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2007年8月12日 (日)

Bookcoverウォルマートに呑みこまれる世界[a]
チャールズ・フィッシュマン / ダイヤモンド社 / 2007-08
原題は"Wallmart Effect". ウォルマート批判のための本ではなく,ウォルマートが世界にどのような影響を及ぼしているか,その光と影を描いたノンフィクション作品。これは良い本であった。
 ウォルマートは邪悪な組織というわけではなく,ある意味で正直な企業文化を持っている。ある町にウォルマートが参入し,他の小売業者をことごとく潰して独占状態に入ったとしても,そこで価格を吊り上げたりするわけではない。ウォルマートは自社の価値観(EDLP)を徹底しつづけているだけだ。問題はこの企業があまりに巨大化してしまい,その影響力を誰もコントロールできなくなってしまっているという点にあるのだ。云々。なるほどなあ。
 ウォルマートに関する経済学的研究について紹介するくだり(6章),レベルを下げることなくかみ砕いていて,なかなかこうは書けないものだ,と感心した。2006年にMarketing Scienceに載った論文は,競合小売業者のID-POSデータを分析し,ウォルマートの参入によって売上高が減少するのは客数の減少によること,鞍替えする客は一度にたくさん買い物する人であること(逆に生鮮を良く買う客は鞍替えしにくい),自宅から店までの距離は無関係であること,などを明らかにしているそうである。うわあ,面白い。。。いつかPOSデータの分析をやってみたいものだ。

 前からずっと不思議なんだけど,ウォルマートはなぜ日本で成功していないのだろうか。西友の組織改革が困難だからだろうか? 経営権を握ってからもう5年経っているのに。それともEDLPが日本人にあわないのだろうか? オーケーストアはEDLPで急成長しているのに。ほんとに不思議だ。

ノンフィクション(-2010) - 読了:08/12まで (NF)

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