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2012年5月 5日 (土)
McArdle, J.J. (1984) On the madness in his method: R. B. Cattell's contributions to structural equation modeling. Multivariate Behavioral Research, 19, 245-267.
「彼は50年以上も前にSEMのテクニックを使っていたのだ!」というわけで,歴史的心理学者Raymond B. Cattellの因子分析についての膨大な業績を,現代のSEMの観点から振り返る,という酔狂な論文。
先日,キャッテルのData boxという概念に興味を引かれて資料を検索していて,つい魔が差して国会図書館関西館に複写依頼を出してしまったもの。いつもながら丁寧な複写で,ほんとに頭が下がります。そのお気遣いを無にしないためにも,はい,ちゃんと読みますです。
題名は一体どういう意味だろうと不思議に思ったのだが,ハムレットのなかでポローニアスが"Though this be madness, yet there is method in't"と独白する場面があって(手元の小田島訳では「気ちがいのことばとはいえ,筋がとおっておるわい」),これに由来する"There's method in his madness"という慣用句があって(ランダムハウス英語辞典では「狂ってはいるが言うことの筋道は通っている」),それに由来しているらしい。
著者はキャッテルの考え方に潜む尽きせぬ革新性のことをmadnessと呼んでいる(もちろん誉めているのである)。
キャッテルの因子分析アプローチと現代のSEMの考え方を,モデルのSpecification, Estimation, Comparison, Substance(理論的含意の導出)の4段階に分けて比較している。文章があまりに文学的なので参った。著者は成長曲線モデルの研究で有名な人だと思うけど,なんというか,若気の至り,という感じの文章である。
知識不足もあって,内容をよく理解できたとはいえないんだけど,キャッテルは決して統計家ではなく,あらゆる場面において実質科学的推論をすごく重視していたのだ,ということが,なんとなくわかったような。というより,ここまでが統計的推論でここから実質科学的推論,というような線引き自体が,キャッテルさんにとっては意味をなさなかったのかもしれないなあ。
論文:データ解析(-2014) - 読了:McArdle(1984) R.B.キャッテル,狂気の筋道