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2013年1月 7日 (月)

Bookcover まなざしの地獄 [a]
見田 宗介 / 河出書房新社 / 2008-11-07
見田宗介が'73年に発表した,永山則夫を題材に都市を論じた文章を薄い本にしたもの。去年か一昨年あたりにほとんど読み終えていたんだけど,あんまり面白いので憂鬱になって,そのままにしていた。整理の都合上,さきほど再読。

 本筋と関係ない感想としては... 私はいま市場調査に関連した仕事をしていて,この分野では消費者調査を定性調査と定量調査に分類するのだけれど,本来はこれは手法のちがいに過ぎないのであって,だからある調査課題に対して定性的アプローチと定量的アプローチを混在させた分析があってもよいし,元来はそうあるべきだと思うのである。ところが実際には,このふたつを融合するのはとても難しい。
 この本に収められた文章は,永山則夫というエクストリーム・ケース・スタディと,農村から都市に流入した人々についての定量調査の知見とを見事に融合させていて,これはさすがにすごいなあ,と感銘を受けたのだが... こういうのは,分析の力というよりも,むしろ理論的視座の力というべきだろう。

 永山則夫は極貧の崩壊家庭に育ち,幼い兄弟たちだけで網走の冬を過ごしたことさえあった。

N.N [永山則夫] らが一冬を生き永らえたことは,「奇跡に近いこと」であったということを,再度確認しておかなければならない。ここにははっきりと,殺人の未遂が存在したのだ。[...] しかもN.Nの母親がとくに,冷酷な母親であったのではない。このとき私が,そしてあなたが,八人の子供をかかえたこの母親であったとしたら,何を選択しえたであろうか。現実に母親の選んだ道は,この分岐点で,ほとんど最上に近い選択であったのかもしれぬ。にもかかわらずN.Nにしてみれば,この母親は許されない。少なくとも彼が,情況に内在する限り許されない。
 われわれはこの社会の中に涯もなくはりめぐらされた関係の鎖の中で,それぞれの時,それぞれの事態のもとで,「こうするよりほかに仕方がなかった」「面倒をみきれない」事情のゆえに,どれほど多くの人々にとって「許されざる者」であることか。われわれの存在の原罪性とは,なにかある超越的な神を前提とするものではなく,われわれがこの歴史的社会の中で,それぞれの生活の必要の中で,見すててきたものすべてのまなざしの現在性として,われわれの生きる社会の構造そのものに内在する地獄である。


Bookcover 現代日本の政党デモクラシー (岩波新書) [a]
中北 浩爾 / 岩波書店 / 2012-12-21

Bookcover プロメテウスの罠 2 [a]
朝日新聞特別報道部 / 学研マーケティング / 2012-07-03

ノンフィクション(2011-) - 読了:「まなざしの地獄」「現代日本の政党デモクラシー」「プロメテウスの罠2」