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2008年1月27日 (日)
裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争 (角川文庫)
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打海 文三 / 角川書店 / 2007-12
裸者と裸者〈下〉邪悪な許しがたい異端の (角川文庫)
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打海 文三 / 角川書店 / 2007-12
先日急逝した作家による,2004年刊の長編。
舞台は内乱下にある日本。孤児となった8歳の少年が凄まじい暴力と混乱のなかを生き延びていく,というのが前半。14歳の双子の姉妹が武装した少女たちを率いて闘う,というのが後半。京王線の稲田堤あたりから多摩センター近辺までが武装勢力が割拠する日本最大のスラムと化しており,永山駅前の大学病院あたりが不気味な排外的宗教団体の本拠地になっているという設定である。
評判通り,これは前作の「ハルビン・カフェ」に匹敵する,大変に面白い小説であった。巻末の解説で北上次郎さんが書いているとおり,ある意味では爽やかな成長小説である。極めて陰惨で救いのない暴力描写は,爽やかな成長譚を可能にするための仕掛けだと捉えるべきだと思う。
と同時に,なぜこれだけの作家がマイナーなまま世を去ることになってしまったのか,なんとなくわかるような気がした。たとえば後半の主役である双子姉妹は,個々人のアイデンティティがはっきりしておらず,常に「姉妹」としてのみ扱われる。不気味で面白い設定だけど,この主役に感情移入するのは難しい。
フィクション - 読了:01/27まで (F)