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2006年11月25日 (土)
Rockhill, B., Newman, B, & Weinberg, C. (1998) Use and misuse of population attributable fractions. American Journal of Public Health. 88(1): 15–19.
[背景] 人口における疾病リスクのうち,リスク要因の因果的効果に帰属されうる割合のことを人口寄与部分(Population Attributable Fractions)という(人口寄与リスク,人口寄与リスク割合,超過部分ともいう)。この指標は<もし問題の要因への曝露を除去することができたら,一定の時間幅のあいだの疾病リスクの平均が何割減っただろうか>というかたちで定義されることが多い。<曝露の除去によって防げていたはずの症例数の割合>としても解釈できる。(ここでいうリスクとは正確には「リスクの部分」のことであるからして,よく用いられる「人口寄与リスク」という言葉は不正確である。)
[計算方法] 疾病D, リスク要因への曝露をE, 交絡要因をCとすると,人口寄与部分は
{(疾病確率)-(交絡要因の水準を通して平均した,非曝露時の疾病確率)} / (疾病確率)
={P(D) - \sum_C P(D|notC, notE) P(C) } / P(D)
となる。その推定式にはいろいろあるけど,たとえば以下。
a) {(疾病率)-(非曝露群の疾病率)}/(疾病率)
※疾病率が低ければ,{(発症率)-(非曝露群の発症率)}/(発症率) で近似できる
b) {(曝露率)×((リスク比)-1)}/{(曝露率)×((リスク比)-1)+1}
[分散的特性] 人口寄与部分は曝露カテゴリ特定な寄与割合(もしその曝露カテゴリだけが非曝露群にシフトしたら,疾病リスクが何割減るか)の合計であるといえる。曝露の定義が包括的になるほど,人口寄与部分は増える。しかし同時に,曝露群の割合が5割を越えて増えるにつれて,人口寄与部分の標準誤差は増え,正確でなくなってしまう。
[計算の誤り] (略)
[概念的問題]
- <複数のリスク要因についてそれぞれの人口寄与割合を求め,それを合計する>のはよくある誤りである。1を越えても知らないぞ。
- Seidman et al. は,10個の乳ガンリスク要因の人口寄与割合を,30-54歳女性において0.21, 55-84歳女性において0.29と推定している。ここで彼らが「たいていの乳ガンはリスク要因がない女性において起きるのだ」といっているのは間違いである。人口寄与割合は患者におけるリスク要因への曝露率ではないからだ(現に,患者のなかでリスク要因を一つでも持っている人の割合は,0.76, 0.82である)。さらに,患者の約1/4についてその原因が特定できた,というのも間違いである。人口寄与割合は,当該のリスク要因を取り除いたら患者の1/4が取り除かれていただろう,ということにすぎず,そのリスク要因によって引き起こされた患者とそれ以外の患者を区別してくれるわけではない。
- 人口寄与割合が役に立つのは,関心のあるリスク要因とエンドポイントとの間に明確な因果的関連があり,かつ曝露にたいして介入が可能だというコンセンサスがあるときである。しかし多くの場合,修正不能な属性や疾病の前臨床マーカを,リスク要因の代理変数として用いた分析が行われてしまっている。乳ガンに対する結婚の人口寄与割合だとかなんとか。
- 公衆衛生における介入方略の優先順位をつける際には,曝露-非曝露のカットオフポイントは現実的観点から定義しなければならない。たいていの症例は,平均的なリスク要因の持ち主から生まれている。慢性病についての人口寄与割合は,"曝露"の定義をよほど緩くしないと高くならないし,そうすると,誰も彼もを非曝露群にシフトさせないといけないという話になってしまう。
- 人口寄与割合を,リスク要因によって"説明"された患者の割合だと述べると,混乱を招く。"説明"をそのような意味で用いるなら,「15歳以上であること」を乳ガンのリスク要因だとみなせば,すべての患者はこの要因で"説明"できることになってしまう。
いわゆるPAR%の誤用についての短いコメント。仕事の都合で読んだ。あれこれ探したところ,population attributable riskよりもpopulation attributable fractionのほうが検索にひっかかりやすい。へー。
リスク要因の代理変数についてPARを求めるのは誤用だ,というのは納得だが(抑うつと肥満に対するSESのPARだなんて,調べてどうすんじゃと思うわね,確かに),じゃあそういうときは何を使えば良いのだろうか。単にリスク比を使えということだろうか。知識がないのでわからないぜ。
論文:データ解析(-2014) - 読了:11/25まで (A)