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2006年8月31日 (木)
ヴィゴーツキー心理学完全読本―「最近接発達の領域」と「内言」の概念を読み解く
[a]
中村 和夫 / 新読書社 / 2004-11
本棚に差しこまれているのを見つけて,なんとなくめくった。薄い本なのでそのまま読了。
ヴィゴツキーに依拠して発達を考える,という本ではなく,とにかくヴィゴツキー様がなにを考えておられたかについて誠心誠意考える,という本。
前半は「発達の最近接領域」概念についての議論。ヴィゴツキーが問題にしているのはあくまで学校教育における科学的知識の教授についてあった由。それを(M.コールのように)発達全般に一般化して捉えてしまっては,ヴィゴツキーの独創性が見失われてしまうのだそうだ。ふうん。
後半は「内言」についての議論で,読んでいてだんだん頭が混乱してきてしまった。
意味論の教科書には,「Ogden&Richardsの三角形」という図が出てくることがある。意味ということばの多義性を捉える枠組みとして,思考内容・記号・指示対象の三項からなる三角形を考える,という話だ。この図式に従っていえば,現代の言語学なり分析哲学なりでいうところの「意味」概念は,記号と指示対象を結ぶ辺に重心を移している,ということになると思う。ことばの意味とはそれが引き起こす思考内容そのものだ,なんて言い方は,たちまちウィトゲンシュタインの意味=心像説批判の前に躓いてしまうだろう。
いっぽうこの本では,正々堂々と「内言の意味とはすなわちイメージだ」なんて書いてあるわけで,ちょっとクラクラしてしまうのである。これは良し悪しの問題ではなくて,単に意味ということばの使われ方が違うだけなのだろうし,それはそれでいいんだけど,なんだかなあ,なにか別のことばを使ってくれるとわかりやすいのになあ,とも思う。
心理・教育 - 読了:08/30まで (P)