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2008年6月 3日 (火)
吉野弘詩集 (現代詩文庫 第 1期12)
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吉野 弘 / 思潮社 / 1968-08
しばらく前からめくっていた本。付録の作家論は面倒だからパスして,読了にしておく。
たとえばこんな詩がある。永年勤続を表彰される従業員が,式典のさなかに突然叫ぶ。「諸君/魂のはなしをしましょう/魂の話を!/なんという長い間/ぼくらは魂の話をしなかったんだろう」
上のようなくだりに出会うと,この従業員はそれでも,仲間たちに向かって叫ぶことができたんだなあ,と思う。あるいは,同じ職場で何十年も顔をあわせるであろう同僚たちの倦怠や,首切案が出た朝の事務所の変わらぬ談笑や,挫折したストについて,この詩人は語ることができたのだなあ,と思う。それらはみな終身雇用制が生んだ詩なのだ。
この詩人の作品は少しも古びていないけれども,それとはまた別に,連帯などということばがほとんど意味を持たなくなってしまった世界を,砂のように形を変えて流れていく人々についての詩,俺についての詩があってもいいはずだ,と思う。
白の闇 新装版
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ジョゼ・サラマーゴ / 日本放送出版協会 / 2008-05-30
フィクション - 読了:06/03まで (F)