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2019年5月18日 (土)
Collins, M.G., Waters, L.K. (1986) Effects of type of comparative advertisement on responses to the advertisement and the advertised product. Psychological Reports. 59. 495-501.
比較広告についての実験研究のピークはたぶん80年代なので、仕方がないんだけど、なんだか考古学者みたいな気分になってきた...
いわく。
もともとWilkie & Farris (1975 J.Mktg.)は、比較広告をこう定義していた: compares two or more specifically named or recognizably presented brands of the same generic product class and makes such a comparison in terms of on or more specific attributes of the product.
これは流石に狭かろうというので、Shimp (1978, J.Adv.)は比較広告をつぎの4つにわけた。Wilkie-Farrisの定義は(1)にあたる。
- (1)complete comparative advertising. どっちのブランド名も、また比較している属性も明示。
- (2)incomplete comparison attribute advertising. どっちのブランド名も出ているが、なにについての比較かは明示しない。
- (3)incomplete comparison object advertising. 競合側のブランド名は出さないが属性の名前は出す。「うちはどこよりも安い!」ってやつですね。
- (4)incomplete advertising. ブランド名も属性名も出さない。
[ちょっと先行研究概観があって...]
実験やります。
被験者は学生320名。ブックレットを渡す。架空の広告が5つ載ってて、4番目がターゲットの広告。でもって質問紙。広告について4項目, 製品について4項目。
要因は、製品{カメラ, 洗口剤}, ブランド{実在, 架空}, 比較広告のタイプ(4)。すべて被験者間。
項目セットを目的変数、3要因を説明変数にしたMANOVAをやったら...[以下、数表無しで延々書いてあるので読み飛ばした]
考察。
比較している属性が明示されていないと信頼性が下がった。比較広告の知覚はタイプによって異なる。
いっぽう、先行研究とは異なり、競合ブランド名の明示/非明示は製品知覚に影響しなかった。比較広告のタイプは製品知覚にはあまり効かない模様。この実験では1回見たきりだからかもしれない。
云々。
... なんというか、科学論文の書き方というのは、領域だけではなく時代によってもちがうものだなあ... と思って読んでたんだけど、よくみたら1986年、そこまで昔の論文じゃない。単にこの雑誌がユルいのかもしれない。50年代からある老舗で、てっきりとっくに廃刊したと思っていたが、いま調べたらまだ続いている模様。IF 0.667という風情のあるたたずまいである。
論文:マーケティング - 読了:Collins & Waters (1986) 比較広告を4タイプにわけ、効果の違いを実験で調べました