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2010年12月 1日 (水)
旧石器遺跡捏造事件
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岡村 道雄 / 山川出版社 / 2010-11-03
著者は2000年に発覚した旧石器遺跡捏造によって人生を狂わされた考古学者の一人。正直言って考古学には大して興味がないんだけれど,足元が崩れ落ちるような危機を人はどのように生きるのだろうか,という関心から手に取った本。
著者は遺跡を捏造した藤村新一さんと対面し,疑問を直接に問い質そうと決意する。彼が姓を変えて暮らす町を訪ねると,現れた彼は往時と変わらぬ朴訥とした雰囲気だが,「右手が二度と悪さをしないようにと」自ら指を切り落としている。しきりに謝罪するが,捏造や発覚前後のことを思い出すことができない。
「私自身,彼のお陰で共犯者のように指弾され,針のムシロに座り続けたような十年間を過ごしてきた。目の前の藤村は,最低限の倫理すら踏み外し,大勢の仲間たちをどん底に叩き落とした,許せない張本人だった。その男を前にして,不甲斐ないと笑われるかもしれないが,不思議に叱責したり,憎悪する気が起こらなかった。それは,彼が自ら切り落とした右手の指を見てしまったからかもしれない。沢山の人々に迷惑をかけ,考古学界の信用を失墜させた許されざる彼にも,地獄のような十年間があった…」
巨象の漂流 JALという罠 (講談社BIZ)
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小野 展克 / 講談社 / 2010-11-16
ノンフィクション(-2010) - 読了:「旧石器遺跡捏造事件」 ほか