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2007年7月17日 (火)

 閉店間際のコーヒーショップのソファー席に腰を下ろし,コーヒーを一口啜ってカップをテーブルに置いたところで,どさっという音がして,左足が付け根から外れた。見下ろすと,ちぎれた太ももがジーンズのなかに引っかかり倒れかかっていて,足のかたちが不自然に歪んでいる。次第に鈍い痛みが広がりはじめる。困ったな,どうしたものか,ともう一度コーヒーを啜り,それから身体を屈めて,両手ですそを押し下げるようにして,ちぎれた足を押し上げようとするのだけれど,断面と断面の間に布がはさまってしまい,元通りにはつながらない。ポケットの下あたりから滲み出てきた血が,栓を抜いたように噴き出してきて,もう自分のものではなくなってしまった踵を伝って流れだし,床一面に黒く広がる。その速度はあり得ないほどに速い。これはもう駄目だ。このまま目を閉じてじっとしていよう,次第に寒くなってきたことだし,などと考えたところで,お客様申し訳ありませんが閉店のお時間です,と若いハンサムな店員に起こされた。はっと息を飲んで見下ろすと,一口しか口を付けていないコーヒーカップがあって,間髪入れずに店員が,そのままで結構です,ありがとうございました,と云った。
 物音に飛び跳ねて逃げていく鼠のように店の外に出て,歩道でようやく歩みを緩めながら,これでは駄目なんだ,と思った。人々が希望の夢,成功の夢を見ているとき,俺は突然に身体中の血を流して倒れたり,なにかに全身を押しつぶされたり,狙撃者にこめかみを打ち抜かれたり,そんな白日夢ばかりを見ている。これでは駄目なのだ。それはわかっている。でも一体どうすればいい?

雑記 - 睡眠不足

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