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2011年7月11日 (月)
ルイ・ボナパルトのブリュメール18日―初版 (平凡社ライブラリー)
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カール マルクス / 平凡社 / 2008-09
意外や意外,最近では一番のオモシロ本であった。いったいなにが面白いか,手に取ってみないと予想もつかないものだ。
この本で描かれているのは,二月革命(1948)からナポレオン三世のクーデター(1851)にいたるいきさつであり,マルクスさんがこの作品を最初に書いたのはその翌年。きわめてジャーナリスティックな内容なのである。さらに,マルクスの過剰なまでの饒舌さときたら。いまの我々にとっては社会科学の古典だが,当時はちょっとしたキワモノだったのではないかしらん。
一番面白かった箇所をメモ。第二共和制下の1949年,小市民を支持基盤とする民主派が労働者と手を組むくだり。「資本と賃労働という二つの極をともに止揚するためではなく,それらの対立を和らげて調和へと変換させるための手段として,民主的=共和制的諸制度が要求されるのである」「この内容は,民主的方法での社会の改造であるが,小市民の枠内での改造である。小市民は原理的に利己的な階級利害を貫徹しようとするものだというような,視野の狭い思いこみをしてはいけない。彼らはむしろ,自分たちの解放の特殊な諸条件は普遍的な諸条件であり,その内部でのみ,近代社会は救われ,階級闘争は避けられるのだ,と信じているのである」 なるほどー。いいこというねカールくん。
「同様に,民主派の議員たちはみな商店主であるか,あるいは商店主を熱愛している,と思い描いてもいけない。彼らは,その教養と知的状態からすれば,商店主とは雲泥の差がある。彼らを小市民の代表にした事情とは,小市民が実生活において超えない限界を,彼らが頭の中で超えない,ということであり,だから物質的利害と社会的状態が小市民を実践的に駆り立てて向かわせるのと同じ課題と解決に,民主派の議員たちが理論的に駆り立てられる,ということである」 おおお。議員さんたちについて考えるときはこういう見方をしないといけないのか。目からウロコですカールさん。(←丁寧語に格上げ)
異形の日本人 (新潮新書)
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上原 善広 / 新潮社 / 2010-09
人物ノンフィクション。劇画作家・平田弘史さんの「血だるま剣法」糾弾事件についての章を読みたくて手に取った。
平田劇画の初期傑作が描かれたのは学生運動の全盛期であり,読者層は運動から疎外された少年労働者だった。「60年,70年安保の学生運動についてどう思うか,平田に訊ねたことがあるのだが,彼は即『あんなのはジャリのお遊びだッ』と断じた。私はその断固とした物言いに,かえって平田の暗く陰鬱な青春を垣間見るような気がした」
ナポレオン帝国 (ヨーロッパ史入門)
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ジェフリー エリス / 岩波書店 / 2008-12-18
ナポレオン期フランスの政治・経済・社会について幅広く論じた本。そんなに真面目に勉強する気はなくて,たまたま手に取っただけだったので,ついつい斜め読みになってしまった。
密閉国家に生きる―私たちが愛して憎んだ北朝鮮
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バーバラ デミック / 中央公論新社 / 2011-06
北朝鮮の北部・清津の若者たちの姿を描いたノンフィクション。著者はLAタイムズの記者で,この本は脱北者への聞き取りに基づいて構成したもの。ページをめくりはじめたら止まらなくなり,半日つぶして一気に読み終えた。
ノンフィクション(2011-) - 読了:「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」「異形の日本人」「ナポレオン帝国」「密閉国家に生きる」