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2008年5月19日 (月)

Bookcover ポスト消費社会のゆくえ (文春新書) [a]
辻井 喬,上野 千鶴子 / 文藝春秋 / 2008-05
辻井喬(堤清二)と上野千鶴子の対談本。大変にスリリングな内容であった。
セゾングループ崩壊のプロセスについて上野千鶴子さんが容赦なく切り込むと,さすがの堤さんも不機嫌かつ防衛的な言い回しになる。
上野「...清算に思ったより時間がかかったのは,情報が入らなかったからだとおっしゃいましたね。それもいわば,戦争終結を引きのばした日本敗戦直前の半年間の損害のほうが,戦争中の約四年間の被害の合計より大きかったというプロセスと似ています。」
辻井「戦争末期の日本と共和主義が破綻したセゾンを比較するのは大変独創的な展開ですが,時間がかかったのは,その経営の責任者あるいはその責任者の側近が隠すからなんですよ。」
上野「そうお聞きすると,やっぱり,部下が悪かった,というふうにしか聞こえませんが。」
辻井「責任者からデータを引き出すのはものすごく時間がかかるんです。...」
うーん,手に汗握りますね。やっぱり,失敗の原因を当事者が分析するのは,難しいものなのだろうなあ。

ちょっと衝撃的な告白もある。ファミリーマートを売るくらいなら,西武百貨店を売った方がよかった,とか。客観的には西武百貨店のオーナーなのだが,本人は本当のオーナーである父にずっと反逆しているつもりだった,とか。
上野「何に対する反逆でしょう。」
辻井「強いていえば,前近代的な人格支配に対する反逆ですね。」
上野「法人資本主義を達成するはずだったのに,逆にご自身が抑圧的な権力者になってしまった,と?」
辻井「いまの論理の飛躍は面白いですね。ほとんど芸術的です」
うわあ,やっぱり手に汗握っちゃうぞ。

80年代セゾンの広告戦略というとすぐに連想されるのが,その絶頂期のコピー「おいしい生活」だったり,有名なウディ・アレンのポスターだったりするのだが(リアルタイムでは知らんけど),この頃から市場が成熟・飽和を迎え,西武百貨店の広告も空回りがはじまっていたそうだ。ふうん,そういうものか。

ノンフィクション(-2010) - 読了:05/19まで (NF)

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