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2011年5月 6日 (金)

Bookcover ら抜きの殺意 [a]
永井 愛 / 而立書房 / 1998-02
永井愛さんの97年の戯曲。「ら」抜き言葉やことわざの誤用を切り口にした喜劇。後半で女性語についての議論になるところ,とても可笑しくて,しかも深い。

 俺はこの劇作家がおそろしくてたまらない。この人は,我々のさもしい根性や情けない振る舞いを,透徹した視線でじーっと見つめているのだろうなあ,という気がしてならない。悪いことに,現代日本を代表するこの劇作家は外見的には平凡な女性であり,さらに悪いことに,どういうわけか俺はこの人とばったり出会うことが多いのである。永井愛作・演出の芝居を見に行った帰り,出口で愛想良く頭を下げている人をふとみたら永井愛。渋谷で鮮やかなコートの女性とすれ違いざま目があったら永井愛。高円寺の階段で立ち話をしている女性とぶつかりそうになり,あわてて避けたらそれが永井愛。三軒茶屋の喫茶店で散々馬鹿話をした後,振り返ってお勘定を頼もうとしたら,すぐ背中のカウンターで静かにコーヒーを啜っている永井愛。なぜだ。心臓に悪い。どうにか配慮してもらえないものだろうか,「ナガイアイでございます」とスピーカーで怒鳴りながら歩くとか。

フィクション - 読了:「ら抜きの殺意」

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