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2011年1月 2日 (日)

Bookcover 光の領国 和辻哲郎 (岩波現代文庫) [a]
苅部 直 / 岩波書店 / 2010-11-17
新年最初に読みおえたのは,政治思想史の若い先生が書いた和辻哲郎の評伝であった(博士論文を基にしている由)。和辻哲郎といわれても,学生時代に「風土」を読んだ程度で,ほとんどなじみがない。なのになぜこんな本を読んでいるのか自分でもよくわからないが,まあ,面白かったからよしとしよう。
 「光の領国」とはずいぶん文学的な題名だが,これは和辻の倫理学が<民族の一員としてひたすら生を希求する>という人間観に支えられていたことを指している。和辻にとっては近代国家権力もまた光に満ちた生の権力であって,だから権力のコントロールはあまり問題にならない。ふうん。。。
 
 本の本筋とは離れるが,印象に残った部分をメモしておくと: 関東大震災は知識人達に大きな衝撃を与えた。和辻の哲学は震災とともに大きく変貌したし,そのほかにも,たとえば紀平正美というヘーゲル研究者は,助け合いながら避難する人々の姿に感激し,国粋主義者に転じたのだそうである。
 関東大震災が大変な出来事だったことはわかるけど,いったい思想というものは,個別具体的な体験によってそのように変貌してしまうものなのか。もしそうならば,各領域の優れた研究者や芸術家やビジネスマンを無作為に拉致し,LSDとか電気ショックとかでもってとんでもない目にあわせると,まあ多くは死んじゃったり廃人になっちゃったりするけれど,なかには生き延びて革新的な思想を確立しイノベーションを起こす人が現れるのではないだろうか。品種改良のために放射線で人為突然変異を起こすようなものだ。人倫に反する? 社会の発展のためだ,ここはひとつ我慢してもらおう。
 我ながら良いアイデアだと思ったのだが,よく考えてみると,各界の優れた人々を拉致するのは社会的コストが大きすぎるから,むしろ各界のぱっとしない人々を拉致しましょう,ということになるかもしれない。いかん,俺の身に危険が迫る。やはり人倫に反することをしてはいけませんね。
 というようなことをつらつらと考えて過ごした元旦であった。ああ忙しい忙しい。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「光の領国 和辻哲郎」

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