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2018年10月23日 (火)

citizen forecasting論文読み祭りのメモ整理。自分の分析のほうが、なにがなんだかわけがわからなくなってしまったので、原点に戻って...

Lewis-Beck, M.S., Skalaban, A. (1989) Citizen forecasting: Can voters see into the future? British Journal of Political Science, 19(1), 146-153.
おそらくcitizen forecastingを研究テーマとした最初の論文。たしか前に目を通した覚えはあるんだけど...

 対象はUS大統領選。American National Election Studiesでは「誰が大統領になると思いますか」という設問をずっと訊いていた。集計すると、結構当たっている。

 個人レベルでモデルを組んでみた。予測(正解を+1, 不正解を-1)を目的変数、{政党支持、関与、関心、メディア接触、政治が複雑だと思うか}を説明変数にとったOLS回帰モデル、選挙ごとに推定した。整合的な知見はない。[二値変数を目的変数にとったOLS回帰? 著者が著者でなければ、おいおい素人か、と思ってしまうところだ。プロビットやロジットもやったけど結果は同じである由]

 今度は{政党支持、投票先意向、学歴、調査時点}を説明変数にとってみた。高学歴だと正解しやすい。投票日が近いと正解しやすい。
 
 集団レベルではよく当たるのはなぜか。選挙を分析単位として、正解者率を目的変数、勝った政党の得票率を説明率にとった単回帰ではR二乗が0.9。つまり差があるほど予測しやすい。[←そうそう、前にこれ読んだときは、なにこのモデル、アホちゃうかと思ったのだが、いまになって読むと「嗚呼、苦労してはるなあ」と涙ちょちょぎれる思いである]

 結論。
 投票者による選挙結果の予測を社会文化的諸属性が拡張する。接戦の程度も効果を持つ。投票者はアホではなく[←ほんとにこう書いてある]、結果をある程度理解しているのだが、しかしシニカルでもないので、投票に行くのである。

 ... こうして読み直してみると、この短い論文というかノートの段階で、ぱっと思いつく論点はだいたい網羅されていたのであった。
 「選挙結果が僅差だと個人の予測は外れやすい」というのも、正直「そりゃそうだろうよ」という話に聞こえるけど、この時点でのこの研究の文脈では、おそらく意味のあるステートメントだったのだろうと思う。想像するに、「投票者は選挙結果がわからないからこそ投票に行くのだ」というような対抗的な想定があったのではないか。
 いっぽうここに出現しないのは、スロウィッキーとかスコット・ペイジのような「群衆の知恵」という視点、集団の予測能力が個人の予測能力の総和を超えるという視点である。

論文:予測市場 - 読了:Lewis-Beck & Skalaban (1989) 選挙予測のcitizen forecasting (記念すべき第一弾)