elsur.jpn.org >

« 読了:07/20まで (NF) | メイン | 数日前にみた夢の話 »

2008年7月20日 (日)

Bookcover 暗号名サラマンダー [a]
ジャネット・ターナー ホスピタル,古屋 美登里 / 文藝春秋 / 2007-03
何年か前,学会でシドニーの大学に行って,なにかの都合で少し時間を潰さなければならなくなり,学内にあった本屋の棚をくまなく見て回ったら(なにやってんだか),ある作家の短編集が何冊かペイパーバックのシリーズになっていて,装丁がちょっと洒落ていた。名前を聞いたことがない人だったけれど,きっと地元では人気があるのだろうと思って,お土産に一冊買い込み帰りの機内でめくってみたら,まあ英語だからよくわかんないんだけど,とても良い小説であるように思えた。それがJ.Turner HospitalのNorth of nowhere, south of lossという本で,あとで調べてみたら,どうやら邦訳はないようだった。
 で,先日ふとこのオーストラリアの作家のことを思い出して検索してみたら,なんと,去年初の邦訳が出ている。原著はちょうどあの頃新刊だった本で,空港の売店で平積みになっているのをみかけた。
 大変重苦しい純文学的なスリラー小説であった。良い小説ではあるんだけど,売れないだろうなあ。。。なにより,原著刊行が2003年であるというのがショックだ。もう5年になるのか。
 
Bookcover 夜にその名を呼べば (ハヤカワ文庫JA) [a]
佐々木 譲 / 早川書房 / 2008-05-08
ものすごおーく湿っぽーいサスペンス小説。巻末の解説で納得したのだが,これ,下敷きはウイリアム・アイリッシュなんですね。

Bookcover 五辧の椿 (新潮文庫) [a]
山本 周五郎 / 新潮社 / 1964-09-29
というわけで,同じくアイリッシュが元ネタであるこの本もついでに読んでみた。大昔に読んだことがあるはずなのだが(学生時代に山周を端から全部読んだはずなので),良く覚えていないので,一度読み直してみたかった。
にわか周五郎評論家のワタクシにいわせると(なにいってんだか),(1)性衝動に身を灼く女,(2)思うように破滅できない男,(3)アナーキーなまでに純粋な処女,の3タイプが先生の必殺技であり,これらのカードのうち2枚以上を切った小説には決してハズレがない。短編の名作「おさん」は(1)(2),「水たたき」は(2)(3),かの名作「樅の木は残った」には3枚全部出てきますね。この小説は(3)のみで勝負していて,俺は面白いと思うけど,好みが分かれるところであろう。最期に主人公の娘が「ちなみに私は処女ですのでその点誤解のないように」とわざわざ書き残して死ぬところなんか,あまりの偏狭さにかえって胸が痛むが,そんなの小説として貧しいと感じる向きもあろう。

Bookcover バゴンボの嗅ぎタバコ入れ (ハヤカワ文庫SF) [a]
カート ヴォネガット / 早川書房 / 2007-09

フィクション - 読了:07/20まで (F)

rebuilt: 2020年11月16日 23:04
validate this page