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2007年5月20日 (日)
大いなる眠り (創元推理文庫 131-1)
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レイモンド・チャンドラー / 東京創元社 / 1959-08
15年前だか20年前だか,とにかく大昔,昼下がりにふとテレビをつけたら古い映画をやっていて,茶色っぽい画面のなかでは口ひげを生やした男がハンドルを握っており,納谷悟朗の声のナレーションが,どうせみんないつかは死んじゃうんだ,という意味のことを重々しく述べていた。ふいに画面はCMに切り替わり,そのまま映画は終わってしまったので,筋はまったくわからなかったのだが,そのナレーションの最後の台詞,大いなる眠りを待つのだ,という言い回しが妙に心に残って,その後なにかの拍子にふと口ずさむことがあった。
ずっと後になって,あの映画はたぶんチャンドラーの「大いなる眠り」を映画化したものなのだろう,と気が付いた。調べてみると,たしかにこの小説は,ボカートの「三つ数えろ」の原作になっただけではなく,70年代になってからロバート・ミッチャム主演で映画化されている。
なにか面倒な事や腹の立つ事,やるせないことが起きると,心の中で銭形警部の声を真似て,誰も彼も結局のところは「大いなる眠りを待つのだ」,と呟いてみることがあったように思う。とはいえ,俺はマーロウではないし,世の中はチャンドラーの小説よりもずっとずっと味気なくてつまらなくて,散文的なものであるように思われる。
フィクション - 読了:05/20まで (F)