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2014年8月27日 (水)

Hampton, K.N., Rainie, L., Lu, W., Dwyer, M., Shin, I., & Purcell, K. (2014). Social Media and the ‘Spiral of Silence.’ Pew Research Center, Washington, DC.
 ピューリサーチセンターの自主調査報告。今日twitterでたまたまリリースを見かけ、あまりに面白そうなので報告書まで探して読んでしまった(なにをやっておるのか)。第一著者のHamptonって人はいまこの分野で活躍している社会学者らしい。
 一言でいっちゃえばSNS利用についての単発の横断調査なんだけど、目のつけどころがすっばらしい。痺れました。

 重要な政治的問題について、人は自分の意見を他者に公開したがるか。かの沈黙の螺旋理論に言わせれば、自分の意見が少数派だと感じるとき、人は自分の意見を公開したがらなくなる。でもSNSの登場により、少数派であっても自分の意見を自由に公表しやすくなり、公共的議論の幅は広がったのではなかろうか。
 というわけで、去年の夏、スノーデン事件を題材に約1800人にRDD調査。主な知見は:

 いやー、ものすごく面白い。もちろんスノーデン事件に限った話だから、むやみに一般化しちゃいけないんだけど、ソーシャルメディアは多様な議論を支えてなどいないんじゃないか、むしろ世論形成の「沈黙の螺旋」メカニズムの一端を担っているんじゃないか... と考えさせられる分析結果である。

 いやはや。プロの研究者の方を相手に失礼な言い方かもしれないが、正直云って、ちょっと悔しい。たった約10問、1800人の調査でコレなのである。
 ノエル=ノイマンの「沈黙の螺旋」という概念を知っている人は多いだろう。また、世の中に広報目的の自主調査をやっている会社はたくさんあるし(市場調査会社もね)、実査だけみればこのくらいの調査は容易である。でも、思いつかないよなあ、この切り口。つくづく思うに、調査の価値ってのは目の付け所で決まるのだ。

論文:その他 - 読了: Hampton, et al. (2014) ソーシャルメディアと「沈黙の螺旋」

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