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2009年6月26日 (金)

Bookcover メディアの支配者(上) (講談社文庫) [a]
中川 一徳 / 講談社 / 2009-06-12
Bookcover メディアの支配者(下) (講談社文庫) [a]
中川 一徳 / 講談社 / 2009-06-12
フジサンケイグループを支配した鹿内家三代の物語。
 すっかり引き込まれてしまい,息つく暇もなく読み終えた。権力闘争の手に汗握るサスペンス,骨肉の争いの下世話な興味深さ,鹿内家が権力を確立するまでの戦後史の壮大な暗部。。。これを面白いといわずになんというか。その後数日間にわたって,頭のなかは鹿内さんたちでいっぱいであった。なにしろ,通勤電車でつり革にぶら下がって揺られているとき,ついつい鹿内宏明さんの数奇な運命について考えてしまい,思わず「ああ,ヒロアキ。。。」などと小声で呟いてしまったほどである。はたからみたら危険なゲイのオヤジである。
 というわけで,文句なしに最近一番の面白本だったのだが,読み終えての最大の感想は,ああ俺は日本について知らない,何も知らないのだなあ,ということに尽きる。世の中は我々の預かり知らぬところで動いているのだ,と痛感する。
 いくつか抜き書き:

Bookcover 世界はカーブ化している グローバル金融はなぜ破綻したか [a]
デビッド・スミック / 徳間書店 / 2009-05-19
題名"The world is curved"はもちろん,フリードマンのベストセラー"The world is flat"を踏まえたもの。金融システムのグローバル化のせいで,世の中はフラットどころか一寸先も闇になってしまったが,でもグローバル化を止めるわけにもいかない,という主旨。。。だったと思う。経済の話は苦手なので,いまいち自信がない。
 堅い話ばっかりじゃまずいだろうというご配慮なのであろう,ところどころ自慢話とも冗談ともつかないような軽いエピソードが紹介されるので,その飛び石をつたうようにしてなんとか読み終えた。著者は超有名な金融コンサルタントなのだそうで,リー・クアンユーと一対一で論争したり,橋本首相をヨットで接待したり,グリーンスパンと始終メシを食ったり,絵に描いたようなインサイダーである。
 グローバリゼーションはどうしたって続けなければならない,そのためにこそ人々を起業家資本主義へと誘い,資本家の裾野を劇的に拡大させなければならない,んだそうだ。ふうん。

Bookcover 貧困ビジネス (幻冬舎新書) [a]
門倉 貴史 / 幻冬舎 / 2009-01
保証人ビジネスからアルバニアのネズミ講まで,表題と関係のありそうな話題を片っ端から集めてきましたという,全くまとまりのない本。失敗した。

Bookcover レバレッジ時間術―ノーリスク・ハイリターンの成功原則 (幻冬舎新書) [a]
本田 直之 / 幻冬舎 / 2007-05
本屋でぼんやりしていると,なんとなく不安がこみあげてきて,ついついこういう本を買ってしまうのである。会計を済ませたその足でコーヒーショップに寄り,袋から出してぱらぱらめくって,30分後に「これはもう読みおえたことにしよう」と決めた。著者様には失礼な話だが,本のテーマがテーマだから,仰るとおり時間を有益に使いました,ということでご容赦願いたいと思う。

Bookcover 多読術 (ちくまプリマー新書) [a]
松岡 正剛 / 筑摩書房 / 2009-04-08
著者は読書家として大変有名な人で,俺もときどきネットの「千夜千冊」を眺めることがあるのだけど,著書には関心がなかった。ところが先般,明け方に見た奇妙な夢のなかで,俺は小川洋子の小説に出てくるような幻想的な書庫のなかで段ボール箱を延々と運んでおり,少しでも箱を雑に扱うと,片眼鏡を掛けたマツオカ・セイゴーが静かに怒り出すのであった。これもなにかのご縁かと思い,最新刊を手に取った次第。
 この本もぱらぱらめくるような感じで読み終えてしまったが,なにしろ題名が「多読術」なんだから,正しい態度であろう。対談形式の薄目の内容で,なかなか楽しかった。主旨はアドラー&ドーレン「本を読む本」とほとんど同じだが,まあ誰が書いても似たような内容になるだろうし。達人のアドバイスを聞いたからといって,我々シモジモの役に立つかどうかはわからないし。

Bookcover 日本の難点 (幻冬舎新書) [a]
宮台 真司 / 幻冬舎 / 2009-04
帯に「ひとりで『日本の論点』をやってみました」とあるように,世の中のありとあらゆる問題について,整理・分析し見解を述べた本。大変忙しい。
 社会科学者がこういう本を書く,その決意は大変なものだろうと思うのだけど,この本を喜んで読んでいていいのか,という気もする。誰かえらい人に包括的な物差しを示してほしいと願うのは,よっぽど実存的不安に脅かされているか,でなければある種の怠慢の表れではないかと思うのである。もう少し,ひとつひとつゆっくり考えたいなあ。

Bookcover パリの聖月曜日―19世紀都市騒乱の舞台裏 (岩波現代文庫) [a]
喜安 朗 / 岩波書店 / 2008-03-14
19世紀初頭のパリは,人口は増大するわ社会は流動化するわ,でも都市を支えるだけの政治システムやインフラが追いつかないわで,もう大変だったのだそうだ。そのなかでの人々の生活について書いた本。
 水不足に関する章がとても面白かった。当時のパリはとにかく水が足りなくて,金持ちでさえ公衆浴場に行くのが習慣であった由(風呂の出前「移動浴槽」や,セーヌ川の船の上に浴室を並べた「風呂舟」といった商売もあったそうだ)。労働者はセーヌ川の水浴場に行くのが関の山であった。で,1825年に運河ができて,パリへの給水量は増大するが,その結果生じたのは公衆浴場の増加であって,格差はかえって拡大したそうである。

ノンフィクション(-2010) - 読了:06/26まで (NF)