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2012年8月18日 (土)

Bookcover 宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ 検定の巻 (岩波科学ライブラリー) [a]
佐藤 俊哉 / 岩波書店 / 2012-06-06
さきほど帰路に本屋に寄って,面陳されているこの本に気づき,しまったまだ読んでなかった,と慌てて購入。6月には並んでいたはずなのに,うかつであった。
 で,さきほどパラパラめくり始めたが最後,一気に引き込まれてしまい,吹き出したり痺れたり感動したりしながら読了。

 高名な医学統計家がなぜか物語形式でお送りする,ユーモラスかつ斬新な医療統計入門,その第二弾。前著にも大変感銘を受けたのだが,この続編も負けずに素晴らしい。
 この本がいかに奇妙なユーモアと斬新なアイデアに満ちているかを,なにかの拍子にこのブログをお読みの奇特な方にご理解頂くために(そしてあわよくばクリックしてご購入いただくために),冒頭の「これまでのあらすじ」を一ページまるごと引用する。先生,お許し下さい。

 平和を愛するりすりすは [←みよ,この想像を絶する書き出しを],戦争ばかりしている星々を征服し,平和化するために統治していた。進んだ科学力をバックに地球を平和にするため,りすりす星から地球征服にやってきた宇宙怪人しまりす。地球を征服した後には人類を健康に保たなければならない。しかし,かぜや腹痛以外病気らしい病気のないりすりす星では,疫学,医療統計学といった病気の原因を追究して予防に役立てたり,新しいくすりや治療法の効果を調べるための学問だけは遅れていたのだった。このため宇宙怪人しまりすは,地球を征服する前にまず医療統計を勉強するという使命を負っていた。
 このときひとりの医療統計家が地球征服に対し敢然と立ち上がった。医療統計家の先生は,よなよな研究室を訪れる宇宙怪人しまりすに対し医療統計の限りをつくして壮絶な戦いを演じた。タイムマシン,イエッサーと科学の粋を尽くしたしまりすの攻撃を,「割合」と「率」の違いにはじまり,「ランダム化」「交絡」といった大技をくりだし,さらには教育的配慮でかわす先生。[←未読の方は信じがたいだろうが,これは前作についての適切な要約なのである] 両者死力を尽くした戦いののち,自らの卒業発表に征服相手の先生を招くという失策を犯して敗北を喫したしまりすは,りすりす大学みけりす学長の命を受け京都大学に医療統計留学することになり,専門職学位課程の学生として日夜医療統計を学んでいる。
 宇宙怪人しまりすは医療統計専門家になれるのか,はたして地球は征服されてしまうのか。それとも...。ここに再び宇宙怪人と先生の死闘が幕を開ける。

 というわけで,今回のテーマはなんと,いっけん簡単にみえてよく考えるととてつもなくややこしいテーマ,統計的仮説検定である。著者は死力を尽くし,検定とその周辺の諸問題をバランス良く,かつこれでもかとわかりやすく説明してくれる。なんともぜいたくな一冊である。仕事の都合上,統計学のわかりやすい参考書を紹介するよう求められることが時々あって,検定に関してはこれまで吉田寿夫「本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本」を紹介していたのだが,これからは一緒にこの本を紹介しようと思う。どんな極端な統計嫌いでも,これなら喜んで読んでくれるだろう。

 個人的に勉強になった点をいくつかメモしておくと...

 その学問的誠実さゆえにいつも胃に穴を開けそうな「先生」が,エピローグでは意外な決断をする。地球の運命はどうなっちゃうんでしょうか。どうやら第三弾も期待して良さそうだ。

データ解析 - 読了:「宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ 検定の巻」