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2009年11月19日 (木)

Neijens,P., Smit, E., Moorman, M.(2009) Taking up an event: Brand image transfer during the FIFA World Cup. International J. of Market Research, 51(5), 579-591.
たまたまみつけて,息抜きに読んでみた論文。多少なりとも会社での仕事の役に立つかと思ったけど,そうでもなかった。

[イントロダクション]
スポーツ・イベントに協賛することで,ブランドイメージをどの程度変化させることができるか? そのイメージ形成過程はどのようなものか?

[背景]
ブランドと他のなにか(例, スポーツ・イベント)との間に連想関係をつくると,イメージの転移が起きることが予想できる。しかし,スポーツ・イベント協賛に関する実証研究は少ない。イベント前・中・後の広告の効果についての研究は見当たらないし,スポーツ協賛についての研究は,協賛によって強化できるのは既存のブランド・イメージだけだとか(Javalgi,et al.1994J.Adv),協賛の効果はない(Pope&Voges,1999J.Mktg.Comm)といった結果を示している。 本研究では,イメージの転移に影響する3つの要因について検討する。

  1. イベントとブランドのあいだの一致性の知覚(両者が同じイメージを持っている程度)。(Gwinner&Eaton,1999J.Adv; Gwinner,1997Int.Mktg.Rev; Smith,2004J.Mktg.Mng)
  2. 協賛の程度。(Gwinner,1997; van Reijmersdal et al.,2007Psych.Mktg.)
  3. イベントへの関与の強さ。(Levin et al.,2001J.CurrentIssues&Res.Adv.; Wann&Branscombe,1990J.Sports&SocialIssues; Fisher&Wakefield,1998; Madrigal,2000; Jones et al.,2004)

先行研究の多くは実験研究で,外的妥当性が限られていた。また,イベント直後のイメージのみを調べ,イメージへの持続的効果を調べなかった。本研究では実生活における長期的効果について検討する。

[データ収集]
オランダで調査。SSIのパネルからランダム抽出してオンライン調査。2006ワールドカップ直後に調査(N=1299),3ヶ月後に同一対象者で再調査(N=638)。

[指標]

  • イメージ: 協賛広告主であった3ブランド(金融,通信,小売)と,同カテゴリで広告主でなかった3ブランド,計6ブランドについて聴取。イメージ項目は「スポーティ」「フットボール」「オレンジ」の3つ(オレンジはオランダのチームカラー)。項目を行,ブランドを列としたマトリクスを提示し,ブランドにあてはまる箇所をチェックさせた。(※オランダではこれをASSPAT法というらしい)
  • 接触時間: ワールドカップの情報を得るのにかけた時間を,TV, ネット, 新聞, etc. について聴取。ここから2指標を作成。(1)試合接触時間(TVで試合中継を観た時間)。(2)メディア接触時間(試合中継以外の総時間)
  • イベント関与: スポーツ関与尺度(Shank&Beasley,1998)から以下の8項目の7件法SD項目を選び,ワールドカップについて聴取。{関心ある-ない,価値ある-ない,魅力的である-ない,有用である-ない,必要である-ない,自分と関連する-ない,重要である-ない,関与がある-ない}。ここから1指標を作成。
  • 広告評価:広告親近性尺度(Smit&Neijens,2000J.Adv.Res)から項目を選び(すべて5件法),以下の3指標を作成:面白さ(4項目),情報性(2項目),魅力(2項目)。
  • 背景変数:性別,年齢,教育,フットボールファンである程度(5件法)
  • CFの特性:すべてのCFを録画し,以下をコード化:ブランド名,製品カテゴリ,長さ,スポーツイベントについて言及するやりかた(画像,文章,音楽,バーゲン)。

[結果]

  • イメージ転移 ... 協賛ブランドは非協賛ブランドに比べ,イメージ3項目への反応率が著しく高かった。
  • 接触時間の効果 ... 金融機関では,接触時間とイメージ3項目への反応率との相関が,協賛ブランドで正,非協賛ブランドで負になった (つまり,競合が協賛したせいでイメージが下がっている)。この傾向は小売・通信ではみられなかった。
  • イベント関与の効果 ... 金融機関では,イベント関与とイメージ3項目への反応率との相関が,協賛ブランドで正,非協賛ブランドで負になった(この効果は接触時間の効果を統計的に除外しても残った)。この傾向は小売・通信では明確でなかった。
  • 効果の持続 ... イメージ3項目への反応率を直後と3ヶ月後で比較すると,協賛ブランドではわずかに低下,非協賛ブランドではわずかに向上した。

[結論]

  • ワールドカップ協賛広告によってブランドイメージが変化した
  • その効果は接触時間が長いときに大きく,イベント関与が高いときに大きい
  • 効果は3ヵ月後も持続している

[議論]

  • イベント関与が高い人は,協賛広告への接触時間が長いだけでなく,協賛広告により注意を払いやすく,協賛広告を情報的だとみなしやすいのだろう。
  • 金融機関で効果が大きかったのは,この金融機関がオランダチームのスポンサーでもあったことによるシナジー効果ではないか
  • 小売と通信で接触時間・イベント関与の効果がみられなかったのは,TV CF以外にコミュニケーション・チャネルがあるからだろう (店頭とか)。

へー,こういう研究があるんですね,ふーん。という感じだが,ま,あるブランドがスポーツのスポンサーになると,その競合ブランドとそのスポーツとの連想関係が下がる,というのはちょっと面白いっすね。

それにしても,マーケティング関係の論文の書き方にはいまだに慣れない。この論文でいうと,質問紙でとった指標のところを細かく説明しているのに,結果の報告ではそのほとんどが使用されていないのである。そんなら書かなくてもよいのではなかろうか?

論文:マーケティング - 読了:11/18まで (A)

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