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2007年6月22日 (金)

 一昨年の春に大学を引き払ってサラリーマンの真似事をはじめたとき,もうこれからは専門書や雑誌論文を読むことなどないだろう,と思ったものである。
 俺の予測は大抵外れるのだが,この点についてもまたそうだった。今に至ってもなんだかんだで,心理学系の本を買い込むことがある(これはまあ,大学の仕事を細々と続けているせいもある)。平日の会社勤めでも,その勤務時間の何パーセントかは資料探しに費やしており,探し回った末ようやくみつけた資料が結果的に心理学の論文であった,ということもたまにある。なんというか,残尿感あふれる人生だ。
 で,こういう立場になって気が付いたんだけど,学術論文というのはなかなか手に入れにくいものである。たとえば"Psychological Review"という雑誌は,心理学分野で最高峰の学術誌であって,心理学科のある大学ならばまちがいなく購入している。ここに載っている論文が手に入らないという事態は,ちょっと想像がつかない(まあ,手に入れても読むかどうかは別の問題だけど)。ところが実はこれは,大学に籍がある人に限った話だ。いま一人の市民が突然に,"Psychological Review"掲載の論文を,なぜか読んでみたくなった,としましょう 。近所の公立図書館には? あるわけがない。もっと大きな図書館に行けば? 都立図書館(中央,日比谷,多摩)にもない。では大学の図書館は? 残念ながら,基本的に大学図書館は一般市民に開放されていない。案外に困難な道のりなのである。
 とはいえ,世の中は少しづつ進歩している。まず,国公立大学の図書館は一般市民の利用を認めはじめているようだ。先日ためしに一橋大の図書館に行ってみたら,拍子抜けするくらいにあっさりと入館させてくれて,本当に助かった。さらに,ちょっと時間がかかるけど,国会図書館関西館に申し込んでコピーをとって頂く,という手もある(笑っちゃうくらいに丁寧な梱包で送ってきてくれる)。もしお金が有り余っているのなら,何十ドルだか支払って,電子ジャーナルサービスでPDFファイルを買うこともできるだろう。
 問題は,もう少しマイナーな雑誌の論文を入手する場合である。国会図書館が購入している英文誌は案外少ない。うまいこと大学図書館に忍び込めても,そこで購入していない雑誌だったらもうお手上げである(さすがに,学外者のために資料取り寄せまで提供してくれる大学図書館はみあたらない)。PDFファイルをオンデマンドで買えるかどうかは雑誌次第だし,買えたとしても馬鹿みたいに高い。

 皮肉なことに,これならすぐに役立つはずだ,急いで読んでおきたい,という論文は,権威の高い雑誌にではなく,ちょっとマイナーな雑誌に載っていることが多いのである。俺の場合は,非常勤先の大学の図書館に取り寄せを頼むという最終手段があるけれど,大学によっては非常勤講師の依頼を受けないところもあるようだ。非常勤を掛け持ちして食べている人々や,俺のように一般企業で這いつくばるように働いている人々は,いったいどうしているんだろうか。聞いてみたいものだ。

 。。。と書いていたら,なんと,欲しい論文がいま手元に届いた。ダメもとで著者様に「PDFファイルプリーズ」と頼んでみたら,即座に送ってよこしたのである。ありがたや,ありがたや。直接頼んじゃうという方法もあるなあ。

雑記 - その論文をどうやって手に入れるか

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