« 読了:Ram, Brose, Molenaar (2013) 動的因子分析による個人の心的過程のモデル化 | メイン | 読了:Hox, de Leeuw, Brinkhuis (2010) 国と国とを比較する方法を比較しよう (多群SEM vs. マルチレベルSEM vs. 潜在クラスモデル) »
2014年10月31日 (金)
Braun, M., Johnson, T.P. (2010) An illustrative review of techniques for detecting inequivalences. Harkness, J.A. et al. (eds.) Survey Methods in Multinational, Multiregional, and Multicultural Contexts. Chapter 20. John Wiley & Sons.
仕事の都合でざっと目を通した。
この本は2008年にベルリンで開かれたInternational Conference on Survey Methods in Multinational, Multiregional, and Multicultural Contexts (3MC)というカンファレンスの論文集。この会議自体はAAPORとかASAとかの協賛で開かれたものだが、調べてみたら、現在はブリュッセルのComparative Survey Design and Implementation (CSDI) という組織が毎年ワークショップを開いており(来年は5月にロンドン)、2016年には第二回の3MCカンファレンスをシカゴで開くらしい。
この章は分析のパートの総論に相当していて、このあとに各論として、多群多レベルのSEMやLCAについての章、多項IRTでDIFを調べるという章、MMTM行列でなにかをどうにかしますという章(うぉう、LCA関連で名前をよく見るHagenaarsさんだ)、定量と定性をあわせてなにかをどうにかするという章が続く。
多国間調査のデータを国のあいだで比較できるか? それを調べる手法を片っ端から紹介する。例に使うデータはISSP国際比較調査のジェンダー役割の項目(4項目)と、ベンチマークに使うジェンダーイデオロギーの項目(1項目)。西ドイツ、US, カナダを比較する。
紹介する手法は...
- 回答カテゴリ(無回答を含む)への回答分布を比較する。
- 平均を比較する。
- ベンチマーク項目との相関を比較する。
- 説明変数との相関を比較する。例に挙げているのは年齢との相関。
- 交互作用プロット。具体的には、国を層、年代を横軸、回答の平均を縦軸、項目を線にした折れ線グラフ。
- 探索的因子分析。バリマクス回転後の第一因子負荷を比べている。
- 信頼性。アルファなんかを比べる。
- 多重コレスポンデンス分析 (MCA)。なにやんのかと思ったら、4項目の回答カテゴリ(5件法だから計20個)の布置を国別に描いて見比べるのである。定性的だねえ...
- 多次元尺度構成法 (MDS)。やはり布置を国別に見比べるのであろう。
- 多群CFA (やれやれ、やっとそれらしい話題になってきたぞ)。怪しい項目を外して適合度の変化を見たりしている。
- マルチレベルモデル。いきなり3pにわたって説明が繰り広げられている。著者らオススメ?の手続きについてメモしておくと... まずは従属変数だけで単純な分散成分モデルを組み、国内の分散と国間の分散を比べる。次に、個人レベルの説明変数を投入。最後に、国レベルの説明変数を投入。ここまでをランダム切片モデルでやる。ランダム傾きを導入するのはさらにその後だ、とのこと。うーん、仰りたいことはわかるけど、建前としては、モデル構築の順序は文化差についての実質的知識で決まる問題じゃないかしらん。
- 項目反応モデル。1パラメータIRTと2パラメータIRTのICCを国ごとに示している。単に見比べるだけ。通常の概説では2パラメータのモデルだけ紹介されることが多いと思うが、ここでは対等に扱われている。ヨーロッパの人はラッシュモデルが好きだと聞いたことがあるのだけど、ほんとかもしれない(第一著者の所属はドイツ)。
最後に星取表。表頭に{分布・平均・相関、EFA, 信頼性, MCAとMDS、多群CFA、マルチレベル, IRT}の7つをとり、表側に{クイックに概観できるか、国の数が多くても大丈夫か、個人を同定するか、国を通じた要約が出るか、項目レベルかテストレベルか}をとって表をつくっている。まあだいたい想像がつく内容なので省略。
途中でだんだん関心を失くして適当に目を通してしまった。まあいいや、次に行こう。
論文:データ解析(-2014) - 読了:Braun & Johnson (2010) 多国間調査のデータを国と国の間で比較できるかどうかを調べる方法を総ざらえ