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2007年6月15日 (金)
Jarvis, C.B., MacKenzie, S.B., & Podsakoff, P.M. (2003) A critical review of construct indicators and measurement model misspecification in marketing and consumer research. Journal of Consumer Research, 30, 199-218.
測定モデルにおいて,指標をformativeだとみなすかreflectiveだとみなすかを正しく定めることはとても大事だ。本論文では[測定モデルの2つのタイプ,その概念的区別] (略)
- 決定に際しての概念的基準を示します
- マーケティング分野で測定モデルを誤って指定している例をレビューします
- 誤って指定するとどんな目にあうのかシミュレーションしてみます
- formativeなモデリングの際のアドバイスを示します
[formative指標モデルとreflective指標モデルを区別する基準]どれかに答えられなかったり,答えが矛盾していたりするのは,構成概念がうまく定義できていないからだ。
- 概念的にいって,指標と構成概念の間の因果関係はどちら向きか
- 指標は入れ替え可能か(formative指標はほかの指標と入れ替えられない)
- 指標は共変するはずか(reflective指標は共変するはず)
- 各指標の因果的先件と帰結は指標間で同一か (reflective指標なら同一)
[多次元的な構成概念]
マーケティング分野での構成概念は抽象度が高く,そのため多次元的であることが多い。これを二次因子モデルで指定する場合,一次因子が{reflective/formative}×二次因子が{reflective/formative}の4通りがありうる。(それぞれについての実例を紹介。略)
[マーケティング文献のレビュー]
J. Consumer Res., J. Marketing, J. Marketing Res., Marketing Sci.の4誌の1977年以降の論文178本から,構成概念1192個を取り出し,どのようにモデル化されているか,本当はどのようにモデル化すべきだったか,の2点を調べた。68%が正しくreflective, 28%が誤ってreflective, 3%が正しくformative, 1%が誤ってformativeであった。(正しくformativeなモデルの実例を紹介。略)
[モデルの誤指定はどのくらい深刻な問題か?]
formativeな構成概念を含んだモデルから共分散行列をつくり,当該の構成概念をreflectiveだとみなしたモデルで分析する,というモンテカルロ・シミュレーションを行った。モデルが間違っていると,構成概念間のパラメータ推定にとても大きなバイアスが生じた。しかもモデルを誤指定しているということは適合度指標からはわからなかった。
[formativeなモデルをつくるときのお勧め][結論] (略)
- モデルを同定可能にするコツ: reflective指標を2つ付け加えるのがお勧め。例: 顧客満足なら全体的満足度や好意度を付け加えるとよかろう。
- 外生変数間相関のモデル化: SEMではふつう外生変数間の共分散を自由推定する。これをformative指標モデルにそのままあてはめると,formativeな指標は外生変数なので,仮説のない共分散が無数に生まれてしまう。それらを0に固定するのも筋が通らないし,すべて推定するとモデルの倹約性が失われる。対策:モデルに少しづつ追加して,適合度指標の変化を見ると良い。ないしRNFIやRPNFIのような指標をつかうと良い。
formative/reflective論文の第二弾。マーケティング分野向けの啓蒙論文という感じで,Edwards & Bagozziを読んだ直後だからあまり得るところがなかったが,formativeなモデルをどうやって同定可能にするか,という話は役に立った。悩んでるのは俺だけじゃないのね。
過去論文を集計するくだりでこんな話が出てきた。一般に,心理学的構成概念はreflectiveにするのが自然で,いっぽう経営上の構成概念(業務の成果とか)はformativeにするのが自然であることが多い由。なるほど,なんとなくわかるような気がするけど,たとえばお店の顧客満足のような心理的概念であっても,もし指標が「レジの前の列が短い」「店内が清潔だ」というような項目だったら,それはやっぱしformativeにモデル化すべきだろう。やっぱし結局は,概念と指標の性質によるとしかいいようがないと思う。
論文:データ解析(-2014) - 読了:06/15 (A)