的に生まれてくるタイプなのではないか。。。

 などということを考えながらふと頭を上げると,裏原宿のおしゃれなカフェのカウンターの片隅で,飲みかけのコーヒーを冷めるに任せ,時計にも気づかぬままに,なぜかひたすらシェイクスピアに没頭する,ヨレヨレのスーツの中年男,それがわたくしである。いろんな意味で浮いている。客観的にみて,この男は絶対出世しないタイプだ,と痛感した。

Bookcover 二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
デイヴィッド・ゴードン / 早川書房 / 2011-03-10
海外ミステリには手を出さないように気をつけているのだが,わたくしの愛する「ダメ男一人称小説」に属する新作ということであれば仕方がない。
 実際のところは,すごく上出来なライト・ノベル,という感じであった。主人公はうらぶれた中年作家とはいえ,まだ30代だと思うし。やたらに頭のいい生意気な女子高生が相棒だったりするし。まあ,週末のエンターテインメントとしては申し分ない小説でありました。

読了:「ハムレット」「二流小説家」

2011年5月23日 (月)

Bookcover 眠れる美女 (新潮文庫) [a]
川端 康成 / 新潮社 / 1967-11-28
表題作の「眠れる美女」,高校生の頃に読んだ頃は,主人公の老人が,まだ「男としての力がある」のないのという点に妙にこだわるのが可笑しかった。いま読んだらさぞや印象がちがうだろうなあ,と思って手に取ってみた。
 今回いちばん印象に残ったのは,全裸でこんこんと眠る若い娘たちの描写であった。エロティックというより,切なく,哀しい。

読了:「眠れる美女」

2011年5月 6日 (金)

Bookcover ら抜きの殺意 [a]
永井 愛 / 而立書房 / 1998-02
永井愛さんの97年の戯曲。「ら」抜き言葉やことわざの誤用を切り口にした喜劇。後半で女性語についての議論になるところ,とても可笑しくて,しかも深い。

 俺はこの劇作家がおそろしくてたまらない。この人は,我々のさもしい根性や情けない振る舞いを,透徹した視線でじーっと見つめているのだろうなあ,という気がしてならない。悪いことに,現代日本を代表するこの劇作家は外見的には平凡な女性であり,さらに悪いことに,どういうわけか俺はこの人とばったり出会うことが多いのである。永井愛作・演出の芝居を見に行った帰り,出口で愛想良く頭を下げている人をふとみたら永井愛。渋谷で鮮やかなコートの女性とすれ違いざま目があったら永井愛。高円寺の階段で立ち話をしている女性とぶつかりそうになり,あわてて避けたらそれが永井愛。三軒茶屋の喫茶店で散々馬鹿話をした後,振り返ってお勘定を頼もうとしたら,すぐ背中のカウンターで静かにコーヒーを啜っている永井愛。なぜだ。心臓に悪い。どうにか配慮してもらえないものだろうか,「ナガイアイでございます」とスピーカーで怒鳴りながら歩くとか。

読了:「ら抜きの殺意」

2011年5月 2日 (月)

Bookcover 海炭市叙景 (小学館文庫) [a]
佐藤 泰志 / 小学館 / 2010-10-06
函館をモデルにした地方都市を舞台にした短編連作。映画を先に観てしまい,これが実に良い映画だったもので,この原作の良し悪しについてはもはや確信が持てないのだが... きわめて地味だけど,ちょっと心に残る部分がある小説だなあ,という印象。

読了:「海炭市叙景」

2011年1月17日 (月)

Bookcover ナナ (新潮文庫) [a]
ゾラ / 新潮社 / 2006-12-20
登場人物のあまりの多さに音を上げて,1/4ほど読み進めたところであきらめて最初に戻り,人名のメモを取りながら読み直した。その甲斐はあった。
 多くの男達を破滅に導く主人公の高級娼婦ナナが,ついに手に入れた広大な屋敷の敷地で,土砂降りの雨の中をはしゃぎ歩く場面,実に良い。素晴らしき十九世紀小説。

読了:「ナナ」

2010年12月25日 (土)

Bookcover リトル・シスター [a]
レイモンド・チャンドラー / 早川書房 / 2010-12
村上春樹さんのチャンドラー翻訳,第三弾は「かわいい女」である。訳者も解説で書いているとおり,筋が入り組みすぎていてよくわからん小説であった。

Bookcover ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF) [a]
ナンシー クレス / 早川書房 / 2009-03-31
たまにはハヤカワ文庫のSFを読んでみようかしらんと思い,評判が良い奴を手に取ってみた。ヒューゴー賞・ネビュラ賞同時受賞作を含む短編集なんて書いてあるから(よく知らないけど,有名な賞なんでしょうね),さぞやハードな内容かとおもったら,舞台こそSFらしいものの,テーマとしては家族小説であった。

読了:「リトル・シスター」「ベガーズ・イン・スペイン」

2010年12月18日 (土)

Bookcover そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) [a]
アガサ・クリスティー / 早川書房 / 2010-11-10
ミステリの名高い古典だが,恥ずかしながら未読であった(中学生の頃に読んだはずだが,全く印象に残っていない)。今夜はやらなきゃいけないことがいっぱいありすぎて,ついつい現実逃避に走ってしまい,二時間で読了。
映画を見たことがあったので,なんとなく展開が予測できてしまった(ああ,もったいない!)。それにしても,上手い小説だなあ。10人の登場人物像をあっという間に確立してしまう。で,彼らをゆっくりゆっくりあの世に送っていくのである。

読了:「そして誰もいなくなった」

2010年12月15日 (水)

Bookcover 門 (岩波文庫) [a]
夏目 漱石 / 岩波書店 / 1990-04-16
再読のはずなのだが,前に読んだときの印象がはっきりしない。
この小説の終盤で宗助は禅寺に行くが,では現代に生きる我々はどこに行けば良いのかしらん。もっとも,山に籠もってみたところで,宗助の抱えた問題はちっとも解決しないのだが。

読了:「門」

2010年11月22日 (月)

Bookcover 美しいアナベル・リイ (新潮文庫) [a]
大江 健三郎 / 新潮社 / 2010-10-28
最新作「水死」の前に発表された小説「臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ」を文庫化にあたって改題したもの。そりゃそうだ,「臈たし」なんてどう読むのかわかんないもんね(ろうたし,だそうです)。
 俺はこの作家の本を数冊しか読んだことがないし,たまに読むと登場人物がやたらに英詩を暗唱したりするもので面食らうのだけれど,この小説は面白かったです。たぶん大江初心者向きの,わかりやすい小説なのであろう。

Bookcover 続・井坂洋子詩集 (現代詩文庫) [a]
井坂 洋子 / 思潮社 / 2008-09
なぜか衝動買いした本。著者についてはまったく知識がないが,49年生まれ,高名な詩人である由。ずいぶんと不吉な詩を書く人だなあ。。。全編死の影に覆われている,という感じ。
 それにしても,詩集を読むのは難しい。いつもの癖で,ついつい飛ばし読みしてしまう。

読了:「美しいアナベル・リイ」ほか

2010年10月13日 (水)

Billy Wilder and I.A.L.Diamond, "The Apartment." Faber Classic Screenplay, Faber & Faber, 1998.
 先週の出張の帰りの夜行便で,英語が聞き取れなかったストレスのせいかなかなか眠れず,なにかのときの暇つぶし用にipodに入れてあったビリー・ワイルダー「アパートの鍵貸します」を極小画面で眺めて過ごした。で,ずいぶん前にこの映画の脚本を英語の勉強のつもりで買い込み,そのまま本棚に眠らせていたのを思い出した。ここ数日で読了。(いま気がついたんだけど,amazon.co.jpでは取り扱っていない模様で,残念ながら書影はなし。)
 この幸せなラブ・コメディの,細部に至るまでの完璧さといったら,もう。。。何度観たのかわからない映画だが,観るたびに深い感銘を受ける。この映画はジャック・レモンによるジャック・レモンのための映画という側面があって(初期「男はつらいよ」に似ている),前半部分の鼻水を啜りながら電話を掛けまくる一人芝居なんて,喜劇俳優の一世一代の見せ場!という感じである。驚くなかれ,ヒロインが物語に本格的に登場するのは中盤過ぎてからなのだ。にもかかわらず,「レモンの独演会」という印象は全く残らない。レモン演じるサラリーマン・バドが,いかに観客の共感を深いレベルで獲得しているかということの証拠だと思う。
 不思議なことに,これだけ徹底的に練りこまれたはずの脚本をもってしても,撮影時にさらに変更する余地が残されるものらしい。ラストシーン,アパートに駆け込んできたフラン(シャーリー・マクレーン)にバドが尋ねる:「シェルドレイクさんは?」 フランの返事は,たしか俺が見た字幕では「毎年ケーキを送るわ」だったと思う。不倫相手と別れることをひとことで示す名台詞だが,この撮影用脚本では"I'm going to send him a fruit cake every Christmas"となっている。いっぽう映画では,俺にははっきりと聞き取れないんだけど,フランは"We'll send him a fruit cake every Christmas"と云っているのだそうだ。Weのほうが絶対いいですよね。フランがすでに気持ちを固めており,したがって直後のバドの(いささか機を逸した)告白には目もくれない,ということがよくわかる。

最後のト書きは以下のとおり。ああ,この素晴らしい瞬間をなんと形容すべきか。ジン・ラミーでは札を10枚ずつしか配らないのに,などという余計なことを言う奴は死んでおしまいなさい。このまま永遠に配り続けてほしいくらいだ。

Bud begins to deal, never taking his eyes off her. Fran removes her coat, starts picking up her cards and arranging them. Bud, a look of pure joy on his face, deals - and deals - and keeps dealing. And that's about it. Story-wise. FADE OUT. THE END

読了:"The Apartment"

2010年10月12日 (火)

Bookcover 桜田門外ノ変〈上〉 (新潮文庫) [a]
吉村 昭 / 新潮社 / 1995-03-29
Bookcover 桜田門外ノ変〈下〉 (新潮文庫) [a]
吉村 昭 / 新潮社 / 1995-03-29
外資系企業勤務にして英語がろくに喋れない俺は,かえって外国と縁なき日々を送ることができると踏んでいたのだが(少なくとも海外転勤は命じられずに済むはずだ),そんな俺にもまさかの海外出張が。特になにをしたわけでもないんだけど,通じない英語のせいでもう心底疲弊してしまった。ああ英語のない世界に行きたい,と繰り返し嘆いていても詮無いことなので,せいぜい気晴らしのために,日常生活と一切関係なさそうな本を買ってきた次第。
 ひこにゃんの地元のお殿様・井伊直弼の暗殺を企てる水戸藩士たちの話。後半1/3は,超一級のお尋ね者となった首謀者がひたすら逃げまわる,というあまり意気のあがらない展開である。
 俺は吉村昭の熱心な読者ではないけれど,この人の歴史小説は感傷を排除し,ひたすら出来事の記述だけを淡々と続けていくようにみえて,一瞬だけ激しい感情が暴発する。。。ような気がする。この本でいうと,首謀者の愛人であるなにも事情を知らない女性が虐殺される場面とか,首謀者を最終的に裏切った男が泣きながら歩み去っていく場面とか。

読了:「桜田門外の変」

2010年10月 4日 (月)

Bookcover ひなた (光文社文庫) [a]
吉田 修一 / 光文社 / 2008-06-12
最近は書店員による手書き推薦文を本の帯にしたりするのが流行ってるみたいだけど,この本もただいまそうやって展開中。「恵まれた4人の恋人と兄弟/ありふれたおはなし/ただそれだけなのにどうしてこうも/心揺さぶられるのでしょう」 (by 丸善ラゾーナ川崎店の書店員さん)。いいコピーですね。
 で,読んでみたところ,この小説に心揺さぶられるという人がいるのはわかる,しかしどうでもいい話だと思う人もいるだろう。。。という内容であった。俺はどちらかというと後者です,すみません。

読了:「ひなた」

2010年9月20日 (月)

Bookcover 音もなく少女は (文春文庫) [a]
ボストン テラン / 文藝春秋 / 2010-08-04
著者ボストン・テランはノンストップ系アクション「神は銃弾」で評判になった人。俺も読んだけど,読んでいるあいだ面白かったという記憶しかない。
 この小説は第4作,NY・ブロンクスを舞台に,三人の女たちの三十年を静かに描いた佳編であった。解説で北上次郎さんが誉めているとおり,胸に残る良い小説である。

Bookcover 卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838) [a]
デイヴィッド・ベニオフ / 早川書房 / 2010-08-06
青春小説「25時」でデビューしたD.ベニオフの最新作。この人,いまでは売れっ子脚本家であることのこと。この小説も,レニングラード包囲戦という暗鬱な舞台にもかかわらず,ちょっとファンタジックでさわやかな冒険小説になっているあたり,さすがである。

Bookcover 悪の教典 上 [a]
貴志 祐介 / 文藝春秋 / 2010-07-29
Bookcover 悪の教典 下 [a]
貴志 祐介 / 文藝春秋 / 2010-07-29
生徒や同僚の信頼厚い好青年だが,実は他者への共感能力を欠く異常者であるところの高校教師を主人公にしたホラー小説。後半は校内を血に染める大虐殺となる。読ませる小説ではあるけれど。。。好みが別れるところであろう。俺自身は,途中から一種のブラック・ユーモア小説として頁をめくっていたのだけれど,そういう捉え方で良かったのかどうかよくわからない。
 それにしても,高校生同士の会話場面になると,なんだか急にふわふわ宙に浮いたような文章になってしまうのは,いったいなぜなんですかね。これはもうライト・ノベルとして捉えるべきなのか。それとも,高校生についての俺のスキーマのほうに問題があって,他の読者にとってはリアリティある描写なのか。よくわからんなあ。

読了:「音もなく少女は」ほか

2010年9月 4日 (土)

Bookcover 自負と偏見 (新潮文庫) [a]
J. オースティン / 新潮社 / 1997-08-28
ちょっと理由があって(後述),ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」を読んでみたくなった。英文学の名高い名作だが,これまでなぜかご縁がなかったのである。
 1$かそこらで叩き売られていたKindle版を買ってはみたが,もちろん英語で読み通せるわけではない。たまたま訳書が家の本棚に何冊かあったので,まず岩波文庫で読み始めたら,かなり古い訳文で,どうも堅すぎて読みづらい。1/3くらい進んだところであきらめて,おそらくもう少し新しい訳である新潮文庫で最初から読み始めたら,こんどは会話文があまり時代がかっていて... どうにか最後まで読み通したけれど,最初からちくま文庫の新訳を買って読めばよかった,とちょっと後悔している。
 有名な冒頭部分はこんな感じ。まず原文から。

It is a truth universally acknowledged, that a single man in possession of a good fortune, must be in want of a wife.
However little known the feelings or views of such a man may be on his first entering a neighbourhood, this truth is so well fixed in the minds of the surrounding families, that he is considered the rightful property of some one or other of their daughters.

岩波文庫(富田彬訳)では:

相当の財産を持っている独身の男なら,きっと奥さんをほしがっているにちがいないというのが,世界のどこに行っても通る真理である。
つい今し方,近所にきたばかりのそういう男の気持や意見は,知る由もないけれど,今言った真理だけは,界隈の家の人たちの心にどっかりと根をおろして,もうその男は,自分たちの娘の誰か一人の旦那さんときめられてしまうのである。

新潮文庫(中野好夫訳):

独りもので,金があるといえば,あとは細君をほしがっているにちがいない,というのが,世間一般のいわば公認真理といってもよい。
はじめて近所に引っ越してきたばかりで,かんじんの男の気持や考えは,まるっきりわからなくとも,この真理だけは,近所近辺どの家でも,ちゃんと決まった事実のようになっていて,いずれは当然,家[うち]のどの娘かのものになるものと,決めてかかっているのである。

ちくま文庫(中野康司訳):

金持ちの独身男性はみんな花嫁募集中にちがいない。これは世間一般に認められた真理である。
この真理はどこの家庭にもしっかり浸透しているから,金持ちの独身男性が近所に引っ越してくると,どこの家庭でも彼の気持ちや考えはさておいて,とにかくうちの娘にぴったりなお婿さんだと,取らぬタヌキの皮算用をするようになる。

翻訳の問題はともかくとして。。。面白い小説だった。どの登場人物も基本的には突き放して描かれており,その愚かさや滑稽さが容赦なく浮き彫りにされる。ところが読み進めるにつれ,主人公の娘やその恋人に対して暖かい共感を感じさせられる。小説の徳であるといえよう。

Bookcover 高慢と偏見とゾンビ(二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション) [a]
ジェイン・オースティン,セス・グレアム=スミス / 二見書房 / 2010-01-20

これは広く認められた真理であるが,人の脳を食したゾンビは,さらに多くの脳を求めずにいられないものである。この真理を生々しく見せつけられたのは,先ごろネザフィールドパーク館が襲撃されたときだった。十八人の住人がひとり残らず,活ける屍の大群に食い尽くされてしまったのだ。

 というわけで,オースティンの名作の文章の一部を適宜修正することによって,18世紀恋愛小説をB級スプラッタ・ゾンビ・ホラーに書き換えてしまった,というわけのわからない小説。この本のコンセプトを知って爆笑し,これは読まなければなるまい,さしあたってはまず本家「高慢と偏見」のほうを読んでおこう。と思った次第である。
 で,原作を読み終えた上で,こちらのパロディ小説のほうを読んでみたところ,いろいろ欠点はあるものの(ジョークが下品でくどい,挿入される格闘シーンがグロすぎる,など),やはりアイデアは悪くないなあ,と思った。女性の慎み深さがどうのこうのというオースティンの文章の途中に,突然に少林寺拳法を操る格闘シーンが割り込んでくる。さわやかなほどに馬鹿馬鹿しい。
 この本の大ヒットに味をしめた版元は,第二弾"Sense and Sensibility and Sea Monsters"を刊行し,こちらもかなり売れた由。ははは。

読了:「高慢と偏見とゾンビ」ほか

2010年7月21日 (水)

Bookcover 夢の泪 [a]
井上 ひさし / 新潮社 / 2004-07-17
東京裁判三部作の第二作。松岡洋右の弁護人となった弁護士夫婦の奮闘を描く。ラストシーンは戦後の復興景気を背景にしたハッピーエンドだが,本質的な問題はなんら解決していないところ,苦いエンディングである。

読了:「夢の泪」

2010年7月16日 (金)

Bookcover 夢の痂 [a]
井上 ひさし / 集英社 / 2007-01-06
東京裁判を題材にした三部作の第三作。戦後の東北の田舎町で,東北巡幸を迎えることになった旧家の人々が,粗相の無いようにと念入りな予行演習をする。天皇役に扮した元陸軍大佐は,天皇をあまりに敬愛し,敗戦をあまりに深く受け止めるが故に,思わず天皇として戦争責任を認め,退位を宣言してしまうのであった。

Bookcover 編集室 (白水uブックス―海外小説の誘惑) [a]
ロジェ グルニエ / 白水社 / 2002-08
大昔に買って本棚に眠っていた本。ふと思いついて読んでみた。ジャーナリスト出身の作家による,面白いような,そうでもないような,奇妙な印象の短編集であった。

読了:「夢の痂」ほか

2010年4月19日 (月)

先週金曜夜は村上春樹の新作を一気読みしてしまったのだが,欲望(?)の赴くままに読みふけってしまったのをかなり後悔している。もったいない。ほんとはもっとゆっくり楽しみたかった。きちんと読めているのならばまだいいけれど,直後に読み返すと「あれ? こんな描写があったっけ」と不思議に思うような凄まじい斜め読みぶりだから,余計に始末に悪い。かといって,自慢できるほど速く読めるわけでもないし。もう少し落ち着いた読み方をしたいものだ。
 10代後半に,朗読の入門書とか「NHKアナウンスセミナー」といった本を片っ端から読みまくったことがあった(放送部だったのです。あははは)。印象に残っているアドバイスのなかに,とにかく早口ほど直すのが難しいものはない,直すためには詩の朗読を繰り返すしかない,というのがあった。数年前にふとそのことを思い出し,そうだ,詩集を真剣に読めば,多少は丁寧に本を読めるようになるかも... と考え,何冊か面白そうなものを買い込んだ。で,それらの本はまだ未読のまま本棚にある。あーあ。

Bookcover ラスト・チャイルド(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
ジョン・ハート / 早川書房 / 2010-04-30
Bookcover ラスト・チャイルド(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
ジョン・ハート / 早川書房 / 2010-04-30
土曜日の非常勤講義終了後,自分へのご褒美のつもりで,久々に翻訳ミステリを買ってきた。「キングの死」のジョン・ハートの第三作。で,土曜夕方からページをめくりはじめ,すっかり引き込まれ,日曜夕方に読了。ああ,そんなはずではなかったのに。誰か俺を止めてくれ。
 えーと,面白い小説であったと思う。それにしても,ここ数年のあいだに読んだアメリカのサスペンス小説って,家庭崩壊とペドフィリアがテーマのものがやたらに多かった(「ミスティック・リバー」が良い例だ)。逆にいうと,純粋な悪ってもうペドフィリアくらいしかいないんですかね。いまさらナチスというわけにもいかないし。

読了:「ラスト・チャイルド」

2010年4月17日 (土)

Bookcover 1Q84 BOOK 3 [a]
村上 春樹 / 新潮社 / 2010-04-16
忙しい忙しいといいつつ,発売日についつい買ってしまい,帰宅してついつい読みふけってしまい... 深夜に読了。おかげで数時間しか寝られなかった。

読了:「1Q84 Book 3」

2010年4月 4日 (日)

Bookcover 平家物語(四) (講談社学術文庫) [a]
/ 講談社 / 1982-06-08
Bookcover 平家物語(五) (講談社学術文庫) [a]
/ 講談社 / 1982-07-07
Bookcover 平家物語(六) (講談社学術文庫) [a]
/ 講談社 / 1984-08
Bookcover 平家物語(七) (講談社学術文庫) [a]
/ 講談社 / 1985-01-08
Bookcover 平家物語(八) (講談社学術文庫) [a]
/ 講談社 / 1987-12-04
Bookcover 平家物語(九) (講談社学術文庫) [a]
/ 講談社 / 1988-01-06
Bookcover 平家物語(十) (講談社学術文庫) [a]
/ 講談社 / 1988-02-04
Bookcover 平家物語(十一) (講談社学術文庫) [a]
/ 講談社 / 1988-04-04
Bookcover 平家物語(十二) (講談社学術文庫) [a]
/ 講談社 / 1991-07-05

2月下旬から3月上旬にかけては,まさに「平家物語」に翻弄された日々であった。ふとしたきっかけで読み始めたら,これがもう,魂を抜かれる位に面白い。勤務先で真剣な話をしているときも,ふと気を抜くと心の中で「なるほど,この指標は重要だなあ。ああそれにつけても義仲はこれからどうなっちゃうんだろうか」なあんて,数秒意識が飛んでしまったりして。すみませんすみません。
読み終えてからしばらく経ったので,ようやく感想をメモしておく気になった。強烈な読書体験であった。

読了:平家物語

2010年3月 3日 (水)

Bookcover 平家物語(一) (講談社学術文庫) [a]
/ 講談社 / 1979-03-08
Bookcover 平家物語(二) (講談社学術文庫) [a]
/ 講談社 / 1979-10-08
Bookcover 平家物語(三) (講談社学術文庫) [a]
/ 講談社 / 1982-05-06
ふとした出来心で手に取ってみたら,これが実に面白い。。。原文,訳文,解説の順にならべてあるので,面倒かと思ったら,かえって原文を読むのが楽しくなる(見栄を張って岩波文庫を買ってたら,途中で挫折してたかも)。内容のメモはあとで。。。

読了:03/01まで (F)

2010年2月 8日 (月)

Bookcover 流れる (新潮文庫) [a]
幸田 文 / 新潮社 / 1957-12-27
今年度の非常勤の講義も無事終了にこぎつけた。受講者の学生さんたちにも恵まれ,感謝,感謝である。
 勤務先の方は暇とは言い難いが,講義の準備がないとなると,平日夜の気持ちも少し軽くなる。ときには大急ぎで仕事を終わらせ,レイトショーの映画館に駆け込んだりすることもある。
 先月そんなふうに都合をつけて観にいったのが,神田神保町シアターの高峰秀子連続上映であった。成瀬巳喜男「流れる」のあまりの素晴らしさに感嘆し,原作も読んでみた次第。
 小説の方も素晴らしいけど,著者の小説デビュー作とのことで,前に読んだ「おとうと」には一歩譲る感じである。いやいや,映画はほんとに素晴らしいです。杉村春子が酔って踊る場面に痺れました。
 なお,高峰秀子連続上映の最終日最終回,成瀬巳喜男の傑作と名高い「浮雲」の上映に,息せき切って駆けつけたのだけれど,なんと満席で入れなかった。ロビーに詰め掛けていた観客の多くは団塊世代のようで,これじゃ勤め人には分が悪い。
 
Bookcover 野川 (講談社文庫) [a]
古井 由吉 / 講談社 / 2007-08-11
昨年からちびちびと読んでいた小説。著者独特の幻想的な文体で,読んでいると次第に訳がわからなくなってくる。もうちょっと年をとってから読んだほうがいいのかも。

読了:02/07まで (F)

2009年12月30日 (水)

Bookcover カブールの燕たち (ハヤカワepi ブック・プラネット) [a]
ヤスミナ・カドラ / 早川書房 / 2007-02-23
以前「テロル」という面白い小説を読んだが,その著者の出世作らしい(デビュー作ではない)。タリバン支配下のカブールでの2組の夫婦を描いた,サスペンスフルかつ救いのない小説であった。

読了:12/30まで (F)

2009年12月27日 (日)

Bookcover 或る少女の死まで―他二篇 (岩波文庫) [a]
室生 犀星 / 岩波書店 / 2003-11-14
「繊細な感覚で日常の美を謳った大正詩壇の鬼才...の自伝的三部作」(表紙のコピー)なあんて云われると,どうも読む気が起きないのだが,これが意外にも,仕掛けに充ちた大変に面白い小説なのであった。表題作でいうと,無垢なる魂の象徴として,主役級の少女だけでなく酒場の娘も配置されているところとか。。。古い小説が古くさいとは限らないなあ。

読了:12/27まで (F)

2009年12月21日 (月)

植草甚一・木島始編「全集・現代世界文学の発見 12. おかしな世界」,學藝書林,1970.
高校生の頃だから,もうずいぶん昔のことだが,NHK-AMの第二放送に戦後のラジオドラマを再放送する枠があって,熱心に聞いていたものであった。内村直也「マラソン」,佐々木昭一郎「おはようインディア」といった放送史上に残る傑作を,この番組のおかげで聞くことができた。
 当時聞いたなかで特に印象に残っている作品に,チェコスロバキアのラジオドラマの翻訳があった。ずっと昔からNHKは,海外のラジオ作品の秀作を翻訳し放送する,という企画を続けていたようだが(いまでもやっているのかしらん?),この作品もそのひとつで,電話相談員の一夜の出来事を電話での会話だけで描くという,ラジオドラマの教科書のような対話劇だった。主演は若き日の山岡久乃だったから,昭和40年代の作品だろう。絞られた台詞のなかに,都市生活の哀歓がはっきりと浮かび上がる,大変な傑作であった。
 ふと思いついて,そのタイトル「電話救急本部」をGoogle様に入力してみたところ,一件だけ気になるページがあった。どこの誰とも知れない本好きの方による紹介によれば,とうの昔に絶版になった海外文学のアンソロジーに,「電話救急本部」という短編が収録されている,と書いてある。著者名にも聞き覚えがある。
 神田で探そうか,非常勤先の図書館で取り寄せてもらおうか,などと考えていたら,なんと近所の図書館の書庫に入っているのを発見した。果たして収録作品はあのラジオドラマのオリジナル脚本であった。小さなことだが,ちょっとした感動である。これも検索技術の発展のおかげ,そして充実した区立図書館のおかげである。ありがたや,ありがたや。
 ここまでが2006年の話。なかなか分厚いアンソロジーなので,一度借りただけでは読み終わらなかった。このたびふと思い立って再度借り出し,ようやく読みおえた。正確には,ゲイ・タリーズのエッセイ「ニューヨーク」を読み終えていないけど,ま,いいや。
 すでに言い尽くされたことだが,webに載せた情報は誰がどのように利用するかわからないものだ。このページもどこぞの誰かのお役に立つかも知れないから書いておこう。チェコの作家ミロスラフ・ステリック(Miloslav Stehlik)のラジオドラマ「電話救急本部」(1966年イタリア賞)に関心をお持ちのかたはこの本をお探し下さい。他にもチャペック「最後の審判」,カルヴィーノ「不在の騎士」,ランドルフィ「ゴーゴリの妻」などが収録されており,なかなかお得な一冊です。

読了:12/20まで (F)

2009年12月16日 (水)

Bookcover ユダヤ警官同盟〈上〉 (新潮文庫) [a]
マイケル シェイボン / 新潮社 / 2009-04-25
Bookcover ユダヤ警官同盟〈下〉 (新潮文庫) [a]
マイケル シェイボン / 新潮社 / 2009-04-25
いろいろ疲れる日々だったので,土曜の講義終了後に寄った本屋で,久々に海外ミステリを見繕うことにした。いわゆる「ご褒美消費」である。それがスイーツでも衣服でもなく文庫本だってんだから,安上がりだよなあ。
SFの主要賞を総なめにした,という触れ込みの架空歴史小説。第一次中東戦争にイスラエルが敗北していて,従ってイスラエルは存在せず,アラスカにユダヤ人難民たちの特別区が設けられる。舞台は2007年,米国返還による消滅を目の前にした特別区の刑事を主人公にしたハードボイルド小説であった。帯の書評ではチャンドラーやハメットに擬せられていたけど,むしろパーカーの私立探偵スペンサー・シリーズあたりに近いんじゃないですかね。
数ヶ月後には消えてしまう国家の警察官たち,という設定がとても面白いと思った。

読了:12/15まで (F)

2009年12月 1日 (火)

Bookcover 真鶴 (文春文庫) [a]
川上 弘美 / 文藝春秋 / 2009-10-09
仕事で神戸に行く用事があり,ついでに自腹で一泊し,日曜朝の元町商店街をぶらぶらして帰ってきた。ジュンク堂でガイドブックを立ち読みした際,立ち読みだけじゃ悪いなあ,と思って買ったのがこの本。古井由吉を思わせる幽霊譚であった。
それがいつだっけか? そろそろ一ヶ月近く経つのではないか? 時間が経つのが早すぎる。。。

読了:11/30まで (F)

2009年8月27日 (木)

Bookcover 殴られた話 [a]
平田 俊子 / 講談社 / 2008-11-05
最新作「私の赤くて柔らかな部分」と似たテーマの短編集。妻子あるミュージシャンと関係を持ってしまった女のドロドロなモノローグ。。。ううむ,救いがないなあ。

読了:08/26まで (F)

2009年8月18日 (火)

Bookcover 八月の路上に捨てる (文春文庫) [a]
伊藤 たかみ / 文藝春秋 / 2009-08-04
表題作は男性視点の離婚小説。最後に二人で昔のデートコースを辿り,若かった頃のお互いを悪く言い合って,思い出を仲良く捨てて歩く。怖いなあ。

読了:08/18まで (F)

2009年8月12日 (水)

Bookcover 私の赤くて柔らかな部分 [a]
平田 俊子 / 角川書店(角川グループパブリッシング) / 2009-07-31
考えようによってはポルノ小説のような題名だということにいま気がついたが(でなければ,サンタの橇を引くトナカイの自叙伝のような題名),これは詩人・平田俊子さんの最新小説。独身女性がふとしたきっかけから日常を抜けだし,見知らぬ街で宙ぶらりんな日々を送る。
 謎めいた食堂の常連客になりかけたら,愛想のない女性店主に「うち,『かもめ食堂』じゃないから」と釘を刺されてしまう。なんだか可笑しい。

読了:08/12まで (F)

2009年7月29日 (水)

Bookcover 四十七人目の男〈上〉 (扶桑社ミステリー ハ 19-14) [a]
スティーヴン・ハンター / 扶桑社 / 2008-06-28
Bookcover 四十七人目の男〈下〉 (扶桑社ミステリー ハ 19-15) [a]
スティーヴン・ハンター / 扶桑社 / 2008-06-28
B級冒険小説の巨匠スティーヴン・ハンターがお届けする,問答無用のバカ小説。
 かつてのベトナムの勇士である主人公は,硫黄島で亡き父と死闘を繰り広げた誇り高き日本兵の遺品を,彼の息子フィリップ・ヤノのもとへと届け,彼と厚い友情で結ばれるのだが,彼は極悪ヤクザ組織・新撰組のコンドー・イサミによって斬殺され,その家族も皆殺しにされてしまう。悪の組織を倒し,唯一生き残った幼い娘を救うため,主人公は日本に密入国し,老師による厳しい短期修行を通じてサムライの魂を会得すると,東京国立博物館のオトワ博士に託された妖刀ムラマサをひっさげ,米大使館員の美女ならびに自衛隊員の有志らとともに,悪人どもの屋敷を襲撃するのであった。メンバーは47人。もちろん,雪の日に,日本刀で乗り込むのである。
 ハンターはワシントン・ポストの映画批評記者でもあるのだそうで,著者あとがきによれば,「アメリカ映画が新たな"低み"に達したために,職業的映画批評家としてのわが人生にふさぎの虫が巣食っ」ていたある日,山田洋次の「たそがれ清兵衛」と出会い,以来二年間にわたってサムライ映画にのめりこみ,そのあげくの果てに書いた小説がコレなのだそうだ。ええええ? 山田洋次監督も驚愕する展開だ。
 三脚に組んだゴルフクラブの上に,新聞記者の生首が載っているのが発見され,ゴルフクラブは8番アイアンと9番アイアンと3番ウッドであった,つまりこれはヤクザのしわさだ,とか。。。「なんだって,彼はいまわのきわにドラゴンといったのか? ドラゴンといえばコモドオオトカゲを思い出すな。コモドは日本語のカマドと似ているぞ。よし!アパートのカマドを調べるんだ!」とか。。。しかもそのアパートにはカマドがある,とか。。。突っ込みどころが次から次へと暴力的に襲いかかってきて,息つく暇もないのだが,なかでも素晴らしいのは,悪の総帥・ショーグン登場のくだり。ポルノ産業の支配者である彼は,新作AV「ブラックさくらの女教師」の役作りに悩む売れっ子女優を懇々と諭す。
 「こんな風に考えてみなさい[...] 世界は,とりわけアメリカは,われわれを牛耳ることに血道をあげている。彼らはわれわれのやっていることを変えさせ,われわれをつぶしてしまおうとしている。前の戦争のように,原爆とか焼夷弾の雨とかではなく,彼らの文化,その荒っぽくて,攻撃的で,無分別な流儀でもってだ。きみは,さくらちゃん,きみはそれと戦わなくてはならない。きみはただの女優ではなく,アメリカとの戦いにおける前線の兵士,ひとりの侍なのだ。いいかね,さくらちゃん,きみが自身のなかに侍の魂を見いだすことはとても大事な職分であって,それを果たすために,カメラの前であそこをあらわにし,われわれにその映像を配給させなくてはいけない。完璧な痴女になれ。実際,痴女というのは肉欲を武器とする侍なんだ」
 ええええ?

読了:07/29まで (F)

2009年7月20日 (月)

Bookcover 1Q84 BOOK 1 [a]
村上 春樹 / 新潮社 / 2009-05-29
Bookcover 1Q84 BOOK 2 [a]
村上 春樹 / 新潮社 / 2009-05-29
いつも村上春樹の本は発売日に買い,即座に読んでいるのだが,この小説に関しては,これだけ社会現象化してしまったので,ちょっと手に取りにくかった(ぼんやりしてたら品切れになってしまったし)。連休を利用し,ようやく読むことができた。
 著者の昔の長編「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」が,もっと読みやすくなり,しかしもっと暗示的で陰鬱になったような物語だ,という印象を受けたのだが。。。的はずれな読み方かもしれない。人によってずいぶん感想がちがうだろう。俺はとても気に入ったが,どこか良いのか自分でもよくわからない。

読了:07/20まで (F)

2009年7月 8日 (水)

Bookcover 焼跡のイエス・善財 (講談社文芸文庫) [a]
石川 淳 / 講談社 / 2006-11-11

読了:07/08まで (F)

2009年6月26日 (金)

Bookcover さよなら、愛しい人 [a]
レイモンド・チャンドラー / 早川書房 / 2009-04-15
大ベストセラーどころか社会的事件と化してしまった「1Q84」を読まずに,同時期に出たチャンドラーの訳書のほうをシミジミと読む今日この頃。まあ,「1Q84」は読もうにも手に入らなかったのだが。
 この本は清水俊二訳「さらば愛しき女よ」として長く親しまれてきたのだが,俺は清水訳で読んだときにどうにも違和感があり,面白い小説だけど,なんだかヘンだなあ。。。という感じであった。その理由はふたつあって,ひとつは,事件に鼻を突っ込むうら若き美女アン・リオーダンが,何考えてんだかよくわからん,という点であった。この村上春樹訳で読み直しても,その点は印象が変わらない。物語に花を添える道具的人物というか,なんというか。チャンドラーの小説の魅力は,話の組み立てのこのようないびつさと切り離せないように思う。
 清水訳に感じたもう一つの違和感はごくつまらないことで,冒頭から登場する大男マロイが「大鹿マロイ」と表記されている点であった。大鹿,というのは彼の通り名で,ムース(ヘラジカ)の訳語なのだが,そもそもなんて読むんだかわからない。オオジカ?オオシカ? それに本文中でたびたび「大鹿マロイ」という文字が出てくると,ほんの一瞬だが,「大馬鹿マロイ」と読み間違えてしまうのである。さいわい,この新訳では「ムース・マロイ」と表記されている。時代が変わったんでしょうね。

読了:06/26まで (F)

2009年6月 8日 (月)

Bookcover エル・スール [a]
アデライダ ガルシア=モラレス / インスクリプト / 2009-02
ビクトル・エリセ監督の映画「エル・スール」の原作小説。映画の印象が崩れたらいやだなあ,と心配していたのだが,杞憂であった。映画とは全然別の物語であった。

読了:06/08まで (F)

2009年5月24日 (日)

Bookcover 北東の大地、逃亡の西 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1806) [a]
スコット・ウォルヴン / 早川書房 / 2007-11-08
短編集。どの作品も,舞台はアメリカの荒野で,登場人物は白人のブルーカラーで,どいつもこいつも男臭いアウトローたちで,人生に展望なく,物語はどこまでも苦い,という。。。なかなか面白かったけど,通勤電車には向かない。

読了:05/24まで (F)

2009年4月22日 (水)

Bookcover 故郷 (岩波文庫) [a]
パヴェーゼ / 岩波書店 / 2003-06-14
この短い小説は,何年か前に読みはじめ,途中で挫折した。いったいどういう話なのかわからなくて,途方に暮れてしまったのである。今回最初から読み直し,前に挫折したあたりを通過したところでようやく,なあんだこれは小難しい哲学小説ではないのね,と気がついた。なぜかわからないが,気づかないうちにそういう予断に縛られていた。サスペンス小説だと思っていれば,もっと気楽に読めたのに。
 あとで調べたら,パヴェーゼというイタリアの作家はアメリカ文学の影響を強く受けていて,この作品もジェイムズ・ケインのハードボイルド小説「郵便配達は二度ベルを鳴らす」との類似性が指摘されているのだそうだ。

読了:04/22まで (F)

2009年4月 5日 (日)

Bookcover 警察署長〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) [a]
スチュアート ウッズ / 早川書房 / 1987-03
Bookcover 警察署長〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) [a]
スチュアート ウッズ / 早川書房 / 1987-03
1920年代から60年代までのアメリカ南部の田舎町を舞台にした大河警察小説。原著は81年刊で,話の展開がちょっと古くさいんだけど,警察小説の古典といわれるだけのことはある,面白い小説であった。
 この小説は,邦訳が出たとき(84年)に絶賛する書評をみかけ,以来ずーっと読みたいと思っていたのだが,当時は本を買う金がなかったのである(そりゃそうだ,高校生だもんな)。87年に文庫化されていたようなのだが,気がつかなかった。先日本屋で,復刊された文庫本が平積みされているのをみつけ,なんだかタイムスリップしたような気分になった。ずっと気にしていた本をついに読んでしまったので,なんだか寂しいような気もする。

Bookcover 暗愚なる覇者〈上巻〉―小説・巨大生保 (新潮文庫) [a]
高杉 良 / 新潮社 / 2009-03-28
Bookcover 暗愚なる覇者〈下巻〉―小説・巨大生保 (新潮文庫) [a]
高杉 良 / 新潮社 / 2009-03-28
いちおうはサラリーマンのハシクレとして日々を過ごしているわけだが,なにせ業界参入がつい最近だもんで,基本的な立ち居振る舞いにいまいち自信が持てない。名刺ってどうやって渡すんだ? 敬語ってどのくらい必要なの? こんな事でいいのか,いやだめなんだろうなあ。。。という漠然とした不安が,本屋さんの店先で,時に奇行として火を噴いてしまうのである。自己啓発本買っちゃったり,ベタベタな企業小説を買っちゃったり。
 主人公は巨大生保のエース級社員で,下には人望厚く上には直言を辞さない。ニューヨーク勤務時は,社長の公私混同や幹部たちの隠微な権力闘争を目にし義憤に駆られる(そして社長の愛人と寝る)。下町の支部長に飛ばされ,職員を使い捨てるノルマ営業に怒りを抱きつつ,部下の人心を掌握し奇跡的業績を挙げる(そして成績トップのセールスレディと寝る)。要するに,話の枠組みはマンガ「課長島耕作」と同じである。
 クダラナイ,と切り捨ててはいけないんだろうな。この本のポイントは小説としての良し悪しではなく,小説の形式をとって日本生命の暗部を告発しているというところなのであろう。でも残念ながら,日生の経営がどんなに腐敗していようが,俺は別にどうでもいいです。。。ううむ,やっぱり俺はビジネスマンって柄じゃあないなあ。

読了:04/05まで (F)

2009年2月22日 (日)

Bookcover マイケル・K (ちくま文庫) [a]
J.M. クッツェー / 筑摩書房 / 2006-08
内戦下の南アフリカ,不条理な暴力と苦痛に満ちた世界を,這うように放浪する男の話。読んでいるだけで疲れたが,読み手を離さない強力な小説であった。途中で突然視点が変わって,主人公を診察する医者の一人称になるところが,なんというか,不思議な仕掛けである。

読了:02/22まで (F)

2009年2月11日 (水)

Bookcover 沖で待つ (文春文庫) [a]
絲山 秋子 / 文藝春秋 / 2009-02
表題作は,営業の仕事を通じて培われた同期入社の男女の友情を描いて評判になった短編。いずれ読んでみようと思っているうちに文庫化された。
 企業のなかで仕事に邁進したあの若き日々,というような経験が俺には全くないので,この小説はかえって新鮮であった。おそらく,芥川賞の選考委員の先生方にとっても,世の小説好きの人々の多くにとっても,新鮮だったのではなかろうか(成人の多くがサラリーマンだというのは大いなる錯覚である)。新卒入社で勤続何十年などというホンモノの会社員の皆さんの意見を聞きたいところだ。

読了:02/11まで (F)

2008年12月12日 (金)

Bookcover 暗黒街の女 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
ミーガン アボット / 早川書房 / 2008-11-07
20代から延々と研究に足を突っ込んだあげく,結局なにもできずに民間企業に逃げだして,もうコリゴリだ,余生は社会の隅っこのほうで静かに暮らそうと思っていたのに,どういうわけか学会で発表などする羽目になり,しかもそれがまた悲しいくらいにつまんない内容で...俺はいったいなにをやっているのか,と自問自答する日々であった。
 まあ,それでも隅っこにはちがいないわけだし,そんなに大げさに考える必要はなくて,水がちょろちょろ流れるように,自然に暮らしていればいいや,と自分に言い聞かせるわけだが,それにしても,奇妙な気分ではある。なぜこんなに首尾一貫しない人生になっちゃったんだろう?
 そんなこんなで,11月後半は学会の準備と仕事とでばたばたしていた。そんなに大したことはしていないのに,こんなに慌ててしまうのは,やはり無能の故としか云いようがない。
 とにかく,ようやく一段落ついたことを記念し,宿の布団に寝転がって海外ミステリを読んだ。犯罪組織にとびこんだ若い女性の成長譚。しみじみとした小説であった。

 今回つくづく思ったのだが,営利企業に勤めながら研究に関わるのは,たとえ学会発表レベルとはいえ,結構たいへんな事なのだ(手厚い支援を受けている大企業の人はどうだか知らないが)。みんな,えらいなあ。。。大学のみなさん,民間の人が妙な研究をしていても,あまり馬鹿にしないでくださいまし。
 とはいえ,カイシャの外に出て行けるというのは,それなりに利点もあるようだ。今日社外のセミナーに出ていたら,休み時間に講師の方が,こないだの発表聞いてました,なんて声をかけてくださって,びっくりした。正直なところ顔から火が出る思いだったが,それは発表の内容がしょぼかったからで,もし自分なりに胸を張れるようなものであったなら,また違った気分であっただろう。

Bookcover ワーニャおじさん (岩波文庫) [a]
チェーホフ / 岩波書店 / 2001-09-14
先日読んで感銘を受けた「ワーニャ伯父さん」を,もっと新しい訳で読み直してみた。こちらのほうがはるかにわかりやすかった。やはり,翻訳には賞味期限のようなものがあるんだろうなあ。
 いろいろと新しい発見もあった。こうして読み直してようやく気がついたのだが,ソーニャは結構アホな娘というか,幼い娘なのである。だからこそ,最後に口にする苦い名台詞が胸を打つのだ。

読了:12/12まで (F)

2008年11月16日 (日)

Bookcover かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫) [a]
チェーホフ / 新潮社 / 1967-09-27
「ワーニャ伯父さん」にはやられた。胸打たれる思いとはこのことである。参りました。
感心してばかりでもしかたがないので,あれこれ考えるのだが,時代背景がわからないせいで,細部がいまいち理解できていない。たとえば,ワーニャ伯父さんが妹の旦那に仕送りを続けていたのはなぜなんだろうか。恥ずかしながら,よくわからん。訳を変えてもう一度読んでみようと思う(いかに名訳とはいえ,言い回しが古くてついていけないところがあった)。

 戯曲なので,登場人物を想像上の舞台の上でいちいち動かしながら読むわけだが,ワーニャ伯父さんとしてはなぜか故・藤山寛美を思い浮かべてしまい,なかなか他のイメージを持つことができない。たしか演出家の佐藤信が,藤山寛美にワーニャ伯父さんを演らせたかったという意味のことをどこかで云っていた,それが記憶に残っているからだと思う。どうも変なことを覚えているものだ。

読了:11/16まで (F)

2008年11月 3日 (月)

イヨネスコ戯曲全集 3, 白水社,1969.
図書館で借りて読んだ。「アルマ即興」「無給の殺し屋」「四人ばやし」「二人で狂う」「瀕死の王さま」所収。
大昔にNHKラジオで聞いた,そのまた大昔のラジオドラマの再放送で,夫婦らしき二人が銃火のさなか,崩れゆくアパートできわめて不毛な口論を続ける,という筋立てのドラマがあった。たしか日本の前衛劇作家の作品だったのだけど,いまにして思えば,あれはイヨネスコの「二人で狂う」を下敷きにしていたのかもしれない。いま知っても仕方のないことだが,あのドラマの作者は誰だったのだろう?

→いま調べたら,NHKは73年に「二人で狂う」そのものを,名古屋章の主演でラジオドラマ化しているらしいから,その再放送だったのかも。そういえば,名古屋章だったような気も...記憶はあてにならない。

読了:11/03まで (F)

2008年10月26日 (日)

Bookcover さよなら、日だまり [a]
平田 俊子 / 集英社 / 2007-07
怪しい占い師によって夫婦が崩壊,ドロドロの離婚劇へと至る一人称小説。うーむ,なぜこんな小説を? いったい著者になにがあったのか。

読了:10/26まで (F)

2008年10月13日 (月)

Bookcover チャイルド44 上巻 (新潮文庫) [a]
トム・ロブ スミス / 新潮社 / 2008-08-28
Bookcover チャイルド44 下巻 (新潮文庫) [a]
トム・ロブ スミス / 新潮社 / 2008-08-28
連休ですから,と自分に言い訳し,久々に海外娯楽小説。スターリン時代末期のソ連を舞台にしたサスペンス小説。なるほど,これは面白い。評判になるわけだ。

忙しさにかまけて,読む本といったら気楽なものばかりだ。こんなことではいけないのに。

読了:10/13まで (F)

2008年10月 6日 (月)

Bookcover 観光 (ハヤカワepiブック・プラネット) [a]
ラッタウット・ラープチャルーンサップ / 早川書房 / 2007-02-21
タイ系アメリカ人の若い作家(79年生まれ!)による処女短編集。これは素晴らしい。。。読み手を掴んで離さない力があり,切れ味が良い。表題作と「闘鶏師」が特に良いと思った。これは才能だなあ。

Bookcover 寝ぼけ署長 (新潮文庫) [a]
山本 周五郎 / 新潮社 / 1981-08-27
山周先生の未読の小説。昭和21年発表の娯楽作品。良し悪しをあげつらうのは野暮な話だ。
 最近,なぜかこの文庫が書店で平積みになっていることが多い。経緯はわからないのだが,こういう古い本を掘り起こすというのは面白い試みだと思う。わざわざこの小説を読むこたないだろうという気もするけど,まあ,売れるといいですね。

読了:10/06まで (F)

2008年9月21日 (日)

Bookcover 闇の子供たち (幻冬舎文庫) [a]
梁 石日 / 幻冬舎 / 2004-04

Bookcover リオ―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫) [a]
今野 敏 / 新潮社 / 2007-06-28

Bookcover 震度0 (朝日文庫 よ 15-1) [a]
横山 秀夫 / 朝日新聞出版 / 2008-04-04

読了:09/21まで (F)

2008年9月 7日 (日)

Bookcover 松風の門 (新潮文庫) [a]
山本 周五郎 / 新潮社 / 1973-09-03
先週は会社の仕事そっちのけで(どうもすみません),行動計量学会の大会に通っていた。出張と称して出かけている身の上であまりこういうことをいってはいかんのだが,自分が発表するわけでもない学会で他人の話をふがふがと聞いているのは,むなしいような,それはそれで楽しいような。。。不思議な気分である。
 会場の成蹊大は吉祥寺からバスなので,ためしにwebで探してみたら,バスを待つ目の前の商店街にブックス・ルーエという本屋があることがわかった。出版関係の記事かなにかで目にしたことがある名前で,たしかその筋では有名な店だ。立ち寄ってみたら,一見したところ街のふつうの本屋だが,なるほど気合いが入っていて,棚には隅々まで工夫があるし,コミック売り場に飾ってあるマンガ家の色紙のラインナップたるや,もう錚々たるものである(それだけイベントを開いているということだ)。
 文庫売り場では,「各社の夏のキャンペーン本に店員が全部POPをつけます!がんばります!」という趣旨の企画をやっていた。本屋さんの平台に「××文庫の100冊」が並べられるのは夏の風物詩だが,今時はいろんな版元がその手のキャンペーンをやっているもので,どの本屋でもなんだかメリハリがつかない感じである。そうか,そういう遊び方があるのか,と感心した。
 もっとも,並べられた文庫本のなかにはまだPOPが与えられていないものも多かった。夏も終わりだというのに,大丈夫なのか。樋口一葉「にごりえ・たけくらべ」のPOPが「日本銀行リスペクト!」って,いいのかそんなので。笑っちゃったけどさ。
 見学だけでは悪いので,しばらく前に評判になった小説と,山本周五郎の未読の文庫を手に取った。かつて端から読み漁ったはずの山周に,まだ読んでないのが残っていたのだ。うーん,記憶というのは当てにならない。

Bookcover 閉鎖病棟 (新潮文庫) [a]
帚木 蓬生 / 新潮社 / 1997-04-25
吉祥寺で買ったもう一冊のほうの文庫。てっきりミステリかとおもったのだが,精神病院の長期入院患者の群像を描いた,しみじみとした小説であった。

読了:09/07まで (F)

2008年8月25日 (月)

Bookcover 東京負け犬狂詩曲(ラプソディ) [a]
山崎 マキコ / JTBパブリッシング / 2006-03
二流女性誌の女性ライターを主人公にしたストーリーのなかに,彼女が書いたという設定の,実在の観光スポットの紹介記事を挟み込んだ体裁の小説。いかにも山崎マキコさんらしい,軽い筆致の小説であった。うーん,俺この人のファンなんだけど,ずっとこんなのばかり書いてていいのかなあ,と心配になる。余計なお世話か。

読了:08/25まで (F)

2008年8月17日 (日)

Bookcover フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ) [a]
R.D. ウィングフィールド / 東京創元社 / 2008-07
Bookcover フロスト気質 下 (創元推理文庫 M ウ) [a]
R.D. ウィングフィールド / 東京創元社 / 2008-07
フロストシリーズの4作目。実は著者はもう亡くなっていて,未訳の作品があと2作だそうだ。知らなかった。

Bookcover 父と暮せば (新潮文庫) [a]
井上 ひさし / 新潮社 / 2001-01-30

Bookcover 隠蔽捜査 (新潮文庫) [a]
今野 敏 / 新潮社 / 2008-01-29
毎年八月恒例の「会社の有休とって集中講義」週間が,今年も無事終了した。やっている最中は,なんだかすごく馬鹿なことをしているような気もするのだが(私の夏休みはどこにあるのですか),終わってみると,ああ良い経験だったなあ,と思うのである。いつまでお声を掛けてもらえるか分からないし,今年が最後かなあなどと思うと,感慨もひとしおである。
 というわけで,集中講義終了を記念し,普段は読まないタイプの和製ミステリを手に取った。警察小説と家族小説の合いの子みたいな感じ。なかなか面白かった。主人公がいけ好かない奴であるところが良い。

読了:08/17まで (F)

2008年7月20日 (日)

Bookcover 暗号名サラマンダー [a]
ジャネット・ターナー ホスピタル,古屋 美登里 / 文藝春秋 / 2007-03
何年か前,学会でシドニーの大学に行って,なにかの都合で少し時間を潰さなければならなくなり,学内にあった本屋の棚をくまなく見て回ったら(なにやってんだか),ある作家の短編集が何冊かペイパーバックのシリーズになっていて,装丁がちょっと洒落ていた。名前を聞いたことがない人だったけれど,きっと地元では人気があるのだろうと思って,お土産に一冊買い込み帰りの機内でめくってみたら,まあ英語だからよくわかんないんだけど,とても良い小説であるように思えた。それがJ.Turner HospitalのNorth of nowhere, south of lossという本で,あとで調べてみたら,どうやら邦訳はないようだった。
 で,先日ふとこのオーストラリアの作家のことを思い出して検索してみたら,なんと,去年初の邦訳が出ている。原著はちょうどあの頃新刊だった本で,空港の売店で平積みになっているのをみかけた。
 大変重苦しい純文学的なスリラー小説であった。良い小説ではあるんだけど,売れないだろうなあ。。。なにより,原著刊行が2003年であるというのがショックだ。もう5年になるのか。
 
Bookcover 夜にその名を呼べば (ハヤカワ文庫JA) [a]
佐々木 譲 / 早川書房 / 2008-05-08
ものすごおーく湿っぽーいサスペンス小説。巻末の解説で納得したのだが,これ,下敷きはウイリアム・アイリッシュなんですね。

Bookcover 五辧の椿 (新潮文庫) [a]
山本 周五郎 / 新潮社 / 1964-09-29
というわけで,同じくアイリッシュが元ネタであるこの本もついでに読んでみた。大昔に読んだことがあるはずなのだが(学生時代に山周を端から全部読んだはずなので),良く覚えていないので,一度読み直してみたかった。
にわか周五郎評論家のワタクシにいわせると(なにいってんだか),(1)性衝動に身を灼く女,(2)思うように破滅できない男,(3)アナーキーなまでに純粋な処女,の3タイプが先生の必殺技であり,これらのカードのうち2枚以上を切った小説には決してハズレがない。短編の名作「おさん」は(1)(2),「水たたき」は(2)(3),かの名作「樅の木は残った」には3枚全部出てきますね。この小説は(3)のみで勝負していて,俺は面白いと思うけど,好みが分かれるところであろう。最期に主人公の娘が「ちなみに私は処女ですのでその点誤解のないように」とわざわざ書き残して死ぬところなんか,あまりの偏狭さにかえって胸が痛むが,そんなの小説として貧しいと感じる向きもあろう。

Bookcover バゴンボの嗅ぎタバコ入れ (ハヤカワ文庫SF) [a]
カート ヴォネガット / 早川書房 / 2007-09

読了:07/20まで (F)

2008年6月29日 (日)

Bookcover赤い諜報員[a]
太田 尚樹 / 講談社 / 2007-11
ゾルゲ,尾崎秀実,アグネス・スメドレーが活躍する講談調小説であった。著者は学者さんだから史実には正確なのかも知れないけど,小説としては,ちょっと。。。

読了:06/29まで (F)

2008年6月 3日 (火)

Bookcover 吉野弘詩集 (現代詩文庫 第 1期12) [a]
吉野 弘 / 思潮社 / 1968-08
しばらく前からめくっていた本。付録の作家論は面倒だからパスして,読了にしておく。
 たとえばこんな詩がある。永年勤続を表彰される従業員が,式典のさなかに突然叫ぶ。「諸君/魂のはなしをしましょう/魂の話を!/なんという長い間/ぼくらは魂の話をしなかったんだろう」
 上のようなくだりに出会うと,この従業員はそれでも,仲間たちに向かって叫ぶことができたんだなあ,と思う。あるいは,同じ職場で何十年も顔をあわせるであろう同僚たちの倦怠や,首切案が出た朝の事務所の変わらぬ談笑や,挫折したストについて,この詩人は語ることができたのだなあ,と思う。それらはみな終身雇用制が生んだ詩なのだ。
 この詩人の作品は少しも古びていないけれども,それとはまた別に,連帯などということばがほとんど意味を持たなくなってしまった世界を,砂のように形を変えて流れていく人々についての詩,俺についての詩があってもいいはずだ,と思う。

Bookcover 白の闇 新装版 [a]
ジョゼ・サラマーゴ / 日本放送出版協会 / 2008-05-30

読了:06/03まで (F)

2008年5月29日 (木)

Bookcover 二十一の短編 ハヤカワepi文庫 [a]
グレアム・グリーン / 早川書房 / 2005-06-09
短編「地下室」(映画「落ちた偶像」の原作)の読み応えの重さといったら,もう。。。グリーン畏るべし。

Bookcover 終わりの街の終わり [a]
ケヴィン ブロックマイヤー / 武田ランダムハウスジャパン / 2008-04-24
村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を思わせる空想小説。一方では人類は滅亡し,南極にひとり生き残った女が仲間を捜して闘い,他方には死者の街があって,死んでしまった人々が平和に暮らしている。面白いけど,なんというか,脂っ気のない小説であった。

読了:05/29まで (F)

2008年5月19日 (月)

Bookcover 寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174) [a]
ジョン・ル・カレ / 早川書房 / 1978-05
Bookcover ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ (ハヤカワ文庫NV) [a]
ジョン ル・カレ / 早川書房 / 2006-05
どちらもスパイ小説の歴史的名作。恥ずかしながら未読であった。

読了:05/19まで (F)

2008年5月12日 (月)

Bookcover 影の護衛 (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
ギャビン ライアル / 早川書房 / 1993-06
連休明けの会社勤めと非常勤をなんとか乗り切って週末にこぎ着け,あとは好きな小説でもめくりながら寝て過ごそうと溜息をつき,既読本の本棚から文庫本を引き抜いて布団に潜り込んだ。ギャビン・ライアルの冒険小説は手垢がつくほど読み返しているが,ライアルが五十歳近くになって書き始めた「マクシム少佐」シリーズだけはなぜか縁遠く,一読したがあまり印象がない。読み返すにはよい機会である。
 パラパラとめくりはじめたところ,これが意外に面白い。まるではじめて読むような面白さ。というか,読んだ覚えがまったくない。何頁読んでもまったく思い出せない。だんだん嫌な冷や汗が出てきた。
 結局,一箇所たりとも既読感を感じないままに読み終えた。加齢と共に減退するのは作業記憶であって長期記憶ではないと誰かが云っていたが,実に怪しいものだ。

Bookcover 八百万の死にざま (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
ローレンス ブロック / 早川書房 / 1988-10
ライアルの一件のせいでなんだか目の前が薄暗くなるような気分になったので,絶対に未読だと断言できる娯楽小説を買ってきた。前から一度読んでみたかったのである。
 NYの探偵スカダーは,魅力的な娼婦から依頼を受けてヒモに会いに行くが。。。その娼婦が惨殺され,スカダーは乏しい手がかりを追って同僚の娼婦たちを訪ね歩き。。。と同時に,酒の誘惑と戦いAAに参加しアルコール依存について葛藤し。。。会話や新聞記事で示される都市の荒廃と虚無。。。物語はある種の大団円を迎え,スカダーは真の転機を迎える。
 この小説に限って,読んだことはなかったはずだ,と思う。これは探偵小説の古典的名作,ハムレットみたいなものだから,未読の俺でさえ,ある程度のあらすじは知っていたという可能性もある。しかし,この強い既視感はなんだろうか? こんなに細かいところまで,ずっと昔に読んだような,なじみ深い感じがするのはなぜだろうか? だんだん嫌な冷や汗が出てくる。

 なにかの拍子に,潮時だ,あきらめろ,もう潮時だ,という小さな声が聞こえるような気がして,はっと凍り付くことがあるのだけれど,それはたぶん自分の声なのだろう。いったい何の潮時だかわからないが,うん,そうだね,潮時だね,という気もする。ときどき俺は,自分の頭蓋骨を開けて脳を適宜取り出して冷たく澄んだ川に流し,蓋を元通りに閉め,残り時間をよだれを垂らしながら布団で眠りこけたい,と思うことがある。

読了:05/12まで (F)

2008年5月 6日 (火)

Bookcover 池端俊策ベストシナリオセレクション1 [a]
池端 俊策 / 三一書房 / 1997-12-01
収録された脚本のひとつ,「百年の男」(1995,NHK)はこんな話だ。さびれた商店街で一人暮らす60歳の理容店主が癌を疑われ,借金している不動産屋に押し切られて,自宅に下宿人を入れる羽目になる。台所もトイレも共用,高額の家賃を取るが,店主が死んだら土地も家も譲り渡す,という契約だ。若い夫婦がこの条件に応じて入居してくるが,突然の共同生活には店主も夫婦もなかなかなじめない。夫婦の仲はこじれ,夫は浮気相手の元へ出奔する。うなだれる若い妻と老いた店主のあいだに信頼が芽生える。精密検査の結果,癌ではないことがわかるのだが,店主はそれを言い出せないまま,妻に連れられて夫の浮気相手のアパートに乗り込むことになる。逆ギレした夫が「お前,本当にあの家が俺たちの物になるとおもってんのか」と叫ぶ。「本当にそのおっさんが死ぬと思うか? 末期癌だと思うか? そんな人間がこんな所までノコノコ来るか?」。。。ここまでが前半部分。
 かつて池端俊策さんは俺にとってのアイドルで,シナリオ雑誌のバックナンバーからこの人の脚本を探し集め,コピーしては繰り返し読んだものであった。そのときは,台詞の面白さ,そこに現れる人間像の深さ,暗示的表現の豊かさをひたすら畏れ敬っていたのだけれど,この度久々に読み返してみて,そもそもプロットがとてもしっかりしているのだと痛感した。上記のあらすじだけでも,これが面白くならないわけがない,という気がする。

 池端俊策のTVドラマは国内外の賞を取りまくり,こうしてシナリオ集まで出版されているし,ビートたけし主演の何本かはビデオ化されている。とても幸せな脚本家だが,それにしても,たとえば「百年の男」をいま観るのはなかなか難しいと思う。テレビってのは切ないメディアだ。

Bookcover 世の中へ・乳の匂い 加能作次郎作品集 (講談社文芸文庫) [a]
加能 作次郎 / 講談社 / 2007-01-11
加能作次郎という名前すら知らなかったが(なぜ買ったんだっけ?),大正年間に活躍した自然主義作家だそうだ。そういわれるとなんだか古めかしく聞こえるが,代表作だという「世の中へ」「乳の匂い」は,どちらも瑞々しく魅力的な小説であった。

読了:05/06まで (F)

2008年4月29日 (火)

Bookcover Fine days―恋愛小説 [a]
本多 孝好 / 祥伝社 / 2003-03
短編集。いわゆる青春ミステリで,ちょっとホラーの要素がある。普段読まないタイプの小説なのだけれど,文体のハードルを乗り越えてしまえば(誰もが平然と気のきいた会話をするのはなぜだ),なかなか面白く読めた。よく考えてみるとかなり甘ったるい話ばかりなのだけれど,サラッとしていて嫌味がない。
 この本は会社の同僚にもらった。好みを見抜かれているなあ。

読了:04/29まで (F)

2008年4月28日 (月)

Bookcover カリフォルニア・ガール (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 21-4) [a]
T.ジェファーソン・パーカー / 早川書房 / 2008-03-07
「サイレント・ジョー」で大評判となった作家の,その次の作品。さすがに読ませる。

読了:04/28まで (F)

2008年4月20日 (日)

Bookcover 失格社員 (新潮文庫) [a]
江上 剛 / 新潮社 / 2007-03-28
疲れたお父さん向けの小説であった。失敗した。

読了:04/20まで (F)

2008年4月 6日 (日)

Bookcover 歌わせたい男たち [a]
永井 愛 / 而立書房 / 2008-03
卒業式での国歌強制を題材にした喜劇。この本を買うときカウンターに著者がいて,頼めばサインして握手してもらうことができたのだが,人々の生活のなかの葛藤を透徹した目で描き出すあの劇作家が,いま目の前にいるかと思うと,怖ろしくて近寄れなかった。

Bookcover ホット・キッド (小学館文庫) [a]
エルモア レナード / 小学館 / 2008-01-07
2005年,レナード79歳の新作。あああのレナード先生が帰ってきた,と思わせる傑作であった。化け物だなあ。

読了:04/06まで (F)

2008年3月 9日 (日)

Bookcover ドリーミング・オブ・ホーム&マザー [a]
打海 文三 / 光文社 / 2008-02-21
昨年急逝した打海文三さんが,ブログで連載していた小説。

読了:03/09まで (F)

2008年3月 2日 (日)

Bookcover 見よ、飛行機の高く飛べるを [a]
永井 愛 / 而立書房 / 1998-10
明治の女子師範学校を舞台に,女学生たちの青春の一断面を描いた戯曲。
 近所に演劇科のある学校があって,ときどきそこの学生さんたちが公演をやっている。客席を埋めているのは父兄や友人や商店街の人々やらで,そののんびりした雰囲気がなかなかよい。どの子も概して下手なのだが,なにしろ二十歳かそこらの娘さんたちなので,よしよしがんばってね,などと暖かい目で見てしまう。やれやれ,年をとったなあ。そもそも「どの子も」と書いてしまう段階で非常におじさんくさい。
 先日は永井愛のこの作品を演っていて,夕飯のついでに見に行ったのだが,これが意外にも(と,いっては失礼だが)大変に面白い芝居で,感銘を受けた。ストライキを企て挫折する下級生を演じた人の好演もあったのだが,これはやはり戯曲の力だろうと思い,単行本を手に入れて余韻に浸っている次第である。
 読み返してみるとこれは奇妙な仕組みの話で,賢くて人望があって美しい娘がヒロインなのだが,終わってみると強く心に残るのは,変わり者の下級生のほうである。終盤で焦点が入れ替わってしまう。不思議だなあ。あとがきによれば,この物語は著者の祖母と市川房枝の交流から着想を得た由である。
 女学生たちを抑圧する側の大人として,何人かの男性の教師が登場するのだが,どの男もそれぞれの葛藤や鬱屈を抱えている。彼らの浅ましさやせせこましさやいい加減さは,そのまま俺の姿でもある。学生さんたちの舞台では,教師たちは思い切りヒステリックだったり情けなかったり,完全に戯画化された姿で登場し笑いを誘っていた。ああいうところが,若さの持つ残酷さだなあ,と思う。

Bookcover ビッグ・タウン (ハヤカワ ポケット ミステリ) [a]
ダグ・J. スワンソン / 早川書房 / 1996-02
ダラスを舞台にした犯罪小説。前半はちょっとロス・トーマスのようで,会話が生き生きとしていて面白かったが,途中でちょっと失速する感じだ。

読了:03/02まで (F)

2008年2月24日 (日)

Bookcover チェーホフ・ユモレスカ [a]
アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ / 新潮社 / 2006-07-28

読了:02/24まで (F)

2008年2月19日 (火)

Bookcover ヤクザ、わが兄弟 [a]
ヤコブ・ラズ / 作品社 / 2007-12-01
「ヤクザの文化人類学」という本がある。イスラエル人の文化人類学者がテキヤの組織に深く入り込んで行ったフィールドワークをまとめた,大変に面白い本だが,ひょっとするとヤクザの世界に関心がある人にとってはつまらないかもしれない。この本の面白さは,扱っている題材というより,それを通して日本を透視する視点の置き方や,参与観察者の立場の難しさを巡る内省にあると思う。いま手元にある岩波現代文庫版をぱらぱらめくってみると,何年か前に読んだとき,こんな一節に感銘を受けたのを思い出す。
 「ひるがえってヤクザに関する私の研究について考えてみると,『他者の他者』と対話することが私自身の主要な目的であったと認めざるをえない。言い換えれば,私はヤクザと対話をしたかったのであり,ある意味では『研究』は目的というよりはそのための手段でもあったのだ。その意味では科学は道具であり,『調査研究者』はただの役にすぎず,科学的用語はこの対話の背景用の語彙にすぎない。通常は日本の裏側,影の面とされるものを研究するように私を駆り立てたのは,日本の文化を,またそれを通して私自身の文化を理解する可能性を広げ,それによってディスクールの世界全体を拡大したいという願いだった。」
 。。。うーん,格好良いですね。
 その文化人類学者の先生がこんどは小説を書いたと知り,前著もちょっとパセティックな文章だったから,さもありなん,と思った。早速読んでみたところ,内容は「ヤクザの文化人類学」とかなり重なっていて,主人公の学者ヤコブ・ラズが私淑する大川親分のモデルは著者のインフォーマントであった関東神農同志会のA親分,詩を愛するヤクザ・ユキの原型は巣鴨の屋台の主人ベンであろうと推測できる。
 意外なほどに読ませる小説なので驚いた。学者の手すさびとはとても思えない。なんといっても,異邦人の目からみたヤクザ世界のディテールが面白いし,心情描写を排した乾いた文体も良い。ひょっとすると,翻訳がすごく良いのかも知れない。これ,ハヤカワミステリ文庫にでも入れれば,きっと売れると思うんだけどなあ。。。

読了:02/19まで (F)

2008年2月 3日 (日)

Bookcover 愚者と愚者 (上) 野蛮な飢えた神々の叛乱 [a]
打海 文三 / 角川書店 / 2006-09-26
Bookcover 愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ [a]
打海 文三 / 角川書店 / 2006-09-26
「裸者と裸者」の続編。残念だけど,前作のほうが出来が良いと思った。著者は三部作を構想していたのだそうだ。
Bookcover 床下仙人 (祥伝社文庫) [a]
原 宏一 / 祥伝社 / 2001-01
昔の赤川次郎みたいな感じの短編集。ふうん。。。

読了:02/03まで (F)

2008年1月27日 (日)

Bookcover 裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争 (角川文庫) [a]
打海 文三 / 角川書店 / 2007-12
Bookcover 裸者と裸者〈下〉邪悪な許しがたい異端の (角川文庫) [a]
打海 文三 / 角川書店 / 2007-12
先日急逝した作家による,2004年刊の長編。
舞台は内乱下にある日本。孤児となった8歳の少年が凄まじい暴力と混乱のなかを生き延びていく,というのが前半。14歳の双子の姉妹が武装した少女たちを率いて闘う,というのが後半。京王線の稲田堤あたりから多摩センター近辺までが武装勢力が割拠する日本最大のスラムと化しており,永山駅前の大学病院あたりが不気味な排外的宗教団体の本拠地になっているという設定である。
評判通り,これは前作の「ハルビン・カフェ」に匹敵する,大変に面白い小説であった。巻末の解説で北上次郎さんが書いているとおり,ある意味では爽やかな成長小説である。極めて陰惨で救いのない暴力描写は,爽やかな成長譚を可能にするための仕掛けだと捉えるべきだと思う。
と同時に,なぜこれだけの作家がマイナーなまま世を去ることになってしまったのか,なんとなくわかるような気がした。たとえば後半の主役である双子姉妹は,個々人のアイデンティティがはっきりしておらず,常に「姉妹」としてのみ扱われる。不気味で面白い設定だけど,この主役に感情移入するのは難しい。

読了:01/27まで (F)

2008年1月13日 (日)

Bookcover みなさん、さようなら [a]
久保寺 健彦 / 幻冬舎 / 2007-11
久しぶりに面白い小説を読んだ。
 都営団地で生まれ育ち,小学校を卒業以来,団地の外に一歩も足を踏み出さずに成長していく青年を描いた青春小説。いわゆるひきこもりとは異なり,彼はひとりで読書しひとりで身体を鍛え,団地のケーキ屋に弟子入りし手に職をつけ,なんと素敵な恋人までつくってしまう。一種の奇妙なファンタジーだが,それ故にその後の失望も苦い。なにしろ,都営団地は高齢化が進み,次第に寂れていくのである。
 読み終えて思うに,これは上手い小説とは言い難い。母親とのエピソードはもっと伏線を引いておけばいいのにと思うし,最後にとんでもない悪人が現れるあたりもちょっと都合が良すぎる。それでも,こうやって力尽くで最後まで書き上げるということが大事なのだろう。うーん,すごいなあ。
 この小説の美点は,紆余曲折あっても最後まで緊張感が失われないところだと思う。素人考えだが,物語そのものが団地に限定されているという極端な閉鎖性がミソなのではないだろうか。高校生の頃に大岡昇平の「野火」を読んで,戦争だろうがなんだろうが,とにかく閉じられた空間から人物も読者も出られないという状況をつくってやれば,それだけでちょっとした小説が書けちゃうんじゃないかしらん,と思ったのを思い出した。

Bookcover 殉教・微笑 (講談社文芸文庫) [a]
小島 信夫 / 講談社 / 1993-12-03
これは昨年ほぼ読み終えていた本。短編「アメリカン・スクール」を読んでいないのだが,整理がつかないので読了にしておく。
 「アメリカン・スクール」は,敗戦国日本の英語教師たちがアメリカン・スクールを見学にいく,その卑屈にも屈折した姿をコミカルに描いた傑作である。俺は中学校の図書室でこれを読み(なんでこんな小説を読んだのかよくわからないが),登場人物たちの姿の恥ずかしさにひとり身もだえしたのを覚えている。この恥ずかしさは尋常ではありません。極東の島国に生きる我々の本質に関わる恥ずかしさである。以来二十数年のあいだ,英語で困った目に遭うたびに,俺はよくこの小説を思い出した。
 で,久々に読み返そうと試みたところ,数頁読んだだけで,もう恥ずかしくて恥ずかしくて恥ずかしくて。。。主人公が英語で話しかけられるのを避けたいあまり,いきなり弁当を食べ始めちゃう,というあたりで涙目になって挫折した。外資系企業で日常的に悲惨で滑稽な姿をさらしている俺を鏡でみているような,あ行の音に濁点をつけて絶叫したいような気分である。

読了:01/13まで (F)

2007年12月22日 (土)

Bookcover エニグマ奇襲指令 (ハヤカワ文庫 NV 234) [a]
マイケル・バー・ゾウハー / 早川書房 / 1980-09
帯で丸谷才一が褒めていたので,つい買ってしまった。77年のスパイ冒険小説。ナチスのV2ロケット完成に危機感を抱いた英情報部は,変装の達人である伝説的大泥棒を獄から放ちパリに潜入させ,独軍のエニグマ暗号機を盗み出させようとするが...その敵役の独軍将校は文化を愛する好漢で,復讐のため陰謀に身を投じたユダヤ人美女への愛に苦悩し...とかなんとかそういう感じ。最後にアッと驚けといわんばかりのどんでん返しがあるところも含め,なんというか,クラシカルな娯楽小説であった。
 こういう小説は,小金持ちが居心地のよい居間のソファーでブランデーグラス片手に読むと似合うんじゃないかと思う。貧乏人が人混みに揉まれながら吊革にぶら下がって読む本ではないね。だんだん馬鹿馬鹿しくなってくる。

読了:11/22まで (F)

2007年10月28日 (日)

Bookcover 波紋 (岩波少年文庫 (512)) [a]
ルイーゼ・リンザー / 岩波書店 / 2000-06-16
書き手が少女時代の記憶を辿る,という形式の短編集。冒頭の「僧院」「百合」の二編に衝撃を受け,続きを読む気になれず放置していた。この硬質で鋭い情景描写には,感想の言葉も失ってしまう。これはすごいです。
 気持ちを落ち着けて再挑戦したところ,後半に至ってだんだん親しみやすくなってくるのだが,今度は背後にあるキリスト教文化のぶ厚い地層に阻まれて,ちょっとついていけなくなってしまった。女学校の生活を描いた辺り,おまえらは少女漫画の主人公か,なんて突っ込んでしまったりして。すみません,どうやら心が汚れているようです。
 著者のルイーゼ・リンザーはドイツの高名な作家で,1940年刊のこの本でデビューしたのだそうだ。あとがきによれば,まったく無名の著者に対して,ヘッセがわざわざ賞賛の手紙をよこしたそうである。やるねヘルマン,目が高い。

読了:10/28まで (F)

2007年10月21日 (日)

Bookcover 君たちに明日はない (新潮文庫) [a]
垣根 涼介 / 新潮社 / 2007-09-28
ここんところいろいろしんどいことが多いので,気晴らしに手に取った。リストラを題材にした会社員小説。この著者の本ははじめて読んだのだが,話の進め方や会話の描写が実に手馴れていて,きっと他の本もハズレがないだろうな,という感じである。

 言い寄ってきた年下の男にちょっぴり心揺らいでいるキャリアウーマンが,きっとこいつの車はスポーツカーだろうなあ,なんて密かに品定めしていたら,実際にはダイハツのナントカという変わった車で,ちょっと意表をつかれて。。。とか。あるいは,待ち合わせ場所に歩いてくる相手の服装をチェックし,男の性格についてあれこれ考えるあたりとか。
 小説でこういう描写にさしかかるたびに,世の中の人はこういうことを考えて暮らしているのか,きっと彼ら・彼女らからみれば俺はさぞやマヌケなアホなんだろうなあ,と感じ入る。誰がどんな車に乗っていたって俺には全然区別できないし(あ,ハンドルが右ですね,外車ですか。ってなもんだ),相手がどんなおしゃれをしていようが,悪いけど俺には全く弁別できない。ふとした立ち居振る舞いや口調に隠された情報を人々が敏感に捉えているとき,俺は「ここにいる全員が一斉に屁をこいたら引火して危険かなあ」などと考えているのである(実際俺はそういうことで始終考え込む)。この小説でいえば,対人スキルゼロ,ひたすら開発中の製品のことだけ考えているおもちゃメーカーの技術者が出てくるが,俺はかなり彼に近いと思う。おかしいなあ,いったいどうしてこんなことに。。。

読了:10/21まで (F)

2007年10月 9日 (火)

Bookcover マダム・エドワルダ/目玉の話 (光文社古典新訳文庫) [a]
バタイユ / 光文社 / 2006-09-07
さんざっぱら乱交を繰り広げたあげく,主人公が草の上に寝転がって夜空を見上げると「銀河には,星の精子が点々と穿たれ,天の尿が流れて奇妙な模様を作り」「天の頂上に開いたこの裂け目はアンモニアの靄で出来ているように見え」云々。なに考えてんだこのフランス人は。

Bookcover ボストン・シャドウ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 281-2)) [a]
ウィリアム・ランデイ / 早川書房 / 2007-08-24
久々の海外ミステリ。60年代ボストンに警官と検事と空き巣の三兄弟がいて,連続殺人犯を追ったり父の死の謎を追ったりギャングに追われたり母の再婚相手と喧嘩したりする。前作「ボストン,沈黙の街」よりも面白かった。

読了:10/09まで (F)

2007年10月 7日 (日)

Bookcover 樹影譚 (文春文庫) [a]
丸谷 才一 / 文藝春秋 / 1991-07-10
表題作ほか2編を収録。
 「樹影譚」はとても面白い小説で,読み終えてあまりの鮮やかさに呆れ,もういちど読み直した。難しくいうとメタフィクションってんですかね,そういう技巧を凝らした構成なのだが,俺はむしろ,良くできた落語みたいな話だと思った。主人公の作家が足下を攫われて混沌に落ち込んでいく,その落ちに持っていくために,すでにマクラからして計算されているのである。

Bookcover パンドラ・アイランド〈上〉 (徳間文庫) [a]
大沢 在昌 / 徳間書店 / 2007-10
Bookcover パンドラ・アイランド 下 (徳間文庫 お 2-9) [a]
大沢 在昌 / 徳間書店 / 2007-10
この小説はゲームに似ている。よく知らないけど,画面の下に文字が出てきて,ときどき選択肢が出てくる奴。「私は一匹狼の元刑事だ。このたび離島に保安官として赴任した」→クリック→「海辺を酔っぱらった老人が歩いている」→話しかけるをクリック→『お前は島の財産を狙っておるのか』→クリック→「老人はなにを云おうとしているのだろうか?」→ホテルに戻るをクリック→初日終了,という感じ。主人公が受け身で,回想場面がなくて,人物設定が平板だから,こういうことになるのだろう。連載されたメディアの特性に影響されているのかもしれない(スポーツ紙連載)。でもその限りにおいては面白いし,良質な娯楽小説だと思う。

 大学から足を洗って2年半になるが,ここのところ立て続けに,かつてお世話になった人たちに会う機会があった。奇妙なもので,そういうことがあるたびに,なんだか精神的に混乱してしまい,立ち直るのに時間がかかる。俺はいったいどこにいて何をしておるのか,と途方に暮れてしまう。
 そんなことがあった帰り,本屋でなるべく肩の凝らなそうな文庫本を探し,大沢在昌のなるべく長い小説を選んで,喫茶店で一気読みした。そういうときにうまいこと面白い小説に当たるのは,人生の救いといえるだろう。世の中の小説がみんなドストエフスキーでは困る,ということが,最近だんだんわかってきた。

読了:10/11 (F)

2007年10月 5日 (金)

Bookcover シッダールタ [a]
ヘルマン ヘッセ / 草思社 / 2006-01
これは先月中頃の休みの日に読んだ本。

読了:10/05まで (F)

2007年9月12日 (水)

Bookcover 夷狄を待ちながら (集英社文庫) [a]
J.M. クッツェー / 集英社 / 2003-12
「ノーベル文学賞作品」という触れ込みを聞くと,さぞや晦渋な小説だろうと腰が引けてしまうが,この本は面白かった。架空の帝国の,辺境の役人の話。

Bookcover 四つの雨 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 21-1) [a]
ロバート・ウォード / 早川書房 / 2007-08-25
人生に敗れた貧乏カウンセラーが,まさかの恋愛によって突如意気盛んになり,一攫千金を狙ったらこれがうまくいかなくて。。。という,悲哀あふれる犯罪小説。著者はTVドラマ史上に残る名作「ヒル・ストリート・ブルース」の脚本家だったのだそうで,なるほど,飽きさせないわけだなあ,と感心した。
 しかし,人生の夢敗れたインテリおやじの話だというだけで,"情けない男小説"の最高傑作「長い雨」と比較してしまって,ちょっと点が辛くなってしまう。こっちのほうが巧い小説ではあるんだけど。。。うーん。
 主人公はかつては社会変革を夢見る闘士で。。。というあたり,なんだか陳腐な感じがしてしまうのだが,それは俺が勝手に全共闘世代のイメージを重ねているからで,もしかするとあっちの68年世代のイメージは日本のそれとは違うのかも。よくわからん。

読了:09/12まで (F)

2007年8月11日 (土)

Bookcover 図書館員〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
ラリー バインハート / 早川書房 / 2007-05
Bookcover 図書館員〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
ラリー バインハート / 早川書房 / 2007-05
いろいろあって気分転換の必要に迫られ,頭を使わずに読めそうな小説を厳選して買い,一晩で読み終えた。平凡な図書館員がひょんな事から命を狙われる,という巻き込まれ型サスペンス。悪役のスコット大統領は政財界の黒いネットワークに支えられた邪悪なアホで,民主党の心正しき女性候補を倒し再選を勝ち取るため卑劣な陰謀を巡らし(選挙妨害のためフロリダで人種暴動を引き起こす,とか),その手先であるところの秘密工作員たちは性的異常者だったり殺人狂だったりする,という。。。身も蓋もない風刺小説であった。どうなんですかね,これ。

読了:08/11 (F)

2007年8月 9日 (木)

Bookcover 夜明けのフロスト (光文社文庫) [a]
R・D・ウィングフィールド / 光文社 / 2005-12-08
ミステリのアンソロジーだが,後半1/3は,あのフロスト警部シリーズの中編。他の短編も,E.D.ホック,N.ピカード,R.ヒルといった有名どころなんだけど,やっぱりフロストは段違いに面白い。

読了:08/09 (F)

2007年8月 5日 (日)

Bookcover 紳士同盟 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
ジョン ボーランド / 早川書房 / 2006-06-15
久々の犯罪小説。1958年の作品だそうだ。有名な映画の原作だが,正直いって,小説としてはあまりぱっとしないと思った。

読了:08/05 (F)

2007年7月18日 (水)

Bookcover 賭博者 (新潮文庫) [a]
ドストエフスキー / 新潮社 / 1969-02-22
ここのところの通勤本。ロシアから祖母がやってくるあたりから,俄然面白くなった。月並みな感想かもしれないけれど,ギャンブルが嫌いな俺のような人間にさえ,主人公の破滅的な性向の一端が自分のどこかにも潜んでいるように思えて,おそろしくなる。

読了:07/18まで (F)

2007年7月15日 (日)

Bookcover 続・吉野弘詩集 (現代詩文庫) [a]
吉野 弘 / 思潮社 / 1994-04
息抜きにゆっくりと読んでいるはずなのに,いつのまにかいつものように,ざっと目を通して要点をつかむような読み方になってしまう。詩集を読むのは難しいなあ。

読了:07/15 (F)

2007年7月11日 (水)

Bookcover 恥辱 (ハヤカワepi文庫) [a]
J.M. クッツェー / 早川書房 / 2007-07
ここんところ無闇に忙しかったので,その反動もあって,いろんな人に無理を押しつけ時間を空けて,IMPS2007(国際計量心理学会)を見に行った。以前なら行かなかった学会だが,なにより,知り合いの一人もいない場所で,単に人の話をフガフガと聴いているだけというのが,もう楽しくて仕方がない。意外な講演が大変勉強になったりするし(今日はrandomized response法の話とMillsapの講演が面白かった),偉い人も拝めるし (動いているBollenを見てしまった)。
 きちんとオーガナイズされたビジネス系のセミナーと違い,発表取消のせいで突然空き時間ができたりしちゃうのも,いまとなっては新鮮である。というわけで,会場の横の本屋でこの文庫本を買って時間を潰した。
 老年期手前の英文学の先生が,教え子に手をつけてクビになる,というところまでで1/4くらい。その後,なぜか田舎でひとり農婦ぐらしをしているレズビアンの娘のもとに転がり込み。。。という辺りから,俄然話が深くなる。帰宅する電車で読みふけり,夕飯と共に読了。重い重い小説であった。
 今日最後の講演を聴きながら,ああこのホールにいる世界各地の先生方のなかにも,女子大生との情事でエライ目に遭っている人がいたりするかもなあ,などとふと空想し,実に感興深かった(ちょうどその辺まで読んだところだったのである)。まあそれも人生ですよね。

読了:07/11まで (F)

2007年7月 9日 (月)

Bookcover ソーントン・ワイルダー〈1〉わが町 (ハヤカワ演劇文庫) [a]
ソーントン ワイルダー / 早川書房 / 2007-05-24
「わが町」ってあれね,市民劇団なんかでよくやるやつね,という程度の知識しかなくて,きっと古き良きアメリカを描いた心温まる名作なんだろうなあ,ちょっと面倒だなあ,でもまあこれも後学のためだ,と思いながら手に取ったのである。(なんだろう後学って)
 朝の電車で読み始めたら止まらなくなって,乗換駅で電車が来るのが恨めしいほどであった。昼に読み,帰りに読み直し,今日一日で二度読んだ。ごく単純なつくりの,背筋も凍るくらいに硬質な,一言たりとも無駄のない戯曲であった。完全に打ちのめされた。「もう許してください」級の傑作。

読了:07/09 (NF)

2007年7月 1日 (日)

Bookcover テロル (ハヤカワepiブック・プラネット) [a]
ヤスミナ・カドラ / 早川書房 / 2007-03-23
幸せに暮らしていたはずなのに,突然妻が自爆テロを起こし,絶望と混乱にたたき落とされるアラブ系イスラエル人の医師の話。良い小説であった。
 後半で主人公は妻の死の真相を求めて危険地帯をさまようのだが,監禁されたり暴行されたり場面をもっと膨らませ,手に汗握らせることができるだろうに,驚くほどそっけなく片づけてしまう。冒険小説ではないのである。そうか,こういう書き方もあるんだなあ。

読了:07/01まで (F)

2007年6月24日 (日)

Bookcover 緋色の迷宮 (文春文庫) [a]
トマス・H. クック / 文藝春秋 / 2006-09
風呂で一気読み。トマス・クックだから覚悟はしてたけど,やはり暗い話であった。

読了:06/24まで (F)

2007年6月12日 (火)

Bookcover 湖中の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
レイモンド チャンドラー / 早川書房 / 1986-05
切れ切れに読んでいたので,途中で筋を見失ってしまった。。。
Bookcover 市民ヴィンス (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
ジェス ウォルター / 早川書房 / 2006-12
犯罪者としての過去は捨てたが,まともな市民にもなりきれないドーナツ屋の店主が,ひょんなことから命を狙われて。。。という筋なのだが,この主人公が新たな人生を掴もうとあがくその象徴が,なんと,大統領選挙に関心を持つことなのである。クライマックスは「俺を殺す前にひとつ頼みがある,投票に行ってみたいんだ」という場面である。なんと斬新なアイデアだろうか。いやあ,面白かった。

読了:06/12まで (F)

2007年6月 3日 (日)

Bookcover 男子の本懐 (新潮文庫) [a]
城山 三郎 / 新潮社 / 1983-11
城山三郎の経済小説なんて,「課長の愛読書」というイメージで,普段なら手に取る気にならないのだが,浜口雄幸についてはちょっと関心があった。東京駅の新幹線中央口を出たところに,浜口首相狙撃現場という銘板があるのが気になっていたのである。
 風呂の中で一気読み。良い小説だと思ったが,浜口らが命を賭けた超緊縮財政は,後世からみて正しいのかどうか。よくわからん。
 浜口と肝胆照らした蔵相・井上準之助は,東洋文庫設立の立役者である由。へえー。

Bookcover 渡世 [a]
荒川 洋治 / 筑摩書房 / 1997-07

読了:06/03まで (F)

2007年5月21日 (月)

Bookcover もぐら随筆 (講談社文芸文庫) [a]
川崎 長太郎 / 講談社 / 2006-06-10
小田原の駅前にある本屋で,しばらくためらった末に意を決してレジに向かい,お釣りをもらいながら,つかぬことを伺いますが。。。と切り出した。小田原出身の作家に川崎長太郎という人がいるのですが,その人の小説のなかに本屋さんが出てくるのです。なにかご存じありませんか。
 店主らしい初老の男性が,ああ,それはうちのことでしょう,と事も無げに答えてくれたので,かえって驚いた。当時は店は別のところにあったんだけど,長太郎さんは競馬の帰りによく寄ってくれた。人から借りた金で馬券を買うとよく当たる,と笑っていた。先日十三回忌があって,関係者でだるまや(川崎長太郎が通っていた店)に集まって,みんなでチラシ丼を食べましたよ。若いのに長太郎さんを読んでくれるなんて,うれしいですね。 
 あまり長く話を聞くわけにもいかなかったし,俺の知識といえば短編集を数冊読んだだけで,深く掘り下げて尋ねるほどにこの作家について詳しいわけでもなかった。レジに他の客が来たのを潮に,会釈して店を出た。
 その本屋にはそれまでも何度か立ち寄ったことがあった。登山鉄道で少し登ったところに学校があって,そこで仕事だか勉強だかをさせてもらっていたことがあって,帰りに電車を乗り換えるついでに,市内を散策するのが習慣になっていたのである。夕方の雑然とした商店街を抜けて,人気のあまりない旧道まで,仕事帰りの重い鞄を肩から提げてふらふら歩いたこともあった。旧道の向こうには不気味に閑散とした町並みがあって,黒々とした巨大な防波堤をくぐり抜けると海岸があった。
 うろうろと散歩していても,海を眺めていても,頭の中はいつも不安と焦燥感でいっぱいだった。ここでなにをしているのだろうか,これからどうなるのだろうか,そうやって答えのない問いを繰り返して,後にはただ疲労しか残らない。小田原の町並みを思い出すと,川崎長太郎の描く海岸の掘っ立て小屋の描写と重なって,なにもかもどうでもいいというような,投げやりな感情が蘇ってくる。もっとも,砂を噛むような日々の感情をやり過ごすのが少しうまくなっただけで,本質的には,今もあのころと同じところをぐるぐると回っているのかもしれない。
 本屋で川崎長太郎のことを尋ねた,その翌年だったか,一年ぶりにその本屋に立ち寄ってなにか本を買ったら,カウンターの店主がちらりとこちらを見て,毎度どうも,と会釈してくれた。それがもう四,五年前のことだ。小田原にはそれきり行っていない。

読了:05/21まで (F)

2007年5月20日 (日)

Bookcover 大いなる眠り (創元推理文庫 131-1) [a]
レイモンド・チャンドラー / 東京創元社 / 1959-08
15年前だか20年前だか,とにかく大昔,昼下がりにふとテレビをつけたら古い映画をやっていて,茶色っぽい画面のなかでは口ひげを生やした男がハンドルを握っており,納谷悟朗の声のナレーションが,どうせみんないつかは死んじゃうんだ,という意味のことを重々しく述べていた。ふいに画面はCMに切り替わり,そのまま映画は終わってしまったので,筋はまったくわからなかったのだが,そのナレーションの最後の台詞,大いなる眠りを待つのだ,という言い回しが妙に心に残って,その後なにかの拍子にふと口ずさむことがあった。
 ずっと後になって,あの映画はたぶんチャンドラーの「大いなる眠り」を映画化したものなのだろう,と気が付いた。調べてみると,たしかにこの小説は,ボカートの「三つ数えろ」の原作になっただけではなく,70年代になってからロバート・ミッチャム主演で映画化されている。
 なにか面倒な事や腹の立つ事,やるせないことが起きると,心の中で銭形警部の声を真似て,誰も彼も結局のところは「大いなる眠りを待つのだ」,と呟いてみることがあったように思う。とはいえ,俺はマーロウではないし,世の中はチャンドラーの小説よりもずっとずっと味気なくてつまらなくて,散文的なものであるように思われる。

読了:05/20まで (F)

2007年5月 4日 (金)

Bookcover ロリータ (新潮文庫) [a]
ウラジーミル ナボコフ / 新潮社 / 2006-10-30
「テヘランで『ロリータ』を読む」という大変面白そうな本があって,もうとっくに買い込んであるのに,本家のナボコフ「ロリータ」を読んでないんじゃしょうがないよなあとペンディングにしていて,本棚の背表紙をみるたび,なんだか急かされているような気分だった。20世紀世界文学の記念碑的傑作,云々という中途半端な知識に邪魔されて,なんとなく億劫になっていたのである。
 で,このたび本棚を整理したところ,なんと「ロリータ」の文庫版を二冊も持っていることがわかり(大久保康男訳と若島正の新訳),悪態をつきながら,さすがに仕方なく手に取った。
 若島訳のほうを尻ポケットに突っ込んで駅前に出かけ,両手に買い物袋を下げて区民会館のベンチに腰を下ろし,何の気なしに読み始めて,たったの数十頁で(語り手が自分の嗜好についてあれこれ能書きを垂れるあたりで),ああしまった,ハイリコンデシマッタ,と思った。主人公の妄想の可笑しさ,馬鹿馬鹿しさといったら,もう例えようがない。娘の一挙手一投足に身も心もかき乱されるあたりなんて,志村けんの最良のコントだってかなわない。身をよじって笑いの発作に堪えるうち,突如として主人公の願望が成就してしまい,一転して索漠とした荒野が延々と広がる。このドライブ感! 世の中にこんな面白い小説があったとは!
 本当に良い本を読んでいるときにだけ感じるあの奇妙な感覚,頁を閉じて飯を食っていても風呂に入っていても,頭のどこかがその本の世界に取り残されているような感覚から,いまだ抜け出ることができない。一読しただけなのに,何年間もの奇妙な経験をくぐり抜けたような心境である。恐るべき爆笑小説にして,涙も凍る絶望小説であった。

読了:05/04まで (F)

2007年4月20日 (金)

Bookcover 風の影〈上〉 (集英社文庫) [a]
カルロス・ルイス サフォン / 集英社 / 2006-07
Bookcover 風の影〈下〉 (集英社文庫) [a]
カルロス・ルイス サフォン / 集英社 / 2006-07
50年代バルセロナを舞台にしたミステリ。なかなか面白かった。
Bookcover 村上かるた うさぎおいしーフランス人 [a]
村上 春樹 / 文藝春秋 / 2007-03
まったくもう。。。

読了:04/20まで (F)

2007年4月 9日 (月)

Bookcover 行きずりの街 (新潮文庫) [a]
志水 辰夫 / 新潮社 / 1994-01-28
帰りの電車で読了。91年発表の旧作なのだが,なぜかいま書店に平積みになっている。なんでも文庫の帯に「このミステリーがすごい 第一位!」と書いたら,とたんに売れ出したそうである(たしかに91年の「このミス」一位なのである)。面白いなあ。
 塾講師を主人公にしたハードボイルド。シミタツ先生絶好調の時期の作であるからして,それはもう,頁をめくる手を止めさせない小説である。
 とはいえ,作中のヒロイン(主人公の元女房)は忍耐と包容の美しき賢女という,男にとって都合の良い存在で,そのへんのところ女性の読者は白けるかもしれないと思った。

読了:04/09まで (F)

2007年4月 1日 (日)

Bookcover 身元不明者89号 (創元推理文庫) [a]
エルモア レナード / 東京創元社 / 2007-03
海外ミステリはもう読まないことにしたのだが,レナード先生の初訳作品ならば仕方がない。電車で読了。1977年の作品で,この作家としてはちょっと落ちるが,やっぱり面白い。

読了:04/01 (F)

2007年3月28日 (水)

Bookcover ロング・グッドバイ [a]
レイモンド・チャンドラー / 早川書房 / 2007-03-08
このたび出た新訳。つり革につかまって揺られながら読了。
 旧訳(清水俊二)を読んだのはいつだっけ? もう十年以上も昔の話だ。いま「長いお別れ」を読んでいるんだ,と電話の相手にふと話したら,ああ「ギムレットには早すぎる」でしょう,と返されたのを覚えている。
 この人の小説にはなにかすごく歪んだところがあるような気がして,そこに魅力を感じる面もあるし,どうにもついて行けないと感じる面もある。その印象は今回読み直してみても変わらなかった。この小説でいうと(いま手元にないのでうろ覚えだが),作家が死んだ日の夜,ようやく帰宅したマーロウが一杯飲んで寝る場面で,都会のさまざまな情景を描写した非常に感傷的な文章が一パラグラフ挿入される。なんだか唐突な印象を受ける。ああいうところが,俺にはどうもよくわからない。
 今回の発見は,主人公のマーロウにもちょっと気味の悪いところがある,という点であった。あなたはなにを考えておるのですか,というような薄気味悪さがある。真夜中にコンビニに行ったらカウンターの内側に店員が座っていて,品出しをするでも帳面をつけるでもなく,無人の店内を無表情に眺めて微動だにしない,というような感じである。うーん。小説の仕組みとして必然性があるのかもしれないけれども,個人的には,もう少し気の抜けたところがあるほうが助かる。
 訳者の村上春樹さんが巻末で,チャンドラーは脇道に逸れるところが面白い,という意味のことを書いていて,そうそうそうだよね,となんだか嬉しかった。正直なところ,チャンドラーの小説で記憶に残っているのは,三人の医者を訪ねるところだったり,「プレイバック」での老人の長演説だったり,「高い窓」で娘を実家に送り届けるあたりだったりで,本筋と関係のない場面だけが,明け方の奇妙な夢のように,脈絡も無くふと思い出されるのである。

読了:03/28まで (F)

2007年3月25日 (日)

Bookcover 丁庄の夢―中国エイズ村奇談 [a]
閻 連科 / 河出書房新社 / 2007-01
眠れずにふと手にとって,そのまま引き込まれ一気に読了した。黄河下流の河南省には,村中で売血した末に村中がエイズに罹ってしまった"エイズ村"が散在しているのだそうだ。そんな村のひとつを舞台にした小説。
 なんだかガルシア・マルケスみたいだなあと思いながら読んだのだが(実際,この著者は中国のマルケスと呼ばれている由),中国の実情に照らしてどこまでリアルでどこからホラ話なのか,判断がつかないところがもどかしい。ものすごく立派な棺桶に,技巧を凝らした彫刻が施されていて...というあたりまでは,まあ秦俑のお国柄だからなあ,と納得する。最新のAV機器の絵が彫ってあって...というあたりも,まあそういうこともあるのかなあ,と。しかし,死者の足下には高層ビルが彫ってあり,その天辺には「中国人民銀行」と書いてある...というあたりになると,いくらなんでもそれはないだろうと思う次第である。私の判断は当たっているでしょうか? ひょっとしたら中国では棺桶に銀行の絵を描いたりするものなのか?
 などなど,いろいろ感想があって書ききれない。大変読みでのある小説であった。

読了:03/25まで (F)

2007年3月23日 (金)

Bookcover ケータイからあふれたLOVE STORY [a]
/ ゴマブックス / 2005-12-20
ケータイサイトの投稿小説集らしい。彼女が薬害エイズで死んじゃう悲恋モノとか,まあそういうの。
 これも社会勉強だと思ってめくったが,あまりに突き放していい加減な読み方をしたもので,特になにも学ばなかった。こういうのが一番良くない,どうせなら真剣に読まないといけない。反省。

読了:03/23まで (F)

2007年3月 6日 (火)

Bookcover ららら科學の子 (文春文庫) [a]
矢作 俊彦 / 文藝春秋 / 2006-10
帰りに買って,電車と夕飯で一気読み。終盤に至ってようやく気がついたのだが,これは徹頭徹尾センティメンタルな小説なのである。妹とのやりとりなんて,寅さんかと思ったぞ。面白かったけど。

読了:03/06まで (F)

2007年2月12日 (月)

Bookcover 詩七日 [a]
平田 俊子 / 思潮社 / 2004-07

読了:02/12 (F)

2007年1月30日 (火)

Bookcover ぼくたちもそこにいた (岩波少年文庫) [a]
ハンス・ペーター リヒター / 岩波書店 / 2004-08

読了:01/30まで (F)

2007年1月 2日 (火)

Bookcover ピアノ・サンド [a]
平田 俊子 / 講談社 / 2003-12

読了:1/2まで (F)

2006年12月17日 (日)

Bookcover となり町戦争 (集英社文庫) [a]
三崎 亜記 / 集英社 / 2006-12-15
土曜の仕事の帰り道で読了。描写が歯止めなく修飾的になっていく傾向があって,ちょっと辟易とするけれど,とにかくアイデアが素晴らしいと思った。

読了:12/17まで (F)

2006年11月26日 (日)

Bookcover 歯車・至福千年 (講談社文芸文庫) [a]
堀田 善衞 / 講談社 / 2003-01-09
昼休みにちびちび読んで,ようやく読了。
 14才の頃,浴びるように小説を読んだ時期があって,その時一番心に残ったのが,堀田善衛の「広場の孤独」だった。そんなふうに妙な背伸びをしなければならなかったのは,別に早熟だったからではなく,自分がおかれている状況をきちんとした言葉で説明してくれる中学生向けの小説が見当たらなかったからで,たとえば数年前にベストセラーになった小説「バトル・ロワイヤル」がもしあの時期に出ていたら,中学生の俺はきっと熱狂していただろうと思う。「広場の孤独」に登場する,朝鮮戦争を前にした若い知識人の苦悩は,もちろん子どもにはよく分からない代物だったけれども,状況からいくら逃げだそうとしても果たせず,手を汚さない方法がどこにもない,その一点で,主人公の姿はまるで自分の姿であるように思われたのであった。つくづく思うのだが,もういちど中学生をやれといわれたら,すぐに高いところから飛び降ります。
 で,年を食ってから「広場の孤独」を読み直してびっくりしたのだが,これはなんというか,実にセンティメンタルな小説なのである。要するに,ああ日本は資本主義的発展を遂げていくよ,僕は亡命者ではいられないや,どうしようどうしよう,困ったな困ったな,という小説である。その時代のなかではとても誠実な小説だったのだろうけれども,数十年後に読んでアクチュアルであるとは言い難い。なにを考えておったのか中学生の俺は,と呆れたものである。
 この文庫本に入っている「歯車」は,1951年,「広場の孤独」と同じ年に発表されたもので,肝心なところで感傷に流れていくところもそっくりである。「広場の孤独」を読み直した時の気恥ずかしさを思い出したが,ことによるといまこのときに,この小説に痺れ,幾ばくかの救いを得ている子どもが,どこかにいるかもしれない。また,ことによると十年後には,俺がいま面白がっている小説もつまらなく思えるのかもしれない。結局,本とはそういうものなのだろう。

読了:11/26まで (F)

2006年11月25日 (土)

Bookcover あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 (520)) [a]
ハンス・ペーター・リヒター / 岩波書店 / 2000-06-16
渋谷の児童書専門店の前を通りかかったので,なんとなく買って再読。
この本からユダヤ人迫害について学びましたとかなんとか,そういう文脈だけで捉えてしまいそうになるが,今回つくづく思ったのは,とても上手い小説だということである。決め手になる場面だけを鮮やかに描写し,無駄なことを一切書かない。
Bookcover 真相 (双葉文庫) [a]
横山 秀夫 / 双葉社 / 2006-10

読了:11/25まで (F)

2006年11月12日 (日)

Bookcover 酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [a]
鴨志田 穣 / スターツ出版 / 2006-11

読了:11/12まで (F)

2006年10月16日 (月)

Bookcover ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫) [a]
グレアム グリーン / 早川書房 / 2006-10-12
この度新訳が出たのを機に手に取った。いやいや参りました。これを読まないわけにはいかない,という傑作であった。
いろいろな捉え方が出来るだろうけど,俺にとっては,これは不安小説の金字塔である。日常生活のなかの不安を,水晶のように純化して提示してくれる,これは誠に小説の徳であります。
Bookcover [a]
イヴ・ベルジェ / 白水社 / 2004-09-23
戦後の南仏の田舎に,アメリカ南部が死ぬほど好きないささか現実離れした父親がいて,その支配下から自立できそうでできない姉弟が,下宿の一室でひたすらやりまくる,という。。。なんだかよくわからない小説であった。

読了:10/16まで (F)

2006年10月10日 (火)

Bookcover 狼花 新宿鮫IX (新宿鮫 (9)) [a]
大沢 在昌 / 光文社 / 2006-09-21

読了:10/10まで (F)

2006年9月24日 (日)

Bookcover OUT 上 (講談社文庫 き 32-3) [a]
桐野 夏生 / 講談社 / 2002-06-14
Bookcover OUT 下 (講談社文庫 き 32-4) [a]
桐野 夏生 / 講談社 / 2002-06-14
「グロテスク」が良かったので,食わず嫌いはやめにして読んでみた。評判になった作品だけあって,とても面白かった。最終盤にいきなり愛が芽生えちゃうところ,俺のように鈍い輩には,いまいち理解できないけど。

こうやって適当に買い込んだ本を読んで,ただ時間を過ごし,無為に年を取っていくわけである。他人の人生なら同情するだけで済むが,なにしろ自分のことなので,茫然としてしまう。

読了:09/24まで (F)

2006年9月18日 (月)

Bookcover グロテスク〈上〉 (文春文庫) [a]
桐野 夏生 / 文藝春秋 / 2006-09
Bookcover グロテスク〈下〉 (文春文庫) [a]
桐野 夏生 / 文藝春秋 / 2006-09
週刊文春連載時は面倒で読んでいなかったのだが,その後評判になったので,ちょっと気になっていた本。この度の文庫化を機に読んでみた。
東電OL事件を題材にした怖い怖い話であったが,終盤に語り手までもが娼婦となるに至り,悲劇を通り越してちょっぴり喜劇的な味わいがあって,なんともいえず良い。悪意渦巻く名門女子高のモデルとなっているのは慶應女子だろうか。みんないろいろ大変なんですね。
Bookcover 神様 (中公文庫) [a]
川上 弘美 / 中央公論新社 / 2001-10
面白かった。

読了:09/18まで (F)

2006年8月31日 (木)

Bookcover 第三の時効 (集英社文庫) [a]
横山 秀夫 / 集英社 / 2006-03-17

読了:08/30まで (F)

2006年8月 6日 (日)

Bookcover 暁への疾走 (文春文庫) [a]
ロブ ライアン / 文藝春秋 / 2006-07
久々の海外小説。前作までとはかわって歴史小説だが,中盤まで話が全然動かないあたり,いかにもロブ・ライアンらしい。

読了:08/06まで (F)

2006年7月19日 (水)

Bookcover 平田俊子詩集 (現代詩文庫) [a]
平田 俊子 / 思潮社 / 1999-12
本屋でふと手にとって,なんだか心惹かれて買った本。詩集「ターミナル」が特に良いと思った。

読了:07/19まで (F)

2006年6月18日 (日)

Bookcover 約束の土地 (創元推理文庫) [a]
リチャード バウカー / 東京創元社 / 1993-07
本棚にあったので読んでみた。探偵青春小説であった (考えてみれば類書の多い分野だ。ドン・ウィンズロウとか)。なかなか面白かった。

読了:06/18まで (F)

2006年6月 7日 (水)

Bookcover 800番への旅 (岩波少年文庫) [a]
E.L. カニグズバーグ / 岩波書店 / 2005-08-26
再読。昨年出た改訳版(金原瑞人)。どんな風に変わったのか,みてみたかったので。
聞くところによると,熱心なカニグズバーグファンが一連の旧訳に激怒し,誤訳をリストにして著者に送りつけ,著者を経由して版元を動かしたのだそうだ。たしかに,旧訳にはちょっとどうかと思う部分があったけれども,うーん,なんだかコワイ,自分が訳者の立場だったらと思うと,背筋がぞっとする。
Bookcover となりのこども [a]
岩瀬 成子 / 理論社 / 2004-12
「朝はだんだん見えてくる」の著者の,最近の作品。懐かしい。
この2冊は渋谷の児童書専門店で購入。店内を見回しても特に書いてなかったが,この本屋さん,先日まで勤めていた会社が経営母体なのである。とても良い店であった。書店の経営も大変だと思うが,がんばってほしいものだ。
Bookcover 最後の旋律―87分署シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1787) [a]
エド マクベイン / 早川書房 / 2006-05-15
シリーズ最終作。アイソラの街ともこれでお別れだ。長い間お世話になりました。

読了:06/07まで (F)

2006年5月15日 (月)

Bookcover 壊れかた指南 [a]
筒井 康隆 / 文藝春秋 / 2006-04-26

とりたてて忙しいわけじゃないのに,どんどん時間が過ぎていく。昨年までに比べて通勤時間が減ったぶん余裕ができたはずなのに,本も論文もなかなか読めない。なぜだろう。まだ慣れていないからだろうか。

読了:05/15まで (F)

2006年5月 7日 (日)

Bookcover 果てもない道中記 下 (講談社文芸文庫 やA 9) [a]
安岡 章太郎 / 講談社 / 2002-07-10
かなり間が空いたけど,"第三の新人"シリーズ第六弾。平成7年の作品。
中里介山「大菩薩峠」の筋を追いながらあれこれと思いを馳せる,という仕立ての長編エッセイ。まさかそんなのが,これほどに面白いとは。。。文章を読むということそのものの楽しさに,存分に浸ることができる名編であった。安岡章太郎は「海辺の光景」まで,となぜか強く信じ込んでいた,その不明を恥じる次第である。

読了:05/07まで (F)

2006年4月27日 (木)

Bookcover 果てもない道中記 上 講談社文芸文庫 やA 8 [a]
安岡 章太郎 / 講談社 / 2002-06-10
読み終わるのが惜しくて,なかなか先に進めない。

読了:04/27まで (F)

2006年3月25日 (土)

Bookcover 戦後短篇小説再発見10 表現の冒険 (講談社文芸文庫) [a]
/ 講談社 / 2002-03-04
小島信夫「馬」がとても面白かった。稲垣足穂「澄江堂河童談義」は飛ばした(あんな話,よう読みません)。

読了:03/25まで (F)

2006年3月19日 (日)

Bookcover 鏡川 (新潮文庫) [a]
安岡 章太郎 / 新潮社 / 2004-04-24
四冊目。あまり集中して読んでなかったせいで,うまく入り込めないまま終わってしまった。平成12年の作品。
Bookcover プールサイド小景・静物 (新潮文庫) [a]
庄野 潤三 / 新潮社 / 1965-03-01
五冊目。昭和35年までに発表された短編。
 「静物」を読んでようやくわかったのだけれど,この人の小説は気味が悪い。
 「夕べの雲」からもごくかすかな気持ち悪さを感じたのだが,それは物語に対する書き手の時間的・空間的な立場がわからないからで,俺が日本の私小説の仕組みに慣れていないためだろう,などと考えた。しかしここではもはや,全編を不吉さが色濃く覆っている。どこがどう不吉とはいえないが,無害で穏やかな家族の生活が描かれているにも関わらず,なんでもない些末な事柄が強い死の匂いを発しているような気がする。いつか金魚鉢は割れて金魚は死に,子どもは釣り堀でおぼれ死に,全員が悲惨な死を遂げるのではないか,という不安が消えない。うーん,俺がどうかしているのだろうか? うまく言葉に出来ないのがもどかしい。
Bookcover 須賀敦子全集〈第4巻〉遠い朝の本たち、本に読まれて、書評・映画評ほか [a]
須賀 敦子 / 河出書房新社 / 2000-07-10

読了:03/19まで (F)

2006年3月12日 (日)

Bookcover 掘るひと [a]
岩阪 恵子 / 講談社 / 2006-01
たまに本屋で純文学誌を立ち読みして,その独特の匂いに辟易することがあるのだけれど,それにはきっと容れ物の匂いも含まれているのだろう。この本は「新潮」「群像」に発表された短編を集めたものだが,読んでいて「ああ純文学誌に載っていそうだなあ」と思った部分と,素直に面白く感じた部分があった。表題作,「マーマレード作り」,「流しの穴」が良いと思った。

読了:03/12 (F)

2006年3月 5日 (日)

Bookcover 雲の墓標 (新潮文庫) [a]
阿川 弘之 / 新潮社 / 1958-07-22
昭和30年代小説シリーズの三冊目。昭和31年の作品。

読了:03/05 (F)

2006年3月 2日 (木)

Bookcover 夕べの雲 (講談社文芸文庫) [a]
庄野 潤三 / 講談社 / 1988-04-04
諸般の事情により,実生活にとって有益なものを読むのはやめにして,これからは小説だけを読むことにしたいと思う。とりあえず,昭和30年代デビューのいわゆる"第三の新人"あたりの作家の本を集中的に読んでみたい。というわけで,その第一弾。
 大変にのんびりした身辺雑記小説。なあんにも起こらない。息子の夏休みの宿題の話だけで数頁使う勢いである。
 今回の発見は,読む場所を選ぶ本というものがあるのだなあ,という点である。帰りの電車でシートに腰を下ろして読んでいる分には大変素晴らしい小説で,なんだか身体の芯から温められるような豊かさ(そして,時制がいまいちはっきりしないというかすかな気味の悪さ)に身を浸すことができる。しかし,つり革にぶら下がって揺れながら読んでいると,もう大変にイライラさせられるのである。あなた要点はなんですか,さっさと述べてください,と。
 周りを見回すと,電車の中で人々が読んでいる本は,司馬遼太郎,池波正太郎,宮部みゆきがベストスリーである。うーん,確かに。満員電車でも楽しく読めそうだ。
 しかし考えてみると,ある物語がちょっとした状況の違いで楽しめたり楽しめなかったりする,というのは妙なものだ。どっちみち電車の中なんだがら,認知的資源に大きな違いがあるわけではない。どういうことだろうか。

Bookcover 笹まくら (新潮文庫) [a]
丸谷 才一 / 新潮社 / 1974-08-01
第二弾,のつもりで買ったのだが,結局は並行して読んでしまった。
 きっと衒学的で長々しくて辛気くさくて旧かなづかいの長編小説だろう,と息を詰めるようにして読み始めたのだが,清新で鮮烈な,超一級のエンターティメントであった。いやあ,本は読んでみないとわからない。
 感心してばかりでも癪に障るのであれこれ考えるわけだが,昭和41年に書かれたこの小説を現代にずらすとすると,主人公にとっての徴兵忌避はなにに置き換えることが出来るだろうか。なにかきっとうまいアイデアがあると思うのだが(そういう普遍的な問題だと思うのだが),思いつかない。

読了:03/02まで (F)

2006年3月 1日 (水)

Bookcover あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
ローリー・リン ドラモンド / 早川書房 / 2006-02-08
海外ミステリはしばらく止めておこうと思っていたのだが,帯にエルモア・レナードの推薦文がついているのをみつけたら,やっぱり読まざるを得ない。昨日・今日の行き帰りで読了。
 ルイジアナの市警を舞台にした短編集。とても良い小説だったが,女性警官が主人公だとどうしても「ヒル・ストリート・ブルース」のルーシーを思い浮かべてしまう。声優の声つきで。

読了:03/01まで (F)

2006年2月16日 (木)

Bookcover 砂の上の植物群 (新潮文庫) [a]
吉行 淳之介 / 新潮社 / 1966-04-27
読んでいて思い出したのだが,中学生の頃に読んでナンダカナアと思ったのであった。このおっさんはええ年してなにをしておるのかと。
今回読んでみたところ,面白い小説だとは思うけれども,やっぱりナンダカナアという感じである。この種の孤独や苦しみは,セックスのかわりにジョギングでもすれば解決するのではないかと。
本編の前身となった短編「樹々は緑か」のほうが,長く残る小説なのではないかと思う。まあ俺がこんなこと考えても仕方がないけどさ。
Bookcover この世の果て (扶桑社ミステリー) [a]
クレイグ ホールデン / 扶桑社 / 2000-08
「夜が終わる場所」の作者の,そのひとつ前の作品。たくさんの登場人物が明確な動機づけなしに転がっていくタイプの小説(なんと呼べばよいのだろうか。ビリヤードの球小説?)。楽しく読み終えたけど,いまいち成功してないと思った。きっと腕を上げていく途中だったのだろうな。
Bookcover 転落の道標 (扶桑社ミステリー) [a]
ケント ハリントン / 扶桑社 / 2001-02
死ぬほど後味の悪い犯罪小説。駄目な人が駄目な人と出会い駄目な曲折を経てさらに駄目になっていく。あまり出来の良い小説とはいえないと思うが,大変気に入った。小説はこうじゃなくちゃいけない。日常を切り裂き,その裂け目から悪夢をどっぷり注ぎ込まなければ。

読了:02/16まで (F)

2006年2月11日 (土)

Bookcover シブミ〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) [a]
トレヴェニアン / 早川書房 / 2006-02
Bookcover シブミ〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) [a]
トレヴェニアン / 早川書房 / 2006-02
天性の能力と囲碁の鍛錬によって「シブミ」の境地に達した孤高の暗殺者と,CIAを配下におく超巨大組織との死闘。もうハッタリのオンパレード。ちょっとメタフィクショナルな趣向もあって,いかにもインテリが好きそうな娯楽小説であった。
Bookcover 須賀敦子全集〈第3巻〉ユルスナールの靴・時のかけらたち・地図のない道・エッセイ/1993~1996 [a]
須賀 敦子 / 河出書房新社 / 2000-06

読了:02/11まで (F)

2006年2月 5日 (日)

Bookcover 山椒大夫・高瀬舟 他四編 (岩波文庫 緑 5-7) [a]
森 鴎外 / 岩波書店 / 2002-10-16
ほぼ同内容の新潮文庫を持っているのだが,「じいさんばあさん」読みたさに購入。
Bookcover しろねこくん [a]
べつやく れい / 小学館 / 2003-02
洒落ているなあ。著者はたぶん別役実の娘さんだと思う。

読了:02/05まで (F)

2006年2月 1日 (水)

Bookcover 銀齢の果て [a]
筒井 康隆 / 新潮社 / 2006-01-20
僧侶の唄う劇中歌「葬いのボサ・ノバ」は楽譜がついている(山下洋輔作曲)。小一時間研究した末,ようやくメロディーを覚えたが,すごく難しい。「しにーみずが のーどにつまってー ごろーごろと 鳴ーるそのおーとがー」

読了:02/01まで (F)

2006年1月17日 (火)

Bookcover 須賀敦子全集〈第2巻〉 [a]
須賀 敦子 / 河出書房新社 / 2000-05
「ヴェネチアの宿」「トリエステの坂道」を所収。一編一編の構成の緊密さときたら,いったいどうやって書いたんだか,もう不思議で仕方ない。あらかじめノートでも取ったのか。それとも,想を練っているうちに,全体が絵のようにすっと見渡せる瞬間がやってくるものだったのか。

しかし,会社の昼休みに読む本ではないな。切り替えが大変だ。

読了:01/17まで (F)

2005年12月30日 (金)

Bookcover 無頼の掟 (文春文庫) [a]
ジェイムズ・カルロス・ブレイク / 文藝春秋 / 2005-01
仕事納めの帰りの電車で一気読み。20年代のルイジアナを舞台にした犯罪活劇。敵役の鬼刑事は片手がペンチだったりして(どうやって動かしておるのかね),なかなか面白い。

読了:12/30まで (F)

2005年12月26日 (月)

Bookcover 失踪当時の服装は (創元推理文庫 152-1) [a]
ヒラリー・ウォー / 東京創元社 / 1960-11
帰りの電車で読むはずの論文を早く読み終えてしまったので,かわりに読んだ。警察小説。とても古くさい内容で拍子抜けしたが,前に読んで感心した「この町の誰かが」は82年発表,こっちは52年発表だから,比べるのには無理がある。

読了:12/26 (F)

2005年12月24日 (土)

Bookcover ビー・クール (小学館文庫) [a]
エルモア・レナード / 小学館 / 2005-08-05

Bookcover 11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
パトリシア ハイスミス / 早川書房 / 2005-12-08

読了:12/24まで (F)

2005年11月30日 (水)

Bookcover 博士の愛した数式 (新潮文庫) [a]
小川 洋子 / 新潮社 / 2005-11-26
大変に評判になった本で,かえって手に取るのがためらわれていたのだが,文庫化されたのでは読まざるを得ない。
帰りの電車で読み始め,読み終えないうちに自宅の最寄り駅についたが,本を閉じるのが惜しいくらいであった。上手い。。。とにかく上手い。精緻な構成に溜息が出る。

読了:11/30 (F)

2005年11月26日 (土)

Bookcover ハルビン・カフェ (角川文庫) [a]
打海 文三 / 角川書店 / 2005-07-23
たまたま読み始めたのだが,これがとんでもなく面白くて,仕事が手につかないほどであった。
Bookcover 時には懺悔を (角川文庫) [a]
打海 文三 / 角川書店 / 2001-09
で,あわてて本屋でこの人の他の本を探し,コーヒーショップで読み始めたら,これがさらにまた面白くて,小一時間かけて読み終えるまで滞在するはめになった。最近読んだなかでは最大のヒット。昔の北方謙三のようなタイトルといい,二時間ドラマみたいな状況設定といい(「私立探偵とその見習いの女がたまたま死体を見つける」というのが導入部),これがこんなに素晴らしい小説だなんて,普通気がつかないぞ。
Bookcover 太鼓たたいて笛ふいて (新潮文庫) [a]
井上 ひさし / 新潮社 / 2005-10-28
音楽劇のかたちをとっている分だけ情報量がすくないんだけど,それにしてもメッセージがとても直接的で,ああ「イーハトーブの劇列車」のころの井上ひさしからはまた違ってきているんだな,と思った。

読了:11/26まで (F)

2005年11月13日 (日)

Bookcover 動機 (文春文庫) [a]
横山 秀夫 / 文藝春秋 / 2002-11
いくらサスペンスフルな展開でも,落ちはかならず人情噺!! GoGo横山秀夫!! 日本人はみんなあなたの味方だ!!

読了:11/13まで (F)

2005年11月11日 (金)

Bookcover 耳を傾けよ!―87分署シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
エド マクベイン / 早川書房 / 2005-10-20
あともう一作ある由。

読了:11/11まで (F)

2005年11月10日 (木)

Bookcover 骨の島 (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
アーロン エルキンズ / 早川書房 / 2005-10
教育関係の本を読むのが嫌になったので,気楽そうな本を選び,行きの電車で一気読み。シリーズ第11作だそうだ。内田康夫か西村京太郎みたいなものなんだろうな。

読了:11/10まで (F)

2005年11月 3日 (木)

Bookcover 須賀敦子全集〈第1巻〉ミラノ霧の風景・コルシア書店の仲間たち・旅のあいまに [a]
須賀 敦子 / 河出書房新社 / 2000-03
めくってみたら,すでに全部読んでいた。
Bookcover 覗く銃口 (新潮文庫) [a]
サイモン カーニック / 新潮社 / 2005-09
いまいち。

読了:11/03まで (F)

2005年10月30日 (日)

Bookcover オータム・タイガー (創元ノヴェルズ) [a]
ボブ ラングレー,ボブ・ラングレー / 東京創元社 / 1990-08
著者はかの「北壁の死闘」を書いた人。土曜日の仕事のあとに寄った本屋で見つけ,即座に買って,その帰り道にほぼ読了。期待しすぎてしまった。事前に訳者あとがきをよく読んでおけば,「これはちょっといまいちだ」とわかったのに。

読了:10/30まで (F)

2005年10月27日 (木)

Bookcover あの日、少女たちは赤ん坊を殺した (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
ローラ リップマン / 早川書房 / 2005-10
この作家の本は前にも読んだなあと思いながら買い,ああそういえば前に読んだ本はつまらなかったような気がするなあと思いながら読み進め,読み終わってみるとやはり印象に残らない本で,すぐに内容を忘れるだけでなく,つまらなかったことまでも忘れてしまう。それがローラ・リップマンだ。

読了:10/27まで

2005年10月 6日 (木)

Bookcover ララピポ [a]
奥田 英朗 / 幻冬舎 / 2005-09

読了:10/06まで (F)

2005年9月26日 (月)

Bookcover ブルー・ベル (ハヤカワ文庫―ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
アンドリュー ヴァクス / 早川書房 / 1995-04
探偵バークとヒロインとの会話場面があまりに長いので,ああ可哀想にこのヒロインは本作だけでお亡くなりになってしまうのね,と思いながら流し読み。悪くはないんだけど,どうもこのシリーズは肌にあわないみたいだ。

読了:09/26まで (F)

2005年9月20日 (火)

Bookcover 半落ち (講談社文庫) [a]
横山 秀夫 / 講談社 / 2005-09-15
数年前のベストセラー。さすがに読ませる。この本から学ぶところは多かった。(1)出てくる人出てくる人,みんなしがらみと思い入れと諸事情に包囲され,実に大変そうだ。世の中の大半の人は俺と同じく,実にどうでも良いだらだらとした日常を送っているはずだと思っていたのだが,ほんとにそうなのだろうか,もしや俺以外の人はみんな「半落ち」や「プロジェクトX」のような忍耐と苦汁と決断の日々を送ってるのではないか,と不安になった。(2)日本のベストセラーたるもの,落ちは小さめの心温まる人情話でなければならないということを痛感した。満員電車のつり革にしがみついて本を読むようになって改めて得心したのだが,わざわざ後味の悪い小説を読もうというのは,よほど奇特な人なのだ。
Bookcover 赤毛のストレーガ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-2)) [a]
アンドリュー・ヴァクス / 早川書房 / 1995-01
暗黒街に潜むアウトロー探偵バークは実に用心深い。アパートの鍵は一回逆向きに回してから開けないと爆発するし,飼い犬への合図は暗号化されている。暴力担当の相棒マックス(「パトリック&アンジー」シリーズにおけるブッパの役回りですね)はモンゴル人の聾唖者で,一瞬で音もなく人を殺す。こういうのをリアリティと呼ぶのはどうだろうか。一種の冗談として受け取るべきではないかという気がして仕方がない。
Bookcover 東京奇譚集 [a]
村上 春樹 / 新潮社 / 2005-09-15
短編集。本屋に並んだ日,会社の帰りに買って,電車で読み終えた。「品川猿」が群を抜いて良いと思った。

読了:09/20まで (F)

2005年9月 4日 (日)

Bookcover ポルノ惑星のサルモネラ人間―自選グロテスク傑作集 (新潮文庫) [a]
筒井 康隆 / 新潮社 / 2005-07-28

Bookcover くうねるところすむところ [a]
平 安寿子 / 文藝春秋 / 2005-05-25
悪くはないけど,なんだかNHKのドラマのような内容。
Bookcover 快盗ルビィ・マーチンスン (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハヤカワ名作コレクション) [a]
ヘンリイ・スレッサー / 早川書房 / 2005-07-21
これはここんところの大当たりであった。これを読んでなかったとは不覚である。とても気が利いていて,洒落ていて,一種のファンタジーと化している。この自称大泥棒が現実に目覚めたら,いったいどうなっちゃうんだろう,などと思うとなんだかしみじみしてくるぞ。

#amazonのデータでは「怪盗」となっているが,ほんとは「快盗」。bk1のデータは正しい。amazonも書誌データはTRCから(つまりはbk1の親会社から)買っているのだとどこかで読んだ覚えがあるが,最近はちがうのだろうか。

読了:09/04まで (F)

2005年7月12日 (火)

Bookcover プレイヤー・ピアノ (ハヤカワ文庫SF) [a]
カート・ヴォネガット・ジュニア / 早川書房 / 2005-01
好きな作家のひとりなのだが,これは未読だった。案外にオーソドックスな小説。

読了:07/12

2005年7月 2日 (土)

Bookcover 酔いどれに悪人なし (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
ケン ブルーウン / 早川書房 / 2005-01
探偵が読書マニアだからといって,話が面白くなるわけでもないしなあ。いまいちであった。

読了:07/02 (F)

2005年6月15日 (水)

Bookcover 休暇はほしくない (ハヤカワ文庫 HM (153-16)) [a]
パーネル・ホール / 早川書房 / 2005-06-09
シリーズ14作目。こうなってくると,もう面白いかどうかという問題ではなくなってくる。

読了:6/15まで (F)

2005年6月11日 (土)

Bookcover ピンク・バス (角川文庫) [a]
角田 光代 / 角川書店 / 2004-06

読了:06/11まで (F)

2005年5月17日 (火)

Bookcover ジャンプ (光文社文庫) [a]
佐藤 正午 / 光文社 / 2002-10
本棚にあったので寝転がって手にとって、1時間ほどで読了。なかなか面白かった。

読了:08/17 (F)

2005年5月 2日 (月)

Bookcover 阿弥陀堂だより (文春文庫) [a]
南木 佳士 / 文藝春秋 / 2002-08
連休記念に,久々の小説。
心情やら印象やら,なんでもかんでも言葉で説明しちゃうあたり,そんなに優れた作品だとは思わないんだけど(おいおい,態度が大きいね),嫌いな小説ではない。

読了:05/02

2005年3月14日 (月)

Bookcover レッド・ライト(上) [a]
パーカー.T.J / 講談社 / 2005-02-10
Bookcover レッド・ライト(下) [a]
パーカー.T.J / 講談社 / 2005-02-10
「ブルー・アワー」と比べると,少し落ちる。

読了:03/14まで (F)

2005年2月14日 (月)

Bookcover 雨に祈りを (角川文庫) [a]
デニス レヘイン / 角川書店 / 2002-09
第五作。さすがに,ちょっとくたびれてきた感じだ。

読了:02/14まで (F)

2005年2月 4日 (金)

Bookcover 囮弁護士〈上〉 (文春文庫) [a]
スコット トゥロー / 文藝春秋 / 2004-11
Bookcover 囮弁護士〈下〉 (文春文庫) [a]
スコット トゥロー / 文藝春秋 / 2004-11
さすがはトゥロー,面白いんだけど,「推定無罪」にはかなわない。

Bookcover 夢の破片(かけら) (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
モーラ ジョス / 早川書房 / 2004-12-16
今年の大ヒット!

Bookcover スコッチに涙を託して (角川文庫) [a]
デニス レヘイン / 角川書店 / 1999-05
Bookcover 闇よ、我が手を取りたまえ (角川文庫) [a]
デニス レヘイン / 角川書店 / 2000-04
Bookcover 穢れしものに祝福を (角川文庫) [a]
デニス レヘイン / 角川書店 / 2000-12
Bookcover 愛しき者はすべて去りゆく (角川文庫) [a]
デニス レヘイン / 角川書店 / 2001-09
順に,「パトリック&アンジー」シリーズ第1,2,3,4作。4作目が飛び抜けて良い。

Bookcover 失われし書庫 (ハヤカワ・ミステリ文庫) [a]
ジョン ダニング / 早川書房 / 2004-12
歴史ミステリはあまり好きじゃないのだが。。。

Bookcover 歌姫 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
エド マクベイン / 早川書房 / 2004-12-16
87分署シリーズが,まさかここにきて再び面白くなるとは。年寄りとはわからないものだ。

Bookcover 青と赤の死 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [a]
レベッカ・パウェル / 早川書房 / 2004-11-10
大外れ。「そりゃないだろう」級のあんまりな落ちに茫然。

読了:02/04まで (F)

2004年12月23日 (木)

Bookcover わが手に雨を [a]
グレッグ ルッカ / 文藝春秋 / 2004-09
女性ギタリストが主人公のハードボイルド。そこそこ面白し。

Bookcover 袋小路の休日 (講談社文芸文庫) [a]
小林 信彦 / 講談社 / 2004-11
昔の純文学系短編集の復刊。良い。

Bookcover 侵入者 (文春文庫) [a]
小林 信彦 / 文藝春秋 / 2004-12
こっちはいまいち。

読了:12/23 (F)

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