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2008年5月29日 (木)

Bookcover 不平等国家 中国―自己否定した社会主義のゆくえ (中公新書) [a]
園田 茂人 / 中央公論新社 / 2008-05
久々に出くわした大ヒット。タイトルは凡百の中国本と見分けがつかないが,とても面白く,大変に勉強になる本であった。
著者は社会学者で,長年にわたり中国で社会調査を積み重ねている人。驚いたことに,日本のSSM調査に相当するような階層意識の実証データがすでに蓄積されていて,「あなたは中央政府をどの程度信頼できますか」なんていう項目もちゃんと調べてある。いまの中国ではそんな調査ができるのか。。。知らなかった。
特に面白かったのが,都市部に台頭しつつあるという中産階級の社会意識についてのくだり。彼らが一党独裁体制を崩壊させちゃうのだ,という予言が世にあふれているし,それを皮肉る「スターバックス神話」という言葉もあるくらいだが(スタバでコーヒーを飲めば意識もアメリカナイズされるとは限らないのと同様に,中産階級が台頭しても民主化が進むとは限らない,という話),著者もまたこの通説に否定的で,説得的な議論を展開している。いま急速に豊かになっているのは国家機関の管理職であり,彼らは中央政府とテクノクラートへの信頼が高く,格差の拡大をむしろ憂いている由。なんといっても,エピソードではなく実証データに基づいているところが素晴らしい。
調査データの紹介は,あるトピックについての集計表をご紹介してコメントし,別のトピックについて紹介してコメントし。。。という羅列になってしまうことが多いと思う。大規模な調査の場合,実施主体が明確な問題意識に突き動かされているとは限らないので,それはそれで仕方のないことであろう。しかしこの本のように,あるストーリーを語るためにデータを組み合わせていくことだってできるし,その時はじめてデータが生きるのである。さすがにプロはちがうなあ。
(追記:あとで気が付いたのだが,この本の題名は,何年か前の中公新書のベストセラー「不平等社会日本」を意識しているにちがいない。この本も売れるといいですね)

Bookcover 何が彼女をそうさせたか-東京のある街角、ホテルに向かう人妻たちの素顔 [a]
本橋 信宏 / バジリコ / 2005-12-10
著者はアダルト業界と新左翼運動に強いライターさん。裏本の帝王と呼ばれた男(のちの村西とおる)の挫折を描いた回顧録「裏本時代」は,青春小説のひとつの傑作で,もっと評価されて良いと思うのだが。。。とにかく,この人の書いたものはなんだか気になる。
この本は,主婦売春の客になり,身体を売る人妻たち(25~74歳)の生活と意見をインタビューする,という潜入ルポ。タイトルが実に人を喰っている。なに考えてんだかなあ。

Bookcover 日中外交の証言 [a]
中江 要介 / 蒼天社出版 / 2008-03

Bookcover 金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス (岩波新書) [a]
本山 美彦 / 岩波書店 / 2008-04-22

ノンフィクション(-2010) - 読了:05/29まで (NF)

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