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2009年7月13日 (月)

Bookcover 精神疾患はつくられる―DSM診断の罠 [a]
ハーブ カチンス,スチュワート・A. カーク / 日本評論社 / 2002-10
精神医学のバイブル・DSMについて,その策定を巡る政治的駆け引きの歴史を中心に,批判的に紹介した本。特に,DSM-IVでの採用を目指して挫折した診断名「マゾヒスティック・パーソナリティ」をめぐる熾烈な戦いの話が面白かった。
 最終章での著者らの提案は,(1)DSMは診断基準をもっと厳しくすべきだ,(2)DSMの妥当性と信頼性はとても低いので,研究目的を超えた運用は避けるべきだ,(3)臨床家はDSMを正直につかうべきだ(保険の支払いを念頭に妥協してはならない),(4)医療以外の社会的援助システムを構築すべきだ,という4点。
 書き方が非常に辛辣なので,ラディカルなDSM批判の本のようについ思えてしまうが,考えてみると著者らが云っているのは,DSMはその触れ込みほどには妥当性や信頼性を持ち合わせていないよ! その制定プロセスはむしろ政治の産物だよ! それをあたかも科学的システムのように運用しているせいでひどいことになっているよ!---という話だ。操作診断の必要性と可能性を否定しているわけではない。研究者はもっと「科学的」な操作診断システムを追求しよう,と主張しているようにも思える。素人の印象に過ぎないが,これは本質的には穏和で保守的なスタンスなのではないか?

心理・教育 - 読了:07/13まで (P)