elsur.jpn.org >

« 徳間康快という人 | メイン | 読了:09/21まで (NF) »

2008年9月21日 (日)

Bookcover 雨無村役場産業課兼観光係 1 (フラワーコミックス) [a]
岩本 ナオ / 小学館 / 2008-08-08

Bookcover 団地ともお 12 (ビッグコミックス) [a]
小田 扉 / 小学館 / 2008-08-29

Bookcover 深夜食堂 1 (ビッグコミックススペシャル) [a]
安倍 夜郎 / 小学館 / 2007-12
Bookcover 深夜食堂 2 (ビッグコミックススペシャル) [a]
安倍 夜郎 / 小学館 / 2008-07-30

Bookcover 失われた時を求めて フランスコミック版 第2巻 花咲く乙女たちのかげに1 海辺への旅 [a]
ステファヌ ウエ,マルセル プルースト / 白夜書房 / 2008-05-23

Bookcover サラリーマン田中K一がゆく! (単行本コミックス) [a]
田中 圭一 / 角川グループパブリッシング / 2008-07-05
著者はすさまじく下品なギャグマンガ家として活躍するいっぽう,会社員としても成功を収めている人。この作品は「ヤング田中K一」に続き,玩具メーカー・タカラ勤務時代を舞台にしたもので,意外なほどに正統的なサラリーマンマンガであった。
 あとがきにもすこし言及があるが,この人は自分の強みと弱みを分析し,きわめて戦略的に作品の方向性を決めている。おそらく,初期のきわめつけに下品な4コマも,この作品での驚くほどに前向きな会社員礼賛も,読者と市場の把握に基づき,熟慮の結果打ち出されたものなのだろう。マーケッターの視点から自分をプロデュースしようとする発想自体は,多かれ少なかれ誰でも持ち合わせているものだろうけれども,ここまで徹底しているのは,さすがだなあ,と思う。

 研究者志望をドロップアウトし民間企業に拾ってもらって,まだ1年も経っていないころ,ひょんなことから,学部生のころにお世話になった先輩と飲みにいくことになった。その先輩は,博士課程の非常に早い時期に国立大の専任ポストを得た人であった。その頃を振り返る話になって,その先輩が語るに,自分にはコネもないし力もない,就職のためにはどんな研究テーマを選び,どのように自分をプレゼンテーションすればよいか,真剣に考えたものだ。今の自分はその必死の努力の賜物だ,という。(なるほど)と俺はひとりごちた。(それがあなたの成功譚なんですね)
 俺はこれまでそうした成功とは絶えて縁がなかったし,これからもないだろうと思う。その原因は,まあいろいろあるけれど,自分をプロデュースしようとする発想の欠如も,そのひとつだったように思う。だから,戦略的に作風を設計するマンガ家も,自分のマーケティングの成功を語る研究者も,俺には光り輝いて見える。確かに光り輝いて見えるのだけれど,でも,自分には到底得られないだろうその自己肯定が,ちょっぴり疎ましく感じられるのも,また事実なのである。

コミックス(-2010) - 読了:09/21まで (C)

rebuilt: 2020年11月16日 23:04
validate this page