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2012年1月24日 (火)

Bollen, K.A., & Pearl, J. (2012) Eight myths about causality and structural equation models. Technical Report, R-393, UCLA Cognitive Systems Laboratory.
 SEMの超偉い人であるBollen先生と、因果推論の超偉い人であるPearl先生は、このたびSpringerから出る"Handbook of Causal Analysis for Social Research"という本に共著で一章を書くのだが、その下書きをただいまテクニカル・レポートとして回覧中。これから改訂されるんだから、ほんとは最終稿になってから読んだほうがいいんだけど、タイトルが魅力的なのでついつい目を通した。

 著者らのいう「因果性とSEMにまつわる8つの神話」とは:
1. 「SEMは関連性に基づいて因果関係を確立することを目指している」。SEMは因果的仮定に基づいて行われる、というのが正しい。著者らいわく、この誤りが広まっている理由は、まず人々が因果的仮定と統計的仮定の区別がついていないから、さらにSEMユーザがモデルにいれている因果的仮定を明確にしていないことが多いから、ではないかとのこと。
2. 「SEMと回帰は本質的に等しい」。これは間違い。たとえば、回帰の誤差項は単にYの実現値と予測値のずれだが、構造方程式における誤差項は固有の確率的要素である。前者は定義上Yと直交するが、後者の性質は因果的仮定によって決まる。
3. 「操作なくして因果なし」("No causation without manipulation")。もちろんこのモットーも著者らの受け入れるところではない。もっとも、こういうHolland-Rubin流の強い立場に立つ人が、その立場からSEMを使っても全然かまわないわけだが。
4.「SEMよりNeyman-Rubinの潜在反応モデルのほうが理にかなっている」。この項は、Rubinさんの一連のSEM批判に対する応答。Rubinの考え方をきちんと勉強してないので、理解できたかどうか怪しい...
5. 「SEMは非線形的な因果関係には向いていない」。二次関数への拡張、二値・順序・多項変数などへの近年の拡張をみよ。また、Pearlのdoオペレータをつかった新しい定式化をみよ。とのこと。後者は不勉強でよくわからなかった。
6. 「SEMはランダム化実験にはあまり役に立たない」。いやいやとんでもない、というので、一例として、操作変数と操作チェック用指標と結果指標を組み込んだちっちゃなSEMモデルの紹介。
7. 「SEMは媒介分析には使えない」。なんでも、Rubinさんたちはprincipal strata という考え方に基づく媒介効果の分析を提案しているのだそうで、この項はそのアプローチへの批判であった。モトネタを全然知らないので、もうなにがなんだか。
8. 「SEMによる理論検証は部分的検証に過ぎない」。そもそもどんな因果的仮定だってそれ単独では検証できない。SEMは検証可能な範囲の理論的含意を検証するための最良の方法だ。尤度比に始まる一連の適合度指標をみよ、Bollenの検証的テトラッド・テストをみよ、偏相関による条件つき独立性のテストをみよ、BollenのModel implied instrumental variables アプローチ (なんすかそれは) をみよ、云々。モデルの大域的テストのみに関心を寄せ局所的テストを無視するSEMユーザにも問題がある由。

 素人ながら想像するに、1とか6とかについてはたぶん異論がないところで,揉めるのはきっと3とか4とか7とかであろう。このへん、勉強してみたいのは山々だが...ううむ。

論文:データ解析(-2014) - 読了:Bollen&Pearl (2012) SEMの8つの神話

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