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2005年6月23日 (木)

Prais, S.J. (2003) Cautions on OECD's recent educational survey (PISA): rejoinder to OECD's response.
Oxford Review of Education, 29(3), 569-573.
 PISAを批判したPrais(2003),返答したAdams(2003)に引き続く再反論。これはPISAのサイトに載ってなかったので(ははは),非常勤先で取り寄せてもらった。
 (1) PISAが「生きる力」に焦点を当てるのは結構だが,それにしか焦点を当てないのはひどい。(2)教育の改善のためには対象を年齢ではなく学年で区切るべきだ。(1)(2)のせいで,ほかの調査と比較できないじゃないですか。(3)参加率が低いことによるバイアスがないとはいえまい。(4)項目反応理論だかなんだか知らんが,生徒の成績じゃなくて各項目の通過率を国際比較すべきだ。(5)90年に我々が調査したときは英国よりスイスのほうが上だったのに,なぜPISAでは逆なのだ。
 (1)(2)の論点は本質的批判ではないと思う。金が掛かる割には役に立たんというご批判ならば,「こんなに金がかかっているのよ」「なのに全然役に立ってないのよ」という二点について証拠を出すべきところだ。(3)は議論をちゃんと追いかけてないからわからないが,データがない分弱そうだ。PISA側がバイアスがないというデータを出してきてるんだから,いやありますよというデータで対抗するのが筋だろう。(4)はなんだかレベルが低い。著者はえらい経済学者らしいが,経済学者がデータ解析に強いとは限らないようだ。(5)にいたっては,なんと言うか...既存の調査と違う結果を出したというだけで叱られたのではたまらない。
 というわけで,せっかく取り寄せたのに,かなりがっくりとさせられる内容であった。えらそうだね,おい。
 Goldsteinという人がPISA調査の解析上の問題点を指摘している,ということがわかったので,まあよしとしよう。この人はMLwinをつくった人らしいし,期待できそうだ。

大した仕事もせず,こんな論文を読んだりしている今日この頃である。せっかく一会社員として更生しようと思ったのに,世の中なにがなんだかわからない。クビになっても不思議じゃないねえ。

論文:教育 - 読了:06/23

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