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2007年10月14日 (日)
捨てられるホワイトカラー―格差社会アメリカで仕事を探すということ
[a]
バーバラ エーレンライク / 東洋経済新報社 / 2007-09
他の読みかけの本を中断して,昼休みと帰りの電車で一気読み。
ホワイトカラー求職者に扮した職探し体験記。しかし予想に反し,職探しそのものというよりも職探しビジネス探険記と呼ぶべき内容であった。なにしろ,結局どこにも就職できずに終わってしまうのである。
ジョブ・コンサルタントの質がさまざまだったり,下らない性格検査漬けに音を上げたり,無闇なポジティブ・シンキングにうんざりしたり,セミナーが宗教活動そのものだったり,どれもごく身近な話ばかりで,一頁ごとに身につまされる思いであった。
前作「ニッケル・アンド・ダイムド」はブルーカラーに扮して職探しするという体験取材で,貴重な証言だとは思ったけれど,これがお国のベストセラーか,ふうん,という印象だった。要するに,なんだか他人事に感じられたのである。今度は印象が全然違う。一体なぜだろう? ひとつには,俺がたまたま外資系企業に勤めるホワイトカラーだからなのだろうけれど,それだけでは説明がつかないように思う。仮に日本のブルーカラー非正規雇用の労働者が「ニッケル・アンド・ダイムド」を読んでも,社会的状況が違いすぎて,ここまで共感はできないのではないだろうか。労働や雇用を巡る諸条件は,ホワイトカラーから先にグローバル化が進む,ということかしらん。
些末な感想だけれども,こういう内容を扱うときこそユーモアが大事だなあ,と痛感した。著者は一念発起して,自分が契約したジョブ・カウンセラーに「私を雇いなさい」と猛烈な売り込みを掛ける(人が悪い。。。)。するとカウンセラーが逆に弱音を吐き始め,すっかり立場が逆転してしまう。噴き出さずにはいられない名シーンである。
「中流という階級」がよく引用されるせいで,著者のエーレンライクは社会学者だと思っていたのだが,どうやらジャーナリズムが本拠地でアカデミズムにも出張,というような立場の人らしい。日本でいうと誰にあたるのかなあ。
ノンフィクション(-2010) - 読了:10/14まで (NF)