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2008年10月27日 (月)

Bookcover 労働再規制―反転の構図を読みとく (ちくま新書) [a]
五十嵐 仁 / 筑摩書房 / 2008-10
小泉内閣末期から福田内閣にかけて,労働政策の分野で規制緩和派がズルズルと後退していく様子を描いた内容。ブログが基になっているのだそうだ。
著者はかの大原社研の所長という人だから,もちろんアンチ新自由主義なのだが,規制緩和派の度重なる敗北は官僚によるバックラッシュという面もあるわけで,だから善し悪しについてはちょっと煮え切らない書き方になっている。新自由主義でも官僚支配でもない第三の道を探さないといけないです,という結論。

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/27 (NF)

Cote, J.A., Buckley, M.R. (1988) Measurement Error and Theory Testing in Consumer Research: An illustration of the Importance of Construct Validation. Journal of Consumer Research, 14(4), 579-582.
相関の希薄化についての短い啓蒙論文なのだが,ちょっと面白いのは,どのくらい希薄化するかをむりやり定量的に一般化してみせているところ。なんでも著者らのメタ分析(JMR,1987)によれば,態度指標における真の(traitの)分散は30%, 手法による分散は41%, 行動指標における真の分散は42%, 手法による分散は26%,手法の相関が0.55だそうな。ここから算出するに,態度指標と行動指標の標本相関は,仮に真の相関が1.00だとして0.53, 逆に0.00だとして0.18となる由。ちょっとした数字の遊びだが,こうしてデモンストレーションされるとインパクトがあるなあ。仕事には使えないけど,研修のネタにつかえそうだ。

論文:データ解析(-2014) - 読了:10/27まで (A)

2008年10月26日 (日)

Bookcover さよなら、日だまり [a]
平田 俊子 / 集英社 / 2007-07
怪しい占い師によって夫婦が崩壊,ドロドロの離婚劇へと至る一人称小説。うーむ,なぜこんな小説を? いったい著者になにがあったのか。

フィクション - 読了:10/26まで (F)

Bookcover 偽りのホワイトハウス 元ブッシュ大統領報道官の証言 [a]
スコット・マクレラン / 朝日新聞出版 / 2008-10-21
ブッシュ政権の報道官だった人の暴露本。

Bookcover 子どもへの性的虐待 (岩波新書) [a]
森田 ゆり / 岩波書店 / 2008-10-21
著者は性的虐待の専門家。当然ながら,90年代の記憶回復療法を巡る騒動に関してはセラピスト側の立場である。裁判にそなえた初期面接のトレーニングが必要である由。なるほど。

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/26まで (NF)

Bookcover おかめ日和(3) (KCデラックス BE LOVE) [a]
入江 喜和 / 講談社 / 2008-04-11
Bookcover おかめ日和(4) (KCデラックス BE LOVE) [a]
入江 喜和 / 講談社 / 2008-10-10
入江喜和さんの連載中の作品。新刊が出ているのに,まったく気がつかなかった。来年は未完の傑作「のんちゃんのり弁」が映画化されるそうだから,すこしは本も手に入れやすくなるだろうか...

Bookcover 聖☆おにいさん (2) (モーニングKC) [a]
中村 光 / 講談社 / 2008-07-23
いま版元が強く推しているらしいギャグマンガ。なるほど,ちょっと面白い。

Bookcover 駅から5分 2 (クイーンズコミックス) [a]
くらもち ふさこ / 集英社 / 2008-09-19

コミックス(-2010) - 読了:10/26まで (C)

2008年10月21日 (火)

Cohen, J. (1992) A power primer. Psychological Bulletin, 1992, 112(1), 155-159.
仕事の都合で,効果量についてあわてて勉強する羽目に。正直,よく知らんのである。別に心理学の論文書く訳じゃないからどうでもいいと思って,油断していた。
とりあえず,有名な先生が書いた啓蒙論文を拾ってきて目を通したところ,さあこれからだ,というところでいきなり最終ページに到達してしまい,ちょっと呆然。効果量が出てくる主な文脈として,(1)サンプルサイズを決めたり検定力を求めたりするとき,(2)個別の研究で検定のかわりに,(3)メタ分析のとき,の3つがあると思うが,この論文は(1)だけに焦点を当てた内容であった。(2)の方向の説明が欲しかったのに。がっくりしたが,読み終えるまで気がつかない方がどうかしている。
 よく効果量の説明で,Cohenの提唱する基準(小0.2, 中0.5, 大0.8)ってのが出てくるけど,その根拠はどこにあるのかしらん。この論文にも出てきたけど,特に説明はない。やっぱり本を読まなきゃいけないようだ。Cohen先生も, For readers who find this [simplest explanation] inadequate, I unhesitatingly recommend Cohen(1988) なあんて書いておられる。うーん,こういうときのunhesitatinglyってのは,ちょっとユーモラスなニュアンスがあるのかな,そうでもないのかな。

Fern, E.F., Monroe, K.B. (1996) Effect-size estimate: Issues and problems in interpretation. J. Consumer Research, 23, 1996.
(2)のタイプの論文。これは消費者行動系の雑誌論文なので,職場で堂々とめくっていたのだが(別に誰も気にしちゃいないと思うけど),今度は眠くて参った。
内容は,まず効果量指標のレビュー(案外いっぱいあるのだ。ただの平均差の効果量さえ3種類もあるぞ)。それから効果量に影響する様々な要因についてのレビュー(指標の信頼性とか,標本の等質性とか,尺度の水準数とかなんとか)。途中で面倒になっちゃって,適当に読み飛ばしてしまった。
効果量は重要性の指標ではない。効果量に実質的な有意性とか重要性とかを帰属させようとする人への最良のアドバイスは「やめとけ」だ,とのこと。いや,正論ですけどね。じゃあ重要性を求めろっていわれたら,どうすりゃいいのさ。

 いまこれを書くためにぱらぱらめくってみたら,読んだ覚えのない面白いことが書いてあって,こりゃよほどいい加減にめくったな,と反省。これではただの自己満足だ。
 標本サイズのくだりで,こんな事が書いてあった。有意な結果が得られたとき,その標本サイズが小さいとその結果を当てにしない人が多いが,これは伝統的な観点からは理屈に合わない(効果量はむしろ大きいわけだから)。しかしベイジアンの観点からみると,効果が同じなら大標本のほうがより証拠として価値がある,という見方は正しいのだそうだ。この話,前にどこかで(たぶん別の文脈で)読んだことがあるんだけど,どこだっただろうか? 思い出せなくて気持ちが悪い。

論文:データ解析(-2014) - 読了:10/21まで (A)

2008年10月13日 (月)

Bookcover チャイルド44 上巻 (新潮文庫) [a]
トム・ロブ スミス / 新潮社 / 2008-08-28
Bookcover チャイルド44 下巻 (新潮文庫) [a]
トム・ロブ スミス / 新潮社 / 2008-08-28
連休ですから,と自分に言い訳し,久々に海外娯楽小説。スターリン時代末期のソ連を舞台にしたサスペンス小説。なるほど,これは面白い。評判になるわけだ。

忙しさにかまけて,読む本といったら気楽なものばかりだ。こんなことではいけないのに。

フィクション - 読了:10/13まで (F)

Bookcover 無法回収──「不良債権ビジネス」の底知れぬ深き闇 [a]
椎名 麻紗枝,今西 憲之 / 講談社 / 2008-09-25

Bookcover 自民党政治の終わり (ちくま新書) [a]
野中 尚人 / 筑摩書房 / 2008-09

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/13まで (NF)

Bookcover ビーム短編傑作選 奥村編集長セレクション マンゴー編 (BEAM COMIX) [a]
/ エンターブレイン / 2008-09-26
Bookcover ビーム短編傑作選 奥村編集長セレクション いちぢく編 (BEAM COMIX) [a]
/ エンターブレイン / 2008-09-26
「コミック・ビーム」誌に掲載された読み切りを集めたという,いかにもエンターブレインらしい,マニアックな感じの単行本。寡作のマンガ家・入江喜和さんが99年に描いた「ちゃらっぽこ幽霊」を,ようやく読むことができた。

Bookcover 海街diary(うみまちダイアリー)2 真昼の月(フラワーコミックス) [a]
吉田 秋生 / 小学館 / 2008-10-10
Bookcover おひとり様物語(1) (ワイドKC Kiss) [a]
谷川 史子 / 講談社 / 2008-10-10
作品自体の好き嫌いとは無関係に,マンガとしての水準の高さに魅了されて買ってしまうことがあるが,この2冊がそれ。中学生の淡い恋愛にも,若い娘の恋模様にもからっきし関心が持てないのだが,それにしても,どちらも巧いなあ。。。登場人物に血が通っている。

Bookcover 聖☆おにいさん(1) (モーニング KC) [a]
中村 光 / 講談社 / 2008-01-23

Bookcover うつうつひでお日記 その後 (単行本コミックス) [a]
吾妻 ひでお / 角川グループパブリッシング / 2008-09-30

Bookcover 百鬼夜行抄 17 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス) [a]
今 市子 / 朝日新聞出版 / 2008-10-07

コミックス(-2010) - 読了:10/13まで (C)

2008年10月 6日 (月)

Bookcover 観光 (ハヤカワepiブック・プラネット) [a]
ラッタウット・ラープチャルーンサップ / 早川書房 / 2007-02-21
タイ系アメリカ人の若い作家(79年生まれ!)による処女短編集。これは素晴らしい。。。読み手を掴んで離さない力があり,切れ味が良い。表題作と「闘鶏師」が特に良いと思った。これは才能だなあ。

Bookcover 寝ぼけ署長 (新潮文庫) [a]
山本 周五郎 / 新潮社 / 1981-08-27
山周先生の未読の小説。昭和21年発表の娯楽作品。良し悪しをあげつらうのは野暮な話だ。
 最近,なぜかこの文庫が書店で平積みになっていることが多い。経緯はわからないのだが,こういう古い本を掘り起こすというのは面白い試みだと思う。わざわざこの小説を読むこたないだろうという気もするけど,まあ,売れるといいですね。

フィクション - 読了:10/06まで (F)

Bookcover ブログ論壇の誕生 (文春新書) [a]
佐々木 俊尚 / 文藝春秋 / 2008-09
「諸君」読者のおじさん向けに,いまネットの世界ってこうなのですよ,と説明している本。1年後にめくったらさぞや古くさくなっているであろう内容である。

Bookcover 外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書) [a]
白井 恭弘 / 岩波書店 / 2008-09-19
面白かったけど。。。どうせ俺,もう手遅れだし,とがっくりしてしまう。

ここんとこ,柄にもなく仕事が忙しく,ろくに本も読めない始末だ。いやになっちゃうなあ。

ノンフィクション(-2010) - 読了:10/06まで (NF)

Bookcover ドロヘドロ 12 (BIC COMICS IKKI) [a]
林田 球 / 小学館 / 2008-09-30

Bookcover 竹光侍 5 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) [a]
松本 大洋,永福 一成 / 小学館 / 2008-09-30

Bookcover 明日ひらめけ!マンガ家デビュー物語 [a]
藤野 美奈子 / メディアファクトリー / 2008-09-17

Bookcover おのぼり物語 (バンブー・コミックス) [a]
カラスヤ サトシ / 竹書房 / 2008-09-17
著者は漫画誌の埋め草みたいな4コマから出てきた人で,売れないマンガ家の暇な日常をネタにした自虐的なギャグで人気を博したのだが,実は別のペンネームで何度も新人賞を取っていた,もともと実力のある人なのである。売れ始める前の模索の日々を描いたこのマンガも,軽い調子ではじめておいて,父親が亡くなる後半あたりでほろりとさせる。
 あなたはこの先どんどん忙しくなりますよ,と編集者に元気づけられるくだりがあるが,目のある人にはわかっていたのかもしれないなあ。まあ,著者がこうして売れっ子になってから振り返った結果論かもしれないけど。

コミックス(-2010) - 読了:10/06まで (C)

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