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2009年8月12日 (水)
3月のライオン 3 (ジェッツコミックス)
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羽海野 チカ / 白泉社 / 2009-08-12
このマンガにおいては,登場人物の心情はぜーんぶ独白や台詞で表現されてしまう。状況説明のために必要とあらば,驚くほどダイレクトな映像的比喩が繰り出される(主人公が孤島を目指して必死に泳いでいる,とか)。これは良し悪しの問題ではなくて,想定読者層の問題であろう。マンガを読み慣れない読者,マンガが培ってきた洗練された表現が届かない読者層に,この作者は果敢にも手を伸ばそうとしているのだろうな,と想像する。
その心意気に感銘を受けつつ,しかしちょっぴりうんざりしながら読み進めているのだけれど,ときどきハッとするような鮮やかなディティールがあって,そこが実に魅力的だ。たとえばこの巻だと,下町の家庭に擬似的家族として暖かく迎え入れられた孤独な少年が,なぜ僕はこの家ではこんなに落ち着いた気持ちになるのかと自問し,ふと幼い子がタンスに貼り付けた小さなシールを目にして,失われた幸せな幼年期を目の前の家庭と重ね合わせて...という場面。タンスのシール! よっしゃ,これでいける!というマンガ家の快哉の声が,聞こえるような気さえする。
海獣の子供 4 (IKKI COMIX)
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五十嵐 大介 / 小学館 / 2009-07-30
コミックス(-2010) - 読了:08/12まで (C)