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2015年1月14日 (水)

原稿の都合で読んで、記録してなかった論文を総ざらえ。

Barsalou, L.W. (2008) Grounded Cogntion. Annual Review of Psychology, 59, 617-645.
 認知心理学の巨頭 Barsalou さんがお送りするレビュー。ガチの心理学の話なので敬遠したかったのだが、原稿の都合で無理やり読んだ。18頁に内容が詰め込まれており、レビューというよりレファレンスという感じなので、途中からメモも簡略化。

1. grounded cognitionとはなにか?
認知の標準的理論によれば知識表象はアモーダルである。これに対してgrounded cognition(以下GC)は、いろいろあるけど、アモーダル表象を否定するか、モーダル表象と共働すると考える。また、身体の役割を重視したり、シミュレーションの役割を重視したり(心的イメージを含む)、situated actionや社会的相互作用や環境を重視したりする。こういうのをひっくるめて「身体化認知」と呼ぶのはよくない(身体はgroundのひとつにすぎないから)。
1.1 grounded cognitionの源流: [歴史の話。略] 近年GCは認知革命に挑戦している。論点は(1)アモーダル表象の存在を支持する証拠は弱い。(2)知覚・認知・行為の間のインターフェイスをうまく説明できない。(3)アモーダル表象の神経基盤がわからない。
1.2 grounded cogntionに対するよくある誤解: (1)経験主義・反生得主義だ。(2)ただのイメージ記録システムであってイメージを解釈できない。(3)感覚運動表象だけをつかって知識を表象しようとするから抽象概念を表象できない。(4)シミュレーションで経験を完全に再現できると思っている。以上、全部誤解だ。

2. grounded cognitionの諸理論
2.1. 認知言語学。: [Lakoff&JohnsonとかLangackerとかとかとか。略]
2.2. situated actionの諸理論。: [Andy Clark, Thelen, Brooksなど。ロボティクスとかダイナミック・システムとか。略]
2.3. 認知的シミュレーションの諸理論。: (1)Barsalouの知覚シンボルシステム(PSS)。シンボル機能を維持するが、概念とタイプのかわりにシミュレーションシステムを置く。高次知覚、潜在記憶、作業記憶、などなど様々な認知機能は、マルチモーダルな状態を捉えたりシミュレートしたりするメカニズムの違いとして統一的に説明される。云々。(2)Glenberg, Rubinの記憶理論 [略]。
2.4. 社会的シミュレーションの諸理論。: [ミラーニューロンがどうのこうの。略]

3. 実証的証拠
3.1. 知覚と行為: (1)知覚的推論。過去の知覚経験のシミュレーションに基づき知覚的推論が生じる。(2)知覚-運動協応。[ここ、短いけど、運動流暢性効果などの研究がずらずらっと挙げられている。おおお。あとでチェックしよう] (3)空間の知覚。身体によって構成されている。
3.2. 記憶: (1)潜在記憶。その中心は知覚記憶のシミュレーションである[研究がずらっと。略] (2)顕在記憶。エピソード再生においては過去経験のシミュレーションが、未来の構築においてもシミュレーションがはたらいている。モダリティは単一でも記憶は脳に分散している。などなど。(4)作業記憶。視覚的イメージ、運動イメージ etc. 図形の心的回転にもそれを動かす運動のシミュレーションが関与している [へー]。
3.3. 知識と概念的処理: この分野でシミュレーションの役割を指摘する研究は比較的に新しい。(1)行動的な証拠。(2)脳損傷からの証拠。(3)ニューロイメージングからの証拠。
3.4. 言語理解: (1)状況モデル。(2)知覚的シミュレーション。(3)運動シミュレーション。(4)情緒的シミュレーション。(5)ジェスチャー。
3.5. 思考: (1)物理的推論。(2)抽象的推論。Boroditskyのmoved foward two daysの実験とか。
3.6. 社会的認知: (1)身体化の効果。elderを活性化すると歩くのが遅くなるとか。腕で感情をプライムするとか。Smith&Semin(2004,Adv.Exp.Soc.Psych.)というレビューがある由。(2)社会的ミラーリング。
3.7. 発達: 乳児のミラーリングとか、いろいろ。

4. 理論・実証上の諸問題。これから以下の点が課題になる。

5. 方法論的諸問題
5.1. 計算理論と形式理論。grounded cogntionを示すのはもういいかげんにして、計算理論をつくんなきゃ。
5.2. 説明の原理とレベルの統合: 神経科学との統合。知覚、行為、内省の統合。認知、社会、発達の統合。ロボティクスとの統合。
5.3. 古典的研究パラダイムのgrounding: たとえば、再認記憶とか、プロダクション・システムとか。

論文:心理 - 読了:Barsalou (2008) Grounded Cogntion レビュー

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