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2014年11月 6日 (木)

Hox, J.J., de Leeuw, E.D., Brinkhuis, M.J.S. (2010) Analysis models for comparative surveys. Harkness, J.A. et al. (eds.) Survey Methods in Multinational, Multiregional, and Multicultural Contexts. Chapter 21. John Wiley & Sons.
 先日買った論文集から。別にいま読まなくてもいいんだけど、高い本を買ったモトを取らねばならぬがゆえに...
 多国間調査に関するこの分厚い論文集の、分析のパートの各論のひとつ。著者らはユトレヒト大の人らしい。

 冒頭でいわく、多国間比較調査には主に3つの統計的課題がある。その1、測定不変性。その2、ある国においてみられる個人レベルの関係性が他の国でもみられるか。その3、国レベルで安定的な関係性がみられるか。
 これらの課題に対する武器は、まずは多群SEMである(IRTを含む)。でも国数が多くなると大変。次の武器は、国の効果を固定効果から変量効果に変えちまうこと、すなわちマルチレベル化である。20ヶ国もあれば国レベルでもモデリングが可能になる(←シミュレーション研究をやった由。Maas & Hox, 2005)。さらに最近では潜在クラスモデル(LCM)という手もある。
 というわけで、本章では多群SEM, MSEM(マルチレベルSEM), LCMを紹介し比較します。

 まずはSEMの説明。パス図で丸は潜在変数だよ、なんてところからはじめて、2頁で駆け足のSEM入門。いったい想定読者は誰なんだ。
 で、多群SEMにおけるfunctional(factorial)/metric/scalar equivalenceの説明。残念ながら用語が統一されていないんだよね、云々。
 次、MSEMの説明。一番ポピュラーなのは単変量の階層回帰で... これをMSEMに拡張できて... 云々。パス図はMuthen一派風に、レベルを点線で分け、下のレベルのランダム係数は黒丸、という描き方をしている。
 次、LCMの説明。まず局所独立性とかの駆け足説明があって... 著者らがいわんとしているLCMとは、要するに因子負荷が潜在クラスによって異なるようなCFAのことで、著者らも途中でそう呼んでいるけど、潜在クラスSEMって呼ぶほうがわかりやすいかも。

 簡単なシミュレーションの紹介。データ生成モデルを4指標1因子CFAとし、ある指標の負荷を半分の国でこっそり変えたり変えなかったりする。MVNな誤差を乗せて、国あたりn=1500, 国の数を20, 30, 40と動かす。metric equivalentな1因子CFAを推定したとき、パラメータ推定はどうなるか。
 結果。データ生成モデルがmetric equivalentだったら、多群SEM, マルチレベルSEM, 1クラスLCAのいずれもうまくいく。ただし、国数が20だとMSEMでSEが過大評価される(悲観的な方向にバイアスがかかる)。いっぽう、データが実はmetric equivalentでなかったら、それに気づくのは難しい。多群SEMのみカイ二乗検定で引っかかるけど(サンプルサイズがでかいからさ、と無視されるでしょうね、普通)、適合度は下がんない。みなさい、大域的適合度を過信してはいかんですよ、とのこと。まぁね、そうかもね。でもこの実験だと、ひとつの指標の負荷だけが+0.5から+0.3にすり替えられているだけだから、まあしょうがないかな...

 実データへの適用例。ESS(European Social Survey)、22ヶ国のデータ、約4万人。「宗教への関与」4項目を使う(11件法と7件法が混在)。先行研究では、部分測定不変な1因子モデルがあてはまるといわれている由。3つの方法それぞれで試す。面倒になってきたし、なにより眠いもので適当に読み飛ばした。まあそれぞれ長短あるよね、という話である。
 最後にソフトウェア。Mplus最強!GLLAMM最強!との仰せでありました。GLLAMMってのはStataのパッケージ。

 どのレベルの読者を想定しているのかよくわからない文章だったのだが、まぁ、後半の実データ分析例は、自分で分析してて困ったときに心の支えになるかも。ならないかも。
 最後にちらっと触れられているけど、たとえばLCMをマルチレベル化したっていいわけで、SEMの枠組みでの多国間調査データ分析には、他にももっといろんな可能性があると思う。

論文:データ解析 - 読了:Hox, de Leeuw, Brinkhuis (2010) 国と国とを比較する方法を比較しよう (多群SEM vs. マルチレベルSEM vs. 潜在クラスモデル)