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2009年6月26日 (金)
さよなら、愛しい人
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レイモンド・チャンドラー / 早川書房 / 2009-04-15
大ベストセラーどころか社会的事件と化してしまった「1Q84」を読まずに,同時期に出たチャンドラーの訳書のほうをシミジミと読む今日この頃。まあ,「1Q84」は読もうにも手に入らなかったのだが。
この本は清水俊二訳「さらば愛しき女よ」として長く親しまれてきたのだが,俺は清水訳で読んだときにどうにも違和感があり,面白い小説だけど,なんだかヘンだなあ。。。という感じであった。その理由はふたつあって,ひとつは,事件に鼻を突っ込むうら若き美女アン・リオーダンが,何考えてんだかよくわからん,という点であった。この村上春樹訳で読み直しても,その点は印象が変わらない。物語に花を添える道具的人物というか,なんというか。チャンドラーの小説の魅力は,話の組み立てのこのようないびつさと切り離せないように思う。
清水訳に感じたもう一つの違和感はごくつまらないことで,冒頭から登場する大男マロイが「大鹿マロイ」と表記されている点であった。大鹿,というのは彼の通り名で,ムース(ヘラジカ)の訳語なのだが,そもそもなんて読むんだかわからない。オオジカ?オオシカ? それに本文中でたびたび「大鹿マロイ」という文字が出てくると,ほんの一瞬だが,「大馬鹿マロイ」と読み間違えてしまうのである。さいわい,この新訳では「ムース・マロイ」と表記されている。時代が変わったんでしょうね。
フィクション - 読了:06/26まで (F)